猫中心の生活ってこんなにも幸せ! 無邪気でちょっぴりドジな三毛猫のオス「モチャ」と暮らしたら…?
更新日:2021/12/16

猫ブームが長らく続いていることもあり、猫を題材にした動物漫画が続々と誕生している。その中で、一線を画しているのが『拾い猫のモチャ』(にごたろ/KADOKAWA)。なぜなら、イラストを見ているだけで作者の猫愛が伝わってくるように思える、不思議な作品だからだ。
本作は、にごたろ氏がかつて共に過ごしてきた猫たちとの思い出や実体験をもとにした創作猫漫画。幸せを運ぶといわれている三毛猫のオス・モチャの愛くるしさや飼い主家族との笑いあり、涙ありな日常に心動かされる。
公園に捨てられていた三毛猫のオスを拾って…
モチャは段ボール箱に入れられて、公園に捨てられていた猫。発見した少女は、家に迎えたいと懇願。

熱意に負け、一家はペットと暮らせる家に引っ越し、猫中心の生活を送るようになった。
モチャは自分の欲求に素直で、感情表現が豊か。飼い主がペンを握れば、狩猟本能に従って戯れ、本を開くと上に乗り、堂々とへそ天。


良きタイミングを狙い、ゲームに夢中な飼い主の邪魔をする知的なイタズラにゃんこでもある。

しかし、その一方でどこか抜けており、高いところから自力で下りられなくなったり、スキニーパンツに入り込んで出られなくなったりするため、目が離せない。

一家は、こうした自由奔放な姿に、たくさんの笑顔と癒しを貰っていた。
そんなモチャ宅に、ある日、新たな家族が加わることに。それが、白猫のミルク。ミルクはモチャ家の父親が寄り道の帰りに出会い、保護した子。


自分を信頼し、身を任せてくれるミルクとの出会いを経て、父親の猫愛は増大。
モチャとミルクははじめ威嚇し合っていたが、徐々に心の距離を縮め、交流を深めるように。

家族の日常は、これまで以上ににぎやかなものになっていった。
小さな幸せが溢れる、家族5人での生活。それは永遠に続くように思われたが、モチャ一家の娘が下した決断により、暮らしにはある変化が。そして、ひょんなことから、ちょっぴりトロい子猫のノリ吉もモチャ宅にやってきて――?
もふもふ度満点な、モチャ家のドタバタな日常。猫好きならば、目が離せないこと間違いなしだ。
猫と暮らしていても暮らしていなくても猫をもっと好きになれる漫画
この漫画は「猫好き増殖本」だ。本シリーズを手に取るたび、いつもそう思う。にごたろ氏は猫と暮らす中で感じる、なにげない幸せを描くのがとても上手い。そのため、猫と暮らしたいと思っている方は夢が膨らみ、猫という動物がより愛しくなる。
そして、すでに猫と暮らしている飼い主は描かれている猫飼いあるあるに共感。今、共に暮らしている愛猫や天国へ旅立った子を思い浮かべ、改めて「猫っていいな」と思わされるのだ。
また、作中には「動物と生きること」について考えさせられるエピソードも多数。


身近にいる小さな命や、今まで見て見ぬふりしてきた野良猫、野良犬などに思いを馳せるきっかけも授けてくれる。
命には限りがあり、動物は飼い主よりも早く旅立ってしまうことが大半だ。だからこそ「動物と共に暮らす」という選択をした時には、その子が幸せだと感じられる時間を少しでも多く作ってあげたい。
笑顔や癒しをくれ、心の支えにもなってくれる小さな家族に、私たち人間ができることはまだまだ多くあるはず。そんなことを気づかせてくれるのも本シリーズの醍醐味だ。モチャ一家の猫愛溢れる日々から、動物の愛し方・想い方を学んでみてほしい。
文=古川諭香