成功者とそれ以外の分岐点は「時間の使い方」にある!一線を画す、愛の詰まったビジネス書
更新日:2018/1/15

時間の使い方。それは私たちの人生を大きく左右する。時間術を扱ったビジネス書や自己啓発本は世の中に数多存在するが、『仕事ができる人の最高の時間術』(田路カズヤ/明日香出版社)は、それらとは一味違った良書だ。本書を読み終えてこのレビューを執筆するにあたり、私はあえて「この本は全てのビジネスマンにお勧めできる時短本だ」などの安直な表現は避けたいと思った。そんな表現は本書や著者に対して失礼に値するような気がしてしまうからだ。私は素直に「本書は、胸の内に火を持った人の向上心に真正面から応えてくれる熱い本である」と感じた。
本書は、仕事の成果を上げようとする反面、プライベートをおろそかにしてしまう現代人に向けて書かれている。やらされ仕事が生活の中心になってしまっている社会人や目先の売上確保に必死になっている中小企業の経営者を救いたいという著者の想いが詰まっているのだ。と言いつつもやはり、本書はそのエネルギーだけでなく実用面から見ても非常に優れており、収録されたノウハウは全ての人が応用可能であることは間違いない。どのアドバイスも非常に合理的で、これからの世の中を生き抜いていく私たちにとっては欠かせないものの見方を教えてくれている。そんな本書の中で私が感銘を受けた時間術を2点、ここに紹介させていただきたい。
■「人生時給」を設定する。―第1章「時間に対する意識を変える」より
現在の東京都の最低賃金は1時間958円(2017年12月10日現在)。パイロットの時給は1万399円(教育社会学者舞田敏彦氏の算出/2014年)であり、その差は11倍近く。著者は独立当初から「時給1万円」の仕事をすることを目先の目標にし、今はそれ以上の「人生時給」を設定している。「人生時給」は自分で高く設定することが大切だという。自分の時給を高めに設定することには以下の3つのメリットがあると著者は説く。
1「その時給をいただくために自分が何をすべきか、常に意識するようになる」
―「意識」が変わるので、「行動」を変えやすくなる。
2「優先順位が明確になる」
―「“時給1万円”であるべき自分が部屋の掃除や片付けに時間を費やすよりも、1時間3000円で掃除のプロに任せている間に自分が働き、結果として7000円の収入を得た方が、はるかに効率的かつ効果的である。」との考えに基づき、著者は家事代行サービスを利用しているという。
3「その時給に見合った人や仕事を引き寄せることができるようになる」
―「時給1万円」の仕事をする人に「時給1000円」の依頼はこないし、きたとしても躊躇なく断ることができる。また、時給を高く設定したほうがそれに見合うクライアントがつくようになり、結果として良い仕事ができるような業種も往々にしてある。
“時間”を自分の味方につけたいのならば、まずは時間に対する意識を変える必要がある。「人生時給」の概念はそのときに非常に役立つだろう。
■「目標達成シナリオ」を描く―第5章「時間の投資先を決める」より
第5章で著者は「時間」は「お金」と同じく投資するものであると説いている。時間の投資先を明確にするためには「目的」「目標」「戦略」「戦術」の違いを理解することが重要だ。コンサルタントや講師として1万人以上の営業職の人を見てきた著者は、「目標達成できない人は、会社から与えられた“目標”を“ノルマ”や“夢”として捉えている」という点に気付いたという。
「ノルマ」を主体的に捉えたものが「目標」であり、「夢」に日付を入れたものが「目標」なのですが、目標達成できない人は、その考え方を持てていませんでした。(186頁)
密かに「夢」を持っている。毎日「ノルマ」に追われ頑張っている。しかし、目標との違いの認識が曖昧で、そのための戦略や戦術が自分の中で上手く整理出来ていないと感じる人には、本書の第5章を読んでみることを推奨したい。この章は「目標達成コンパスシート」「目標達成シナリオシート」「目標達成マンダラシート」の3点のワークシートに記入しながら読み進められる仕組みになっており、この作業もまた、かけがえのない“自己投資”になり得ることだろう。
それ以外にもここでは紹介しきれないほど多くの有用な時間術が詰め込まれた本書。今や時間のプロである著者が、プライベートがズタボロだった過去の自分に向けて執筆したという数々の時間術は、ビジネスとプライベートの両方を充実させるためには不可欠な思考法とテクニックだ。またそれと同時に本書には、本書に対してお金と時間を投資する読者の向上心に真正面から応えてくれるような「熱」がこもっている。
文=K(稲)
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