「マルハラ」には「!」で対抗できる?/ツッコミのお作法⑦
公開日:2024/12/23
気にせず「。」をつけてくる相手に悩んでしまったら
ただ、相手の感覚が常に自分と近いとは限りません。普通に全文「。」を使う人もいます。そういう人とLINEをしていて、送られてきたメッセージがボケなのか本気なのかわからなくて悩むことってないでしょうか。たとえば、自分が遅刻してしまったシチュエーションだった場合。「ちょっと遅刻します!ごめん!」と送って「信じられないんだけど。」と返ってきたら「マジでキレてる? そういうボケ? どっち?」となってしまいます。ボケなら「シンジラレナーイ!!!」くらい言ってくれたらこっちも「日ハムのヒルマン監督か!」とツッコめるんですけどね。
連載の第6回で〈ツッコミ保留〉というお作法を紹介しました。冗談か本気かわからないことを言ってくる相手に対し、まずはツッコまずにいったん真面目に話を聞いてみるというスタンスのことです。LINEの場合もこれは有効な気がします。
特にこのシチュエーションの場合、こっちが遅刻している手前、一か八かでツッコんで賭けを外したら大変なことになります。いったん真剣に謝りましょう。そこで相手が「いや、本気で怒ってないよ。そういうボケだよ」というような返しをしてきたらようやく心置きなくツッコめます。相手からすれば、ボケのつもりが伝わらなくて自ら「ボケです」と説明してしまった状況です。その気まずさを緩和するためにも「だとしたらシリアスすぎるよ!」や「文末の(笑)紛失した??」などといったツッコミができそうですね。ただ、「こいつ遅刻してるくせにずいぶん意気揚々とツッコんでくるな」という新たな火種になる可能性もあるのでそこは慎重に。
■ツッコミ名称
安堵終わりツッコミ■ツッコミ例
「だとしたらシリアスすぎるよ!」■解説
ボケか本気かわからないLINEに対してひとまず真剣に受け止めた後、ボケだと判明した場合のツッコミ。
“誤爆”してしまったら、あえてボケてみる
「!」をたくさんつけたり普段の口調にできるだけ寄せようとしたり、いくら気をつけていても意図せず気まずい状況に陥ることもありますよね。
いわゆる「誤爆」なんかはその代表例じゃないでしょうか。本来送るはずだった相手じゃない人に誤って送ってしまう……想像するだけでゾッとします。今はメッセージを取り消すことができるので、既読になる前に消してしまえば(長押しで確認されていない限り)セーフです。
僕自身はやらかしたことは幸いまだないのですが、もし誤って送ったものに既読がついてしまった場合は「◯◯がメッセージの送信を取り消しました」という例の文言を自分で打ち込んで送信するかもしれません。相手が「いや、取り消せてないよ!」とツッコんでくれることを願って。
もちろん間違って送ってしまった方が100%悪いのですが、「見ちゃいけないものを見てしまった」という罪悪感を覚える人もいると思います。そこで開き直ってボケることでツッコミを誘い出せたら、お互いの気まずさを中和できるのではないでしょうか。もちろん、本当に見られたらまずい内容だった場合は既読がついていようが取り消した上でちゃんと謝りましょう。ボケもツッコミも、きちんと人間関係を築いた上でやるものですからね。
そのほかに不可抗力で気まずくなってしまう状況として思いつくのは、「グループLINEにメッセージを送ったのに無反応」などでしょうか。「人望がないのだろうか……」と悲しくなりますね。だからと言ってストレートに「誰か返事ください!」と聞くのもあまり得策とは思えません。返事する側のハードルも上がるし、変に謝らせちゃいそうな感じもしますよね。
そういうときは「ふざけてるんだろうな」と絶対に伝わる書き方にすると返信がしやすくなると思います。「ひょっとしてみんなデジタルデトックス中!?」「みんなどこ!?おれ『アイ・アム・レジェンド』のウィル・スミスみたいになってない!?」など、これぐらいのトーンなら相手も既読スルーしていた負い目が和らいで返信しやすくなる気がします。自分で言っておいてなんですが、『アイ・アム・レジェンド』の例えはちょっとやりすぎな気がするのでおすすめしません。
相手の表情も状況も見えないだけに、LINEでのツッコミは対面よりも繊細で難しいです。誤解や行き違いに気をつけつつ、いつ休日課長に見られても褒めてもらえるような会話を心がけたいですね。

(取材・文/斎藤岬)
<第8回に続く>
森本晋太郎(もりもと・しんたろう)/1990年、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。