“ぱったん”したらアートのできあがり! 子どもの想像力が育つアートの絵本『ぱったんして』

文芸・カルチャー

公開日:2021/7/16

ぱったんして
『ぱったんして』(松田奈那子/KADOKAWA)

 色鉛筆やクレヨンを使う機会は多いけど、絵の具はハードルが高そう? いえいえ、絵の具をうまく使えなくても、きれいな絵を描ける方法があるんです。「デカルコマニー」という転写を利用した技法で、絵の具を塗った紙を半分に折ると、絵の具が押しつぶされて広がり、偶発的な模様が仕上がるのです。

 このデカルコマニーのおもしろさを子どもに伝えてくれるのが、絵本作家・松田奈那子さんによる新作絵本『ぱったんして』(KADOKAWA)です。前作『ふーってして』ではドリッピングを使った絵が描かれましたが、今回はデカルコマニーで子どもたちをアートの世界へといざないます。

あおむしと一緒にワクワクする冒険に出かけよう

ぱったんして

ぱったんして

 左側のページに描かれた、赤い点と赤い丸。ページをめくってぱったんすると、2つのりんごになっちゃった! りんごのもとにはあおむしがやってきて、冒険へと出かけます。

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ぱったんして

ぱったんして

 草むらの中にいるのは誰? ぱったんすると、うさぎさんが登場して、「あの点と線がこんなステキな絵になるの?」と4歳息子とともにびっくり。「茶色い丸がほっぺたになったんだね」と種明かしをすると、息子も負けじと絵を見つめて「黒い点は目になったんでしょ?」と教えてくれました。

「ぱったん」で絵が変わるのがおもしろいらしく、何回も飽きずに読み、「草むらの中にいるのはだあれ?」「うさぎさん!」という会話が何度も続いています。あおむしと一緒に、ぱったんでワクワクの冒険を楽しんでいるようです。

 このほかにも、ライオンやちょうちょなど、子どもの好きそうな「ぱったん」がぞくぞく登場。また、小雨から大雨になる…という時間の変化をデカルコマニーで表現したページは、まさにアート。さすが! と唸らされます。

実際に「ぱったん」してみたら!?

ぱったんして

 あまりにもすごい絵を自分たちも描いてみたくて、「やってみるぞー!」ということになりました。とはいえ、そんなに簡単に描けるのかな?

 紙を半分に折り、絵の具を用意すると、さっそく筆で色をのせ始める息子。4つの色をのせた後に、ぱったんしてみました。すると、ちょうちょのような絵ができあがり。

「わ〜っ!」という驚きの声を期待していたのですが、息子はなぜか「あれ?」というような不思議そうな顔をしています。「ちょうちょみたいだね」と声を掛けると「…」と、なぜか無言に。

ぱったんして

 ところが、「ちょうちょ」という言葉を聞いてハッとしたように、ちょうちょの体の部分を絵に描き足していました。

 筆者が思うに、息子は「虹」を描きたかったのだと思います。でも虹は、「半分だけ」じゃないと、きれいな半円になりませんよね。今度はそんな説明をしながら、虹にも挑戦してみたいです。

 ちなみに、ちょうちょも気に入ったようで、「ぱったんした、ぱったんした!」と言いながら、紙をヒラヒラさせて部屋中を走り回っていました。ささっと色を置いただけなのに、こんなにきれいな絵に仕上がるなんて! ちょうちょはきっと、デカルコマニーの中でも入門編で、はじめて絵の具を使うお子さんでも美しく仕上がると思います。

はじめての「アート」にぴったり

ぱったんして

 筆や絵の具を用意して…と多少の手間はかかるかもしれませんが、絵の具には色鉛筆やクレヨンとは違ったおもしろさがあり、絵の楽しみが広がります。筆がなければ、絵の具をそのまま紙に出すだけでも、きれいな絵になるそうです!

 ぱったんするまで完成形が見えないデカルコマニーで、子どもの想像力がどこまで伸びていくのか、親の期待も高まります。簡単にできるのに完成度が高いから、子どもの自信にも繋がりそう。

 梅雨の時期のおうち時間にもぴったり。お子さんの「アート」デビューにいかがですか?

文=吉田あき

■『ぱったんして』KADOKAWA
https://yomeruba.com/product/322103000536.html