オアシスはM-1? ストーンズファンとは話が合わない? 芸人・永野のダダ漏れるロック愛
公開日:2021/11/12

“孤高のカルト芸人”として活躍する一方、自身のYouTubeチャンネル「永野CHANNEL」では、ロックについての歯に衣着せぬ正直トークが好評のお笑い芸人、永野さん。
そんな永野さんの並々ならぬロック愛が詰まった1冊が『僕はロックなんか聴いてきた~ゴッホより普通にニルヴァーナが好き!~』(リットーミュージック)だ。全24章の中で24のバンド、アーティストについて語っている。
1987年、13歳だった永野さんは兄の影響で洋楽に触れ始め、U2に出会ったことをきっかけにロックに目覚める。それから30年以上続くロック人生の中で出会ってきたバンドを縦横無尽に語りまくる本書だが、決して蘊蓄やマニアックな知識に終始しない。むしろ、ロックをあまり知らない人や興味がない人をも“永野節”で引き込んでしまうのが本書の魅力だ。
イギリスのバンド、オアシスの章では、彼らの音楽をM-1グランプリにたとえる。友人にすすめられオアシスのライブ映像を観てみたものの、〈びっくりするくらいステージに惹かれなかった〉という永野さん。そして〈オアシスってお笑いで言うとM-1なんだと思う。M-1決勝に行くようなコンビに見えるんだよ〉と述べる。つまり、曲が素晴らしいのは分かるけど、審査員ウケのいいお行儀の良さを感じてしまうとのこと。
対して、オアシスのライバルと煽られてきたブラーの方は〈(M-1の)1回戦は珍しいから通るんだけど、2回戦でちゃんと落ちる。そんな感じが僕は大好きです〉と言い放つ。このように、永野さん流の翻訳で海外ロックの世界を読者に伝えてくれるのだ。
もっとも、大好きだったはずのブラーも、〈捻くれた部分、遊びの部分〉が後退したことを理由につまらなさを感じてしまう。その切なさを〈「この人、大学卒業したんだ」みたいな、「就職しちゃったんだ」みたいな悲しさ〉と永野節で表現。
どうやら永野さんは、どんなに売れても元々持っている自分たちの軸を貫き通すバンドが好きなようだ。〈自分の聴き方は間違いなく一番ダサい〉と自虐するけれど、どんな大物バンドを前にしても、批評家が自分と異なる意見を言っていたとしても、自分に正直な聴き方を貫き通す永野さんこそロックだ。その本気度が伝わるから紹介されているバンドの音楽を聴いてみたくなってしまう。
ちなみに、ロックにハマったきっかけとなったU2に対しては、2000年に出したアルバムを境に〈ロックンロール感がなくなっちゃった〉ことを理由に離れてしまう。永野さんいわく〈それもこれも、すべてはU2が好きだったからに他ならない〉。また、ローリング・ストーンズの章では〈ストーンズファンとは話が合わない〉と言及。こうした、各バンドへの愛が強すぎるゆえに永野さんが感じてしまうことは、ロックファンに限らず共感する部分はあるのではないだろうか。
1章から24章まで全くテンションを落とさないアツい語りを読む限り、永野さんにはまだまだロックについて語り足りないようだ。これは第2弾を期待したい!
文=林亮子