ネガティブ思考で何が悪い? 自分を認めることで生き方が楽になるコミックエッセイ
更新日:2018/3/12

ネガティブ思考のせいで生きづらい…。そう思うことが、誰しも一度はあるのではないだろうか。一般的な日本人は、概してネガティブ思考に陥りがちだ。
そんな「もっと楽に生きたい」「心を楽にしたい」と思っている方たちにぜひ読んでもらいたいのが、コミックエッセイ『それでいい。』(細川貂々、水島広子/創元社)。著者である細川貂々氏が、映画やドラマも大ヒットしたベストセラー『ツレがうつになりまして。』の原作者だと知れば、興味を抱く方もいるだろう。
気楽に生きよう。そう思ってすぐに実行できれば、苦労はない。そのカギは“楽”らしい。しかし、何が“楽”で、何が“楽ではない”かを理解している人間は少ない。ところが、この本を読むと、自分でも気づかなかった“楽になる”方法や、自ら“楽を放棄”しているという指摘が、自然と心に入り込んでくる。それは、ちょっと不思議な感覚ですらある。
本書の物語は実話をベースにしたもの。幼少期からネガティブな環境で育った著者と、精神科医・水島広子氏の対面コミュニケーション形式で進んでいく。コミックエッセイなので読みやすく、さらに優しい。この優しさは、著者が温かみのある作品を描く漫画家・イラストレーターであるからこそと言えるだろう。
勘違いしないでほしいのは、精神治療の対人関係療法書ではないこと。心の病とまではいかないものの、日々の暮らしに何かしら「生きづらさ」を感じている人向けの、対人コミュニケーション入門編と考えればわかりやすい。「感情を大切に」「人間として当たり前」「大事なのは、それでいいと思うこと」。様々なケースを想定しながら、二人の対話には数々のキーワードが登場する。その度に著者は「えっ」と驚き、「そうかぁ」と納得していく。
さらに「世の中、ボーッと生きている人が8割」とまでいわれると、まさに「えっ」だ。他人のほうが優れていると思い込み、自らネガティブな思考ルーティンに嵌りがち。その図式を鋭く指摘されるのは痛いけれど、すぐに「そうかぁ」と気持ちが楽になる。作品内の著者と同じだ。ここまで著者と読み手が一体化する本も、珍しいかもしれない。
ネガティブ思考の解説に納得した後は、こうしましょう、こうしてはダメですよ…と、具体的なカウンセリングに移っていく。これもあれもしなければならないと感じさせないのは、読み進むうちに自分の心が素直になっているからだろう。
ネガティブ思考に悩まれている方にも、そうでない方にも、本書は門戸を広く開けてくれる。気軽に読めるコミックエッセイなので、空き時間にでも読んでみてほしい。明日からの生き方が、ちょっとだけ“楽”になるかもしれないから。
文=藤井淳
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