新海誠の次回作『すずめの戸締まり』への流れを評論本『新海誠の世界』でたどる
公開日:2021/12/17

『新海誠の世界』(榎本正樹/KADOKAWA)
2022年秋、新海誠の新作長編アニメーション『すずめの戸締まり』が公開されることが明らかになった。『君の名は。』『天気の子』に続く、待望の最新作だ。
『すずめの戸締まり』は日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる“扉”を閉めていく少女・すずめの解放と成長を描くロードムービーとなる。
『君の名は。』『天気の子』に続く「三部作」となるか?
本作について、新海誠監督のアニメーション作品を文学的観点から評論した『新海誠の世界』(2021年刊行)の著者である榎本正樹はこう語る。
「『すずめの戸締まり』は、『君の名は。』(2016年)や『天気の子』(2019年)とともに、「災い」に見舞われた人類の生き延び方を描いた作品であると想像されます。これら三作品は新海監督の中で、「三部作」と呼べるような連関性をもった作品群として構想されているのかもしれません。
新海監督のアニメーションは、それぞれ単独として一つの世界を描いた作品として楽しめますが、作品同士が微妙なつながりをもった「群」を形成してもいます。キャラクター設定、舞台となる場所、時代背景、アイテムの扱い方、せりふの言い回し、シーンやカットの構成、物語のテーマとモチーフなど、相互接続的な関係が指摘できます。
新海監督の新作とは、監督による同時代的テーマとの格闘の軌跡であるとともに、旧作の積み重ねを基にアップデートされる協働的なスタッフワークの産物でもあります。旧作を吟味し、作品の流れを追い、新海監督の表現世界の本質を知ることで、来たるべき『すずめの戸締まり』をより深く理解することができるはずです」
『新海誠の世界』は、文芸評論家である榎本正樹が、新海監督のオリジナルアニメ全作品について考察し、検証を加え、論考した最新の新海誠論であり作品論。
新海監督とその作品を網羅的に理解するためのガイドブックとして、観客それぞれが作品をより深いレベルで解釈するためのリファレンスブックとして、さらに『すずめの戸締まり』公開に向けての事前準備のサブテキストとして、新海監督ファンはもちろん、アニメーションファン、映画ファンには必読の1冊と言える。
最新作『すずめの戸締まり』公開までに、本書を通じて新海誠の足跡と素晴らしい作品の数々に触れてみてほしい。
収録内容
第1章 最初期作品群 映像作家・新海誠の誕生
第2章 『ほしのこえ』 「世界」から「セカイ」へ
第3章 『雲のむこう、約束の場所』 回顧される青春の記憶
第4章 『秒速5センチメートル』 「風景」と「内面」と「速度」をめぐる物語
第5章 『星を追う子ども』 始源的世界への遡行
第6章 『言の葉の庭』 文学するアニメーション
第7章 『君の名は。』 共苦する魂の物語
第8章 『天気の子』はいかに作られたか 新海誠ロングインタビュー
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