「旦那よ、なんで分かってくれないのかなぁ…」その原因は、夫が“男脳”の持ち主だからです!
更新日:2017/12/26

あなたは、10年前から使っているキッチンカウンターの角に小指をぶつけ、思いがけず痛い。うう…。そこにやって来た寝起きの旦那にあなたはこう甘える。「ううう。指をぶつけちゃった」と。すると旦那はあなたにこう言い放つ。「どうしてぶつけたの?」…。「うう、痛い」とうずくまるあなた。「理由が分からなきゃ何もアドバイスできない」と無情な旦那。「可哀想にと言ってほしかっただけなのに…」。そうぼやくあなたに旦那はこう畳みかけてくる。「可哀想に、と言われることに、何の意味があるんだ?」。さぞかしストレスだろう。旦那よ、なんで分かってくれないのかなぁ…、と。
ただ単純に甘えたいときに要らぬ問題解決を試みるのが男という生き物だ。ではこの旦那は本当に薄情なのか? 答えはNOだ。男性脳からしてみれば、妻が再度痛い思いをすることのないようにという愛情ゆえにそのような問答をしているのだ。
女性脳は右脳(感じる領域)と左脳(考える領域、言語機能局在側)の連携が男性脳よりも遥かに優れているため、感じたことが即言葉になるように出来ている。それに対して男性脳には“鈍感力”があり、目の前の人の表情変化なんかに心を惑わされずに公正で合理的な解決とやらを試みる。
「鈍感力? それっぽい名前をつけてかこつけてるんじゃないわよ!」そう思いたくなるお気持ちも痛いほどわかるが、こうも考えてみてほしい。マンモスを追いかける時代から自然淘汰の中で生き残って来たこの男性脳があるからこそ、ビルが建ち、橋が架けられ、電力が安定して供給される。山手線だってだいたい5分刻みには来てくれるのだ。それなら人類を支えているのは男性脳だけってこと? その答えもNO。女性脳がなければ人類は子を育て、次世代に命のバトンをつなぐこともできない。
女性脳は「長い文脈」で一気に記憶する才能も持っている。赤ちゃんが急に発熱した場合にも、現在の状況と過去の「長い文脈」を照合することで的確で迅速な「流れるような処置」ができるのだ。幼い頃の記憶、数年前に聞いたママ友の情報なんかを総動員し、今目の前で起こっている事象に対してダイナミックな判断を下すスキルは子育てには欠かせない。
夫婦間で日々生み出される絶望的な深さの感覚の溝は、脳科学の立場から見れば致し方ない構造だったりもする。冒頭のやりとりは、脳科学の立場から夫婦の付き合い方を説いたベストセラー『夫婦脳—夫心と妻心は、なぜこうも相容れないのか—(新潮文庫)』(黒川伊保子/新潮社)に記載されているものだ。“科学”と銘打って男性の都合の良いように書かれた本じゃないのか?と訝ったあなた、安心してほしい。本書の著者は女性だ。さらには小指をぶつけ痛がる女性の話も著者の実体験だという。
人生の半分以上をともに過ごす夫とは、なんだかんだ言っても良好な関係を築きたいものである。「この人と一緒の空気を吸ってるだけで気持ち悪い」よりも「この人と夫婦でよかったな」と、たまにでも思えていた方が幸せである。脳の基本的な構造が大きく異なる男女がともに相手に対して“良き妻”“良き夫”でいてもらうためには、相手にそれを求めているだけでは駄目だ。
本書に目を通すと、妻をイラっとさせてくる夫の言動のカラクリを理解することができる。「俺には一人の時間がないとダメなんだよ」「少しは夫を立てろよ」「で、その話の要点は何?」などといった、イライラモードを発動させる夫の発言は、単純に男の幼さやだらしなさだけによるものではないことが分かる。例えば、「男の隠れ家」について。上述したように、男性脳は右脳と左脳の連携が頻繁ではないため、「事象を、イメージのまま、無意識にぼんやりと整理する」時間が欠かせず、この時間がないと男性は早死にしたっておかしくない。「疲れてるのなら、寝てりゃあいいじゃん。起きているのなら、家事手伝ってよ。だらしない!」といった発言は、実は夫が生命活動をするうえで重要な時間を否定してしまっていることになる。
まったく違う性質を持った2人が等しく幸せになるためには、差異を理解し合い、可能な範囲で譲り合うことが必要なのではないだろうか。全ての夫婦に読んでもらいたい本書。まずはご自身が読んでみて、ぜひとも旦那にも読ませたいものである。
文=K(稲)
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