シシド・カフカ「運動は苦手。“ほら、言ったじゃないですか”って先生にぶつけていました」と『リボルバー・リリー』での銃撃アクションを語る

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PR更新日:2023/8/17

シシド・カフカさん

 数々の名作を世に送り出してきた行定勲監督が「日本映画の現状に風穴を開ける」つもりで挑んだアクション大作『リボルバー・リリー』が、8月11日に幕を開ける。主人公となる“史上最強のダークヒロイン”百合役を演じるのは綾瀬はるか。その百合を近くで支える元スナイパー“奈加”役を演じるのが、シシド・カフカだ。

 ドラムボーカリストである彼女が、俳優として活躍する作品が増えている。その圧倒的な存在感に惹かれている人は少なくないだろう。意外にも「運動が苦手」と語る彼女が、本作を通じて感じたことをじっくりと話してくれた。

取材・文=吉田あき 撮影=金澤正平

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綾瀬はるかとお互いに讃えあったアクションシーン

——現在放送中の『警部補ダイマジン』『何曜日に生まれたの』など俳優としての活躍が増えていますね。『リボルバー・リリー』はどんなところに惹かれて出演を決めたのでしょうか。

シシド・カフカ(以下、シシド):行定監督とご一緒できるのは光栄でしたし、なにより綾瀬さんにお会いしてみたくて。運動が苦手なのでアクションに不安はあったんです。でも監督とお会いしたときに、綾瀬さんが演じる百合を後ろから包容力とともに援護している奈加という役を、普段はボーカリストを後ろから支えることもあるドラマー、シシド・カフカが演じることで、その気質を作品に吹き込んでほしいという言葉をいただき、それならできそうだなと思えて。そこから役のイメージを固めていきました。

——百合を後ろから援護する立場。そのことについて綾瀬さんとコミュニケーションを取ることはありましたか?

シシド:いえ、今回は、綾瀬さんもそうですし、他の方も、それぞれが持ちあった人物像がすごく自然に交わっていった現場で。そのスタンスを確認しあうことはなかったけど、綾瀬さんとはお互いのアクションをかっこいいねと讃えあっていました(笑)。

——どんなふうに讃えあったんですか?

シシド:百合や奈加が陸軍との銃撃戦に巻き込まれるシーンで、百合が(百合や奈加の居場所である)カフェーランブルの中に駆け込んでくるんですが、急きょ一回転してテーブルの陰に隠れ、そこからまた撃つことになったんです。その場でお手本を見せられて、「わかりました」とすぐにできちゃう綾瀬さんがすごいなと。どれだけ練習を重ねたらあんなふうにできるのか私には想像もできませんけど、すぐに状況を把握して、百合としてそのアクションをこなすのがかっこよくて、練習を見ながらずっと拍手をしてました(笑)。

 綾瀬さんからは、百合が持っているリボルバーより、私が持っているウィンチェスターのほうが大きいので、それを振り回すのがかっこよく見えたみたいで、「かっこいいな、いいな~」と言っていただきました。

鼓舞してもらいながらの銃撃練習

シシド・カフカさん

——本当にかっこいい銃撃戦でした。みっちりとアクションの練習をされたのでしょうか。

シシド:出演が決まってからクランクインまで3ヶ月くらいあったので、ちょくちょく先生についてもらって、動きと銃のさばき方を教わりました。

——アクションに不安があったそうですが…。

シシド:「ほら、言ったじゃないですか。苦手だって」って先生にぶつけてました(笑)。ぶつけながら、鼓舞してもらいながら、ご面倒をかけながら。ちょっとずつできるようにはなりましたね。

——アクションと銃撃の2つが組みあわさると、さらに複雑な動きになりそうです。

シシド:そうですね。ただ走るとか、ただ転げるだけじゃなくて、「走ったときに銃口がこっちを向いていないとダメ」とか、「ちょっとくぐらせてから構えて」とかっていう指示もあるので。それを一度に考えて表現できるまでに時間がかかりました。

 ただ、私が苦手と伝えていたこともあって、奈加の動きには大体当たりをつけて、それだけを重点的にやらせてもらいました。その動きがリアルかどうか、見る人によってわかってしまうと思うので、いかに普通にこなすかっていうのをずっと反復していましたね。

——高身長にウィンチェスター(ライフル)がお似合いで。登場人物はそれぞれ異なる銃を持っていますが、銃の種類は最初から決まっていたのですか?

シシド:思い返せば、ウィンチェスターとモーゼルの他に、あと1つか2つ候補があって、構えてみてかっこいいほうに決めたような気がします。ああ、奈加はやっぱりウィンチェスターだね、散弾銃ではないね、と。

——しかも二丁拳銃ですから。重さもありますよね。

シシド:モーゼルのほうが軽いけど、腕の力だけで支えるので傾きがブレやすいんです。ウィンチェスターは大きいけど体で支えるから安定しやすい。ウィンチェスターのほうが長く一緒にいたっていうこともありますけど、落ち着いてさばけていたような気がします。

シシド・カフカさん

百合の生き方は同じ女性として苦しい

——どんなときも百合を支える奈加ですが、2人はどんな関係だったと思いますか?

シシド:百合に対して「偕老同穴(ともに暮らし、同じ墓穴に入ること)」という言葉を使うくらいだから、奈加は百合と運命をともにする覚悟だったんでしょうね。百合からすれば、「はい、ありがとう」という感じでそばに置いているだけかもしれないけど。百合を死なせるくらいなら自分が死ぬ、くらいの決意で百合にくっついているのかなと思います。

——ランブル前の銃撃戦では、百合にたくさんの銃が向けられたとき、奈加がつい発砲してしまい、百合に「なんで撃ったの?」と驚かれるという、2人の関係が透けて見えるようなシーンもありました。

シシド:奈加は、自分の命に代えても百合を守ると決めていたような人なので、百合にあれだけ多くの銃を向けられたら、条件反射で撃ってしまったのかなと。

——「17…16…15…」と軍人の数を数える百合と奈加の言葉が、いつのまにか日本語ではなく中国語に変わっていた、というシーンも。

シシド:とても好きなシーンです。台湾時代に同じスナイパーとして教育を受けていた頃を、2人が思い出しているような場面で。長くはぐくまれてきた2人の関係が現れた瞬間だったと思います。

シシド・カフカさん
©2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

——「悪」になるしか道がなかった百合の生き方を、シシドさんはどう思いますか?

シシド:奈加が一生ついていこうと思うくらいだから、きっと懐が深くて優しい女性だろうし、あんな事件がなければ素敵なお母さんになっていただろうと思うと…。でも、台湾でスナイパーになった過去があるから、その運命から逃れられなかったんでしょうね。自分の進みたい道を選べなかった百合を見て、同じ女性として苦しいものを感じました。綾瀬さんがその苦しさをセリフのトーンや表情で表現なさっていましたけど、彼女もきっと苦しくてしょうがなかったと思います。

——実際に百合のような女性がいたら、支えてあげたいですか?

シシド:たぶん、お守りすることもできず、即行で死んでしまうと思うので…(笑)。

——百合はめちゃくちゃ強いですよね(笑)。

シシド:そう。私が援助するまでもなく、自分でどんどん戦っていきそう。私自身はどちらかというと、強く誰かを支えるというより、ここまでいろんな方に支えてもらってきたような気がします。

シシド・カフカさん

いちばん好きな衣装は…自分だけの密かな楽しみ

——銃撃戦はストーリーや感情を大切にしながら製作されたそうで、普段はアクション映画を観ることがない女性でも共感できるし、楽しめる映画だと感じました。

シシド:とにかく百合の立ち姿が綺麗ですし、疾走感やアクションの緻密さ、大正時代の洋服や街並み、当時の人たちの活気。いろんな楽しさが詰まった映画で、女性の方にも楽しんでいただけると思います。

——シシドさんも昭和歌謡を歌唱されることがありますね。大正時代のレトロな世界観はいかがでしたか?

シシド:たぶん昭和歌謡よりもっと色の強い時代だったんだろうなと。日本のいい部分と、海外から入ってきた情報や物がいい塩梅で混ざりあって、おもしろい世界観だなと思いました。

——奈加の衣装やメイク、佇まいにも存在感があって、その姿を見ただけで大正時代にタイムスリップしたようでした。

シシド:奈加の衣装は、着物ということは決まっていて、いくつかの着物を合わせながら、帯の色を選ばせていただきました。柄物の着物の上にさらに柄物を重ねる「柄on柄」で、これだけ柄を重ねてよくまとまるなっていうような着物を、存分に楽しみましたね。そうそう、私がいちばん好きだった着物のシーンはカットされてしまったので、自分だけの密かな楽しみにしようかなと(笑)。

リズム感を鍛えることは何においても役に立つ

——行定監督が日本映画シーンに風穴を開けるつもりで挑んだ作品だとか。シシドさんも、リズム・イベント「el tempo」を主宰されたり、ドラムスティックなどをリサイクルしたアクセサリーブランド「LAZZUL」を立ち上げたりと新しいことに挑戦されていますが、行定監督の挑戦をどんなふうに受け止めていますか?

シシド:新しいことに挑戦するのって、やっぱりものすごく勇気がいると思うんです。誰と、どのような形で世に打ち出していくのか、すごく頭を悩ませたでしょうし、もしかしたら、作ったものを見て「あそこはもっとこうしたほうが良かったな」と思うことがあるかもしれない。でも、その経験を重ねることで次の作品がさらに素晴らしいものになると思うので、そういった挑戦的な作品に呼んでいただけたのは光栄なことだし、とても嬉しく思います。

——この映画に携わって得たものとは?

シシド:すごく個人的な話になりますけど、何事でもリズム感は大切なんだなと思いました。銃の撃ち方も、撃った後にどのくらいの間で一回転して、隠れて、また脱するか…っていうのも全部テンポ感。会話にしても、言葉を発するときのテンポや間の開け方で、伝わり方は違う。リズム感を鍛えることは何においても役に立つんだろうなと、あらためて思いました。

——ドラムで刻むリズムとも通じるものが?

シシド:私は運動が苦手なうえにリズム感もないので、根詰めてリズムを体に入れようとしたこともありますけど、結局はリズムが根底にあって、そこにメロディとしての歌をどう乗せるかが大切だと思っているので。無意識のうちにどれだけ体でリズムを感じられるのか、それが大切なのだと思います。

——本作はまさに映画自体のテンポも良く、約2時間半があっという間でした。

シシド:体で振動を感じられるくらい銃撃音のボリュームが大きいし、疾走感もすごくあるので、これはもう劇場で観るのがベストじゃないかと思っています。とにかく綾瀬さんがキレキレです! その綺麗な姿、ダークヒロインぶりを、ぜひ観ていただきたいですね。

シシド・カフカさん

▼映画『リボルバー・リリー』作品概要
【タイトル】 『リボルバー・リリー』
【公開情報】 2023年8月11日(金)全国公開
【出演】 綾瀬はるか 長谷川博己
羽村仁成(Go!Go!kids/ジャニーズJr.)/シシド・カフカ 古川琴音 清水尋也/ジェシー(SixTONES)
佐藤二朗 吹越 満 内田朝陽 板尾創路
橋爪 功/石橋蓮司/阿部サダヲ
野村萬斎 豊川悦司
【スタッフ】 監督:行定 勲 原作:長浦 京『リボルバー・リリー』(講談社文庫)
【配給】東映
【公式HP】 https://revolver-lily.com/

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