「“自分に刃を向ける”作品に惹かれるんです」漫画家・鳥飼茜が愛読する活字作品【私の愛読書インタビュー】

文芸・カルチャー

公開日:2024/12/14

鳥飼茜さん

『先生の白い嘘』『サターンリターン』の作者で、このたび新作『バッドベイビーは泣かない』(講談社)第1巻が発売となった鳥飼茜さん。新作は「妊娠・中絶」がテーマながら、コメディ要素もあり、読み心地が軽くて楽しいと評判になっている。

 さまざまなジャンルで活躍する著名人たちに、お気に入りの書籍をご紹介いただくダ・ヴィンチWebの連載「私の愛読書」。今回は、活字作品が大好きという鳥飼茜さんに、最近読んで感銘を受けた作品について話を聞いた。

(取材・文=立花もも 撮影=島本絵梨佳)


――お仕事場に、小説だけでなく、さまざまなジャンルの活字本が置かれているのが印象的でした。

鳥飼茜さん(以下、鳥飼) 今はほとんどマンガを読まないですね。子どもの頃は、それはもうマンガが大好きで、あれこれ読みふけっていたのですが、中学に入った頃から、意識的に遠ざけるようになってしまった。思春期の当時はオタクだと思われたくなかったんでしょうね。それでも、おもしろい作品は常に探していましたし、人目のつかないところで読んではいたんですけれど、マンガ家デビューしてからはいっそう読まなくなってしまいました。SNSに積極的でない理由と同じで、他人と自分を比べやすい性格だから意識的に避けている、というのも大きいと思います。活字の本は、マンガよりも自分と距離を離して読むことができるから、情報としても頭に入ってきやすいんですよ。

――鳥飼さんの活字エッセイ『漫画みたいな恋ください』(筑摩書房)もマンガと同じくらい大好きで、もっと鳥飼さんの文章を読んでみたいなと思っているのですが、そもそも活字に対する興味も強いのでしょうか。

鳥飼 そうですね、活字を読むのは好きです。頭のなかがすぐに考え事でいっぱいになるので、それを避けるためにも、時間があれば何かしら読んじゃいます。商品説明や、新刊のあらすじだけでも、隙あらば文字を読みたい。

――ふだんは、どのような本を読まれることが多いのでしょうか。

鳥飼 わりと、犯罪系のノンフィクションを読むのが好きですね。『バッドベイビーは泣かない』のインタビューでお話しした、木目田さんのモデルに対する想いと共通しますけど、やっぱり、現実の強度には勝てないなと私は思ってしまうんです。だから小説を読むときも、自分自身に刃を向けて、えぐりだすように描かれているものに惹かれます。

――最近、おもしろかった小説としてあげていただいたのは安堂ホセさんの『DTOPIA』(河出書房新社)ですが、どんなところに惹かれたのでしょう。

DTOPIA
DTOPIA』(安堂ホセ/河出書房新社)

鳥飼 いやもう、とにかくおもしろくて。ボラ・ボラ島を舞台に、ミス・ユニバースを10人の男で奪い合うという、恋愛リアリティーショーを題材にした作品なのですが、国籍を超えた多様性をこれほど生々しい当事者感覚をもって描けるのは、安堂さんだからだろうなと思います。とにかく、鮮烈なシーンの連続なんですよ。

 印象に残っているのは、参加者たちが恋愛模様を振り返って別室で各々セルフ解説するところ、よくあるシーンですよね。恋愛リアリティーショーは、海外ではとくに下品で扇情的な発言を煽るところがあって、センテンスを過剰に短く区切って、執拗に演出される。私自身が、編集された動画を見慣れているからこそ、いかにもポップで毒々しく「映えた」映像がありありと思い浮かびました。

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