第19回「君と宇宙を歩くために」/鈴原希実のネガティブな性格がちょっとだけ明るくなる本
公開日:2024/12/25

人はそれぞれ、得意なことと苦手なことがありますよね。
私は学生時代、現代文は得意でしたが物理がとても苦手でした。
そして、人と話すこともすごく苦手でした。
今も人見知りは健在なのですが、学生時代は今より更に苦手意識が強かったです。
では、みなさんはどうでしょう?
得意なこと、苦手なこと。
それぞれ考えてみてください。
いくつ思い浮かんだでしょうか?
こうして考えてみると、苦手なことの方が得意なことよりも浮かびやすいような気がしませんか。
でもそれってよく考えたら当たり前なのかもしれません。
だって得意なことについては特に考えなくても良いけれど、苦手なことについては克服する方法や改善策を考えることが多いですから。
思い浮かびやすくもなりますよね。
人はそれぞれ得意不得意があり、自分にとって難しいことをいとも簡単にやれてしまう人がいる。
その一方で、自分にももしかしたら人にはない良さが詰まっているのかもしれない。
そんな、自分を見つめなおして新しい世界の見方を教えてくれるような作品を今日はご紹介したいと思います。
今回ご紹介するのは『君と宇宙を歩くために』です。
勉強もバイトも続かないヤンキーの高校生・小林。
ある日、そんな彼のクラスに変わり者の宇野が転校してくる。
彼は立て続けに話しかけられると硬直してしまったり、たくさんのことを同時に行えなかったりと普通のことが苦手。
それでもさまざまな工夫をして頑張っている宇野に共鳴した小林は自分も変わろうと行動を起こす。
というのがこの作品のあらすじとなっています。
こちらの作品、今のあらすじで少しでも気になったよ!という方はぜひ今すぐ第1話を読んでいただきたいんです。
その理由なのですが、こちらの作品がもともと1話完結の読み切りの予定だったからというのもあります。でも、一番の理由は違います。
一番は、第1話から伝わってくるパワーがとにかくもの凄いから、なんです。
この作品の第1話は本当に印象深くて、最近読んだ作品の中でもトップクラスに印象に残る第1話でした。
特に宇野くんが、
「自分が分からないことがあるときは宇宙に浮いているみたい。
上手にまっすぐ歩けなくて、それを笑われたり怒られたりすると怖くて恥ずかしい気持ちになる。でも僕は宇宙を歩きたい!」
と語ったシーンが凄く印象的でした。
どうしても苦手だと自分で感じることをなんとか改善しようとする作業って、本当に地道で途方もない作業に思えると私は思っていて。
その中で辛い、苦しい、やめてしまいたいなどのネガティブな思いも何度も生まれたはずなのに、それでも宇宙を歩きたいと真っ直ぐな瞳で話す宇野くんがとにかく眩しかったです。
どれだけの壁を乗り越えてきたのだろう。
何度悔しい思いをして、何度立ち上がったのだろうと思いました。
そんな彼の姿をみて、小林くんも自分も頑張ってみようという思いが湧いてくるのですが、私自身も同じように頑張ってみようと強く感じました。
その他にもこの作品には印象的なセリフや場面がたくさんあります。
例えば、後に2人が加入することになる部活の先輩である美川先輩。
彼はずっと頭の中では話したい言葉を考えているのですが、いざ対面で誰かとお話しするとなると焦ってしまい上手くいかないという場面が多くあります。
私自身も誰かとお話しするときに脳内でぐるぐると会議を開いてしまうタイプなのでとても共感していました。
そんな彼が、少し苦手とする属性の小林くんと雑談することになった際に、上手く話せなかった場面が出てきます。
その後しばらく落ち込み悩んでいる彼に、部活の先生がかけた言葉がすごく印象的だったんです。
それが「ひとりで100点出そうとせずに 30 40出しあって100っぽくしましょうよ」というもの。
人間関係の100点なんて先生でも出せなくて、
もし100点を出せていると思うなら、それは私とあなたが足して100になっているだけ。
あなたが話を聞いて受け取ってくれなかったら、僕が何点を出しても変わらないんだから。
この言葉ですごく救われるものがあるなと私は感じました。
やっぱりどうしても他の人達の会話ってすごく話が弾んで見えたり、自分ももっと気の利いたこと言わないと…みたいな思いが先行しがちですが、コミュニケーションは結局人と人とのかかわり合いだと思うので、誰に対しても100点の返答ってきっと存在しないんです。
だからそんな肩肘張らずに、二人で100点にできたらいいねっていう気楽さでいいんですよという考えにすごく納得して、心がふっと軽くなったのを感じました。
このように誰かにとってはなんてことない言葉でも、自分にはすごくグッとくる、自分の日常に根づいていきそうな言葉がたくさん詰まっている漫画になっています。
ぜひこの作品で新たな視点を発見してみてください!
