いよいよBOOK OF THE YEAR 2024 スタート!昨年のコミック部門を振り返る——圧巻のフィナーレを迎えた数々のマンガがランクイン

文芸・カルチャー

公開日:2024/9/3

『違国日記』(ヤマシタトモコ/祥伝社)

『ダ・ヴィンチ』の年末恒例大特集「BOOK OF THE YEAR」。2024年の投票は現在受付中! 各ジャンルの「今年、いちばん良かった本」をぜひ投票してみてほしい。ここで改めて、2023年の「コミック」部門にどんな本がランクインしたのか振り返ってみることにしよう。

1位『違国日記』ヤマシタトモコ

2位『気になってる人が男じゃなかった』新井すみこ

3位『ONE PIECE』尾田栄一郎

4位『ツユクサナツコの一生』益田ミリ

5位『【推しの子】』赤坂アカ×横槍メンゴ

6位『3月のライオン』羽海野チカ

7位『女の園の星』和山やま

8位『名探偵コナン』青山剛昌

9位『スキップとローファー』高松美咲

10位『税金で買った本』ずいの:原作、系山 冏:漫画

11位『ミステリと言う勿れ』田村由美

12位『葬送のフリーレン』山田鐘人:原作、アベツカサ:作画

13位『ちはやふる』末次由紀

14位『呪術廻戦』芥見下々

15位『文豪ストレイドッグス』朝霧カフカ:原作、春河35:漫画

16位『「神様」のいる家で育ちました〜宗教2世な私たち〜』菊池真理子

17位『血の轍』押見修造

18位『キングダム』原 泰久

19位『SPY×FAMILY』遠藤達哉

20位『家が好きな人』井田千秋

21位『重版出来!』松田奈緒子

22位『日本三國』松木いっか

23位『薬の魔物の解雇理由@COMIC』真丸イノ:漫画、桜瀬彩香:原作

24位『ひらやすみ』真造圭伍

25位『ラストカルテ -法獣医学者 当麻健匠の記憶-』浅山わかび

26位『ワールドトリガー』葦原大介

27位『メダリスト』つるまいかだ

28位『海が走るエンドロール』たらちねジョン

29位『光が死んだ夏』モクモクれん

30位『胚培養士ミズイロ』おかざき真里

30位『わたしたちは無痛恋愛がしたい~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~』瀧波ユカリ

  そのラストに、喝采が送られた。去年のランキングはそう感じさせる結果だった。そう、感動のフィナーレを迎えた『違国日記』が圧倒的な投票数により1位に輝いたのだ。成り行きで同居することになった小説家の槙生と、中3の冬に親を亡くした朝。少しずつ距離を縮めていく二人の暮らしを見守ってきたファンからは、「槙生の不器用な愛情表現と、それを受け取った朝の一言に、声をあげて泣いた」(25歳・女)といった声が寄せられた。一つの物語の終わりを惜しみながら、それを祝福する。そんな声の多さは、本作がいかに愛されてきたかの証左だろう。

『気になってる人が男じゃなかった』
(新井すみこ/KADOKAWA)

  2位の『気になってる人が男じゃなかった』は初登場の新顔だ。〝勘違い〟からスタートした二人の女子高生の関係は、恋とも友情とも少し違う、〝名前が付けられない〟関係。人はふわふわしたものを勝手にジャッジし、カテゴライズしたがる。でも、本作はそれをしない。不確かなものを不確かなままで、大切にしていく。これからの時代、きっと多くの人を救うであろう姿勢が、本作には込められている。

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 1位の『違国日記』だけではなく、13位『ちはやふる』、17位『血の轍』、21位『重版出来!』も完結した作品だ。それぞれ読み口は異なるが、物語を最後まで完走したことを称える声が多い。

 これまであまりスポットライトが当たってこなかった問題と向き合った作品も去年のランキングには目立つ。16位『「神様」のいる家で育ちました~宗教2世な私たち~』はまさにそんな作品。親の信仰によって悩み、苦しんできた〝宗教2世〟たちの声を掬い上げ、世の中へ伝えた。同率で30位にランクインした『胚培養士ミズイロ』と『わたしたちは無痛恋愛がしたい~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~』もそう。前者は不妊治療のリアルを丁寧に描き、後者は女性の生きづらさやフェミニズムをテーマにする。いずれも〝知らない世界〟を見せてくれる作品であり、それによって救われる人や大きな気付きを得る人は多いはずだ。

 その他、アニメ化によって盛り上がりを見せている作品も、例年通り少なくない。5位『【推しの子】』、9位『スキップとローファー』、12位『葬送のフリーレン』、14位『呪術廻戦』、19位『SPY×FAMILY』……。どれも放送開始と同時に話題を集めた作品ばかりだが、特筆すべきは『【推しの子】』だ。その衝撃的な展開のみならず、YOASOBIが歌う主題歌『アイドル』も注目され、去年はまさに〝推しの子旋風〟が吹き荒れた一年だった。

 マンガは私たちにさまざまなものを与えてくれる。ただひたすらに楽しい時間、社会問題を考えるヒント、心震わす感動……。なにを求めるかは読者一人ひとりの自由だが、次の一年も生きる糧になるような作品と出合いたい。

文=イガラシダイ

※この記事は『ダ・ヴィンチ』2024年1月号の転載です。