かき氷の名店〈埜庵〉の「マンゴーシロップ」が家で簡単に作れた! かき氷ブームを巻き起こしたお店のおいしさの秘密とは?

暮らし

PR 公開日:2024/6/22

一年じゅうかき氷の店 埜庵の20年 絶品シロップレシピつき"
一年じゅうかき氷の店 埜庵の20年 絶品シロップレシピつき』(石附浩太郎/主婦の友社)

 かつて夏限定のお楽しみだったかき氷が、今では一年中食べられるスイーツに。そんなかき氷ブームを生んだと言われるのが、神奈川県の鵠沼海岸で年間を通じてかき氷を売るお店〈埜庵(のあん)〉だ。

 このほど刊行された書籍『一年じゅうかき氷の店 埜庵の20年 絶品シロップレシピつき』(主婦の友社) では、埜庵の店主である石附浩太郎さんが、“一年じゅうかき氷”のブームに至るまでのお店の歴史や、この20年で考案したかき氷の誕生秘話などを語っている。

advertisement

 埜庵のファンが楽しめるのはもちろん、まだ世の中にないものに対して試行錯誤を繰り返し、それを成功させた店主の言葉から、新たな気づきを得る人もいるだろう。

秋には秋の、冬には冬のかき氷がある

18-19ページ

 新卒でインテリア関連の商社に入り、転職して音響機器メーカーへ。2つの会社で営業として特に不満もなく働いていたという店主が、ある日突然、会社を辞めようと思ったのは33歳の頃。きっかけになったのは、当時まだ小さかった娘と出かけた埼玉県の長瀞で食べた、〈阿左美冷蔵〉のかき氷。ひとつの料理として完成されたおいしいかき氷に「脳天をカチ割られるほど」衝撃を受けたという。

〈埜庵〉のかき氷といえば、原色のシロップをかけて食べるジャンクなかき氷とは違い、シロップやトッピングなどの味や量が完璧に計算され尽くした芸術品のような一品。その原点は、ひとつの料理として完成しているという〈阿左美冷蔵〉のかき氷だったようだ。

 この20年で300種類以上つくってきたというかき氷には、どの一皿にもドラマがある。たとえば、繁忙期が一段落した秋に登場するのが「栗」のかき氷。シロップは和栗のペーストを軸にフランスの栗をブレンドし、10種類近くも試して選んだシェリー酒と練乳をかけることで栗のおいしさが引き立てられるとか。

「今後も、新しいかき氷づくりに苦しみたい」

23-23ページ

 興味深いのは、お客さまを「おかしな人」にしないために考案したという「Wいちご」。埜庵では季節のフルーツをシロップに使っているが、旬のいちごが食べられるのは冬だけ。20年近く前、冬にかき氷を食べる人が今よりも少なかった頃、かき氷を食べたことを誰かに話したお客さまが「おかしいんじゃないの?」と言われるのではなく、「いちばんおいしいいちごのかき氷を食べるなら冬しかない」と説明できるように考えられたかき氷だという。

 ほかにも、種をとるのが大変でものすごくコストのかかる「すいか」、市場が長いお盆休みに入る前に苦労して競り落とすという「桃」など、季節のフルーツを使ったかき氷をおいしく安定して提供するには、多大な苦労や工夫があることがわかる。「今後も、新しいかき氷づくりに苦しみたいと思います」という重みのある店主の言葉には、試行錯誤の末にいいものができれば苦しみが達成感に変わるという、ほのかな希望も感じられる。

〈埜庵〉のエッセンス入りレシピを試してみた

 書籍『一年じゅう かき氷の店 埜庵の20年』は、おうちでもつくれる〈埜庵〉の絶品シロップレシピ付き。苦労と工夫が詰まった〈埜庵〉のエッセンスが感じられるレシピとあって、さっそく2品つくってみた。

マンゴーシロップ

 1つめは、冷凍マンゴー・マンゴージュース・グラニュー糖でつくる「マンゴーシロップ」。基本的には材料をハンディブレンダーなどでかき混ぜるだけという簡単なレシピだ。

 こんもりと盛るのが思いのほか難しく、氷に対してマンゴーの大きさがアンバランス…などテクニックの違いをひしひしと感じつつ、味のほうはまさに絶品。今年もいよいよやってくる夏を先取りできるような爽やかな味。甘みはしっかりあるけど甘すぎない、間違いないおいしさだ。

白酒

 もう一品は、オリジナル練乳と糖蜜に、酒粕を加えてつくる「白酒」。冬の一番人気メニューで、店主にとっては、天然氷の採氷作業でいそがしくする間、その留守を預かる守護神のような存在だとか。

 シロップに酒粕を使うのが意外だったものの、食べてみたら甘酒のよう。コクのある酒粕の香りが鼻に抜け、練乳の甘みが口の中にまろやかに広がる大人の味。後を引くおいしさで食べる手が止まらない…。これらのシロップは冷蔵庫での保管も可能だ。

シロップ

「シンプルに氷を削って、シロップをかける」。そのふたつの行為だけでおいしさを表現することにこだわっています。

 と店主の石附さんは言うが、砂糖だけ見ても、グラニュー糖、てんさい糖、中ざら糖、黒糖など、何種類もの砂糖が使われており、同じメニューでも季節によって配合を変えているのだそう。「シンプル」な中に研ぎ澄まされた奥深さがあり、一年じゅう通うファンがいることにも納得。店主の言葉とレシピの両面から、20年愛され続けている理由を感じられるはずだ。

文=吉田あき

あわせて読みたい