太賀「狂気の入口は、誰にでも見えているような気がします」
公開日:2017/11/6
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、映画『南瓜とマヨネーズ』で、ミュージシャンの青年・せいいちを演じた太賀さん。おすすめの戯曲『水の戯れ』で太賀さんが自分を重ねた役とは?

たいが●1993年東京都出身。2006年デビュー。NHK大河ドラマ(4作品)、月9ドラマ『恋仲』などに出演、2016年『ゆとりですがなにか』の「ゆとりモンスター」役が話題に。岩松作品には舞台『国民傘』など3作出演。主演映画『ポンチョに夜明けの風はらませて』公開中。舞台『流山ブルーバード』(12月8日~)の公演が控えている。
ヘアメイク:高橋将氣 スタイリング:石井 大 衣装協力:プルオーバー 3万円(ブルスコ/オーバーリバー TEL03-6434-9494)、カットソー 1万9000円(ウィリー チャヴァリア/ジェットン ショールーム TEL03-6804-1970) ※価格は税別
敬愛する劇作家・岩松了の『水の戯れ』を舞台で二度観て、戯曲を読んだ太賀さん。彼が自分を重ねたのは、意外にも、冴えない中年男の春樹だった。
「不器用で、情けなくて……。純粋な愛情があるゆえに狂気をはらんでしまう人ですよね。自分は春樹がしたような(狂気的な)行動をとるかはわかりませんが、狂気の入口というのは、誰にでも見えているような気がします」
春樹が想いを寄せる女性・明子については……?
「岩松さんの描く女性はすごく魅力的なんです。でも、なぜ魅力的なのか、理屈ではわからない。作品の世界観自体も理屈では語れないというか……でもそこにこそ、岩松作品の答えがある気がしています」
出演映画『南瓜とマヨネーズ』の原作マンガを読んだ時は「余白がいっぱいあって、想像を喚起させるような作品だなと、映像化されたらいいものになると思いました」。
互いに愛情を抱きながらも、鬱屈した日々の中ですれ違っていくせいいちと恋人のツチダ。留まり続けるツチダとは対照的に、せいいちは、もがきながらも自分の足で一歩を踏み出す。抱えていた暗く重い何かがせいいちの中から抜けたことが、太賀さんの絶妙な表情で表現されるが、せいいちはなぜそこに至ることができたのだろう。
「二人で暮らしていた部屋を離れた時に、せいいちはそれまでツチダと過ごした時間のことを振り返ったと思うんです。その時に『幸せだったな』って思えたんじゃないでしょうか。原作にも脚本にも書かれていないので正しいかどうかはわからないですが……そういうことのような気がします」
多くのクリエイターからの出演オファーが止まらない太賀さんだが、自らラブコールを送りたい相手はいるのだろうか。
「ここで言うのは嫌らしいですかね……」と迷いながら挙げたのは、橋口亮輔監督。
「高校生の時に『ぐるりのこと。』を観てすごく感動して、いつかお仕事できたらと思ってきました。今でも余韻が残るぐらい、言葉が深いところに染みてくる作品でした」
(取材・文:門倉紫麻 写真:江森康之)
映画『南瓜とマヨネーズ』

監督・脚本:冨永昌敬 原作:魚喃キリコ『南瓜とマヨネーズ』 出演:臼田あさ美、太賀、オダギリジョー 配給:S・D・P 11月11日(土)より全国ロードショー
●同棲するミュージシャンの恋人・せいいちを支えるためにキャバクラで働くツチダ。お金欲しさにそこで知り合った男と愛人契約を結ぶが……。複雑な思いのまま働き出すせいいち。昔の恋人と再会したツチダ。穏やかな日常が変わっていく。やくしまるえつこ作の劇中歌にも注目を。
(c)魚喃キリコ/祥伝社・2017『南瓜とマヨネーズ』製作委員会
インタビュー・対談カテゴリーの最新記事
今月のダ・ヴィンチ
ダ・ヴィンチ 2025年7月号 解体! 都市伝説/文字が映す表現者たち
特集1 有名エピソードから今話題の“あの噂”まで 解体! 都市伝説/特集2 文章だから見える、もう一つの顔 文字が映す表現者たち 他...
2025年6月6日発売 価格 880円
人気記事
-
1
-
2
娘がいじめを受けていることの真偽を確かめるため担任に問い合わせ。すると翌日、担任が報告してきたのは耳を疑う対応だった【漫画家インタビュー】
-
3
「意地悪をした自覚がない」という子ども。娘をいじめる“放置子”との距離感に悩む母親の姿を描いたコミックエッセイ。『コウノドリ』ふらいと先生のコラム付き!【書評】
-
4
-
5
人気記事をもっとみる
新着記事
-
レビュー
キーワードは「性愛」!? 同性婚や事実婚、パートナーシップ制度の登場…結婚の在り方が多様化する今こそ知りたい「人が結婚する理由」【書評】
-
連載
たった10日でがんステージⅠからⅡへ。30代女性が進行の早さに驚き/ママ5年目でがんなんて⑤
-
連載
暖かくなったら、ビールが飲みたい! ラムのハンバーガーと相性が抜群なビールは?/ランチ酒1⑥
-
連載
汚部屋を理由に娘が里帰り出産を拒否。親子の溝を埋めるために家を変えたい/古堅純子の片付け事件簿⑤
-
レビュー
「ネグレクトしてる」「出会い系アプリ中毒」全く身に覚えのない噂がママ友の間に広まっていた… 誰が? 何のために? 友達だと思っていた相手はフレネミーだった【書評】
今日のオススメ
-
レビュー
「お前は俺のシンデレラになるんだ」暴君御曹司の寵愛が運命を変える! ざまぁ×溺愛が爽快な大正ラブロマンス【書評】
PR -
レビュー
彼が死ななければこの恋は始まらなかった……大人が泣ける10万部ヒット作が復刊!切ない青春ラブストーリー『夏空に、きみと見た夢』【書評】
-
レビュー
NHK夜ドラ「あおぞらビール」の原作!小説家・森沢明夫の野遊び体験を綴った、抱腹絶倒のエッセイ集が新装版になって登場【書評】
PR -
インタビュー・対談
脱出ゲーム中に殺人事件発生!? 16万字の初小説が話題になった三日市零さんに聞く「読者参加型謎解きミステリー」の楽しみ方【インタビュー】
-
ニュース
トランプ政権は日本にとって追い風になる? 元内閣官房参与・藤井聡が日本再生の道を語る『トランプ・ディールで日本復活!』リリース
電子書店コミック売上ランキング
-
Amazonコミック売上トップ3
更新:2025/6/18 05:30 Amazonランキングの続きはこちら -
楽天Koboコミック売上トップ3
更新:2025/6/18 06:00 楽天ランキングの続きはこちら