散歩が楽しくなる? 雑草の生きざまはとっても人間くさい!

暮らし

公開日:2018/6/11

『雑草キャラクター図鑑』(稲垣栄洋/誠文堂新光社)

「雑草」には、多くの人がマイナスのイメージを持っているのではないだろうか。

 刈っても刈っても生えてくる邪魔もの。どこにでも生えている価値のないもの。実際、「雑草」の定義は「望まれないところに生える植物」だという。明確な定義はなく、人間が「邪魔だな」と思えば、雑草と呼ばれてしまうのだ。

 そんな雑草たちの知られざる魅力に気づかせてくれるのが『雑草キャラクター図鑑』(稲垣栄洋/誠文堂新光社)だ。

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 雑草が道端や民家の近くに生えることが多いのは、「弱い植物」だからだという。人間の近くで生きることは、植物にとって決してベストの環境ではない。雑草だって本当は人気のない山奥で安全に暮らしていたいのだ。

 だが、雑草は一般的に他の植物に対する生存競争に弱く、「場所取り」に敗北した結果、人間の近くで生きる道を余儀なくされただけ。その結果、過酷な環境で生き残るための戦略が必要になり、だからこそ雑草は驚くようなユニークさを持っているのだという。

 本書は、そういった雑草の特徴を「擬人化」することで、「雑草愛」に目覚める(かもしれない)一冊だ。

≪ひとりぼっち。だけど、クローン種子で増殖できるスゴイ異国人≫

イラスト/死後くん

 よく目にするセイヨウタンポポは、都会でしか生きられない孤高の外来種。ヨーロッパ生まれなので四季のある日本に馴染めず、生存競争にも勝てなかった。結果、他の植物が生えないような住みにくい都会で生きていくしかなかったのだという。

 だが、そんなセイヨウタンポポにはスゴイ能力がある。他の花と交配しなくても、自分だけでクローン種子を作り、子孫を残せるというもの。そのため仲間と群れて咲く必要もなく、花粉を運んでくれる虫が少ない都会で生き残れているとか。

≪他人を踏み台にしてのし上がる、タレントの卵≫

イラスト/死後くん

 小さいオレンジ色の花をつける、一見可愛らしい雑草「ヤブガラシ」。だが、その名の通り、藪の中であっという間に成長して覆いつくし、他の植物を枯らしてしまう「嫌われもの」。

 藪の中では、誰もがスポットライト(太陽)を求め、上へ上へ伸びようと競い合っている。だが、つる植物のヤブガラシは、他の植物にもたれかかりながら、「自分で立ち上がる」労力を省き、その分、誰よりも速く上へと伸びていくのだ。

 言わば、人を踏み台にしてのし上がる自己中タイプ。しかも自分を支えてくれた相手を最終的に枯らしつくしてしまうのだから、かなりタチが悪い。花言葉は「不倫、積極的」だという。……積極的な不倫なんて、最悪じゃないか……。

 本書を読むと、普段気にも留めなかった街中の雑草に親近感を持つようになるでのは? 線路脇や河原は雑草の宝庫らしいので、本書を片手にお散歩がてら、探しに行くのも楽しいかもしれない。

文=雨野裾