楽しい会話の第一歩。「誰も傷つけない」話し方とは?/ゴゴスマ石井のなぜか得する話し方 誰からも好かれる会話のコツ
公開日:2022/4/19

●「相手がどう受け止めるか」を考えて言葉を選ぶ
新しいコミュニティに入っていくのが不安、初めて会った人と会話するのが苦手という人は多いようです。そう思ってしまう理由の根底にあるのは「何か失言をしてしまって嫌われたくない」という恐れでしょう。だから、どんな言葉をかけていいのかわからない。自分から話しかけるのはリスクが大きい……。
みんながそんなふうに考えて尻込みしてしまったら、いつまでたっても楽しい空気はつくれません。最初の一歩、最初の一声は勇気がいるかもしれませんが、ほんの少しのコツを覚えておけば「安全」は確保できます。
そのコツとは、「相手がどう受け止めるかをまず一番に考える」という姿勢です。
「こう言ったら自分がどう思われるかな」ではなく、「こう言ったら、この人はどう思うかな」を最初に考えるということ。
僕はもうすっかり習慣化していて、何か言葉を発する前に勝手に頭の中でシミュレーションが始まるような感じです。それで「OK」となった言葉なら安心して声をかけられます。
そんなふうに考えるようになったのは、学生時代のこんな経験からです。
当時、大阪府立体育館で開催される大相撲春場所でお客さんを席まで案内するアルバイトをしていた時のこと。黙って案内するのも寂しいので、最初のうちは一つ覚えみたいに、
「相撲は初めてですか?」
と聞いていたのですが、ある時、ハッと気づきました。
「初めてですか?」という質問は、人によっては「未経験だと思ってバカにされている」と感じるかもしれないな、と。こういう場所、不慣れなんでしょうと言われているように受けとる人もいるかもしれない。
そこで、質問を、こう変えました。
「楽しいですよね、相撲」(ニッコリ)
これなら、相手は自分の気持ち次第で自由に答えられる。
「楽しいね」と笑うだけの人もいれば、「いや、初めてなんだけど、やっぱり生で見るのは楽しいですか?」なんて聞き返してくる人もいて、そこから話が弾むようなこともありました。
さらに、いただくチップの額まで増えて、びっくり。
会話ひとつで、人の気持ちって動くんだなということを強く意識し始めた頃の忘れられない思い出です。
●噓も方便、噓も「やさしさ」
もうひとつ大事なことは、「噓」も時にはやさしさになるということです。
昔から「嘘も方便」と言われてきたように、嘘も使いよう。噓と言っても、相手をだまして自分が得しようというような嘘のことではありません。相手の気持ちを慮ってのやさしい嘘です。
先日、「これもやさしい嘘かもしれないなあ」と思ったのは、肩こりが辛くてマッサージに行った時のマッサージ師さんの言葉です。必ず毎回このセリフ。
「いやあ、えらい、こってますね」
こう言われると、なんかホッとしますよね。「そうやねん、えらいこってるんや」と大きくうなずいて、自分の辛さを受け止めてもらえたことがとても嬉しくて、それだけでも「来てよかった」となります。
これが、反対に「たいしてこってませんけど」なんて言われたら、と想像してみてください。その差は歴然です。「こってなくてよかった」とはまったく思いませんよね。結局僕は、こってるか、こってないかの正確な情報を知りたいのではなく、「えらい、こってますね」と言ってほしいわけです。
こういうふうに、基本は「相手が何を言ってほしいのか」「それをどう受け止めるか」を考えて、喜ばせるような言葉を選ぶこと。そのほうが相手も自分も嬉しくなるし、その場の空気もよくなります。
そのために、少しばかりの嘘が入るのは僕はOKだと思っています。