『エクソシスト』『ジョーズ』……かの名作ホラー映画が影響を受けた事件・心霊現象を探る
公開日:2021/8/28

世の中にはたくさんのホラー映画がある。その非現実性から、物語は自分とは異なる世界にいる人たちが織りなす完全なフィクションだと思う人も多い。ところが、有名なホラー映画のいくつかは実話がもとになっている。
『ビハインド・ザ・ホラー ホラー映画になった恐怖と真実のストーリー』(リー・メラー:著、五十嵐加奈子:翻訳/青土社)では、犯罪学者リー・メラーによってホラー映画に影響を与えた実際の犯罪や心霊現象が解き明かされる。
“事実は映画よりも奇なり”
翻訳者・五十嵐加奈子さんがあとがきでそう綴っているように、実際の事件のほうが衝撃的であることも多い。
取り上げられている映画は21本。90年前のクラシック映画から一昨年公開されたばかりのものまで、年代も内容も幅広い。中でも特に印象に残るエピソードを紹介したい。
まず、アニマルパニック映画の代表作とも言える『ジョーズ』(1975年公開)。海水浴場に突然人食いサメが出現し、犠牲者が増えていく。そんな中、三人の男たちがサメに挑むというストーリーだが、実際の事件はもっと恐ろしい。
原作は小説で、作者のピーター・ベンチリーは数々の情報を基に書いた。
“とりわけ大きなヒントとなったのは、1916年にジャージー海岸で起きたサメ襲撃事件だ。その夏、一匹もしくは複数の人食いサメが出没し、多くの人々が襲われ命を落とした。”
この惨劇がどのような過程で起こったのか、誰が犠牲になったのかだけではなく、映画でサメに挑んだ三人の男のうちの一人、漁師クイントにモデルがいたことも明かされる。
そして、40年近く前に公開したにも拘らず、今も多くの人が知っている『エクソシスト』(1973年公開)も実話がもとになっている。これはある女の子が悪魔にとりつかれ、どんな治療法も効かず、神父が悪魔祓いをするオカルトホラー映画だ。
1949年に13歳の少年がおばの急死をきっかけに奇行に走り、悪魔祓いが行われた事件があった。『エクソシスト』はここから多くの題材を得ているという。本作ではその事件が事細かに描写されている。現在は当事者の少年が情緒不安定で、学校から離れたい一心で起こした事件だという説が有力なようだ。
他にも『サイコ』(1960年)、『羊たちの沈黙』(1991年)、『死霊館』(2013年)シリーズなど、21本の名作映画が年代順に並べられ、映画に影響を与えた事件や心霊現象が詳しく明かされる。
ただでさえ怖い映画ばかりだが、その背景を知れば、ますます恐怖は増す。ホラーが注目を浴びる夏、手放せない一冊になるはずだ。
文=若林理央