【ひとめ惚れ大賞】自然は美しい。 恐れるのではなく 祝福して楽しもう『蜂と蟻に 刺されてみた』ジャスティン・O・シュミットインタビュー
公開日:2019/1/2

ジャスティン・O・シュミット:著
今西康子:訳
装丁(日本語版):吉野 愛
編集(日本語版):筧 貴行
白揚社 2500円(税別)
僕は田舎で育った普通の子どもで、そんなにワクワクすることもなかったので楽しみは自分で作り出さなきゃいけなかった。トンボや蝶といった虫を追いかけることは、いわば野球やアメフトのようなスポーツ。なかでもエキサイティングだったのは刺してくる虫との知恵比べだ。奴らの相手をするのはスポーツで必要になる体力に加え、頭脳も使う冒険ゲームだった。当時は気づかなかったが、奴らを見つけようとしたり出くわしたときどうなるのかを考えたりするのは、科学的発見のプロセスと同じだった。当時の遊びは科学者になるための礎だったわけだ。
僕が蜂の研究を始めた1970年代は化学研究技術が未発達だったから、分析材料として大量の毒が必要で、極めて多くの蜂―コロニー全体を収集しなくてはならなかった。収集の際、コロニーは防御態勢をとって問題の発生源(僕のことだ)を刺そうとする。この過程で大量に刺されたわけだ。
だが、意図的に刺される状況に自分を追い込んだことはほぼない。あるのは比較的おとなしく、そこまで痛まない蜂だ。例えばアシナガバチの祖先と似ているトックリバチ。アシナガバチの針はとても痛いのだが、「彼らは社会性が進化する過程で痛みを与える毒をもつようになったのか、社会性の発達前に痛い毒をもっていたのか」という疑問を抱いた。そこで数体のトックリバチに僕を刺させてみて、結果毒針はたいしたことがないことがわかった。つまり毒の痛みは社会性の発達前にあったものではなく、発達に合わせて次第に強くなったという結論に至った。
僕がこの本で伝えようとしたのは、人生の喜び、科学の喜び、自然の喜び、生物学と昆虫の喜び。そして何より、私たちの人生を豊かにしてくれる蜂たちの美しさと真価だ。自然の世界は本当に美しい。だからこそ恐れたりするのではなく祝福して楽しんでほしいね。
|| お話を訊いた人 ||
ジャスティン・O・シュミットさん サウスウェスタン・バイオロジカル・インスティテュート所属の生物学者。アリゾナ大学昆虫学科研究員。蜂や蟻に刺されたときの痛みを数値化した「シュミット指数」の発案者。
取材・文/田中 裕 写真/首藤幹夫 撮影協力:蜂天国
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