コンプレックス・不安を抱えた30代女性がランジェリーと出合って人生が変わる。『ランジェリー・ブルース』作者が考える”抑圧”に打ち勝つ方法【漫画家インタビュー】

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更新日:2024/2/29

ランジェリーは「自分の体に対するどんな気持ちにも、いつでも寄り添ってくれるもの」

 物語の中には、さまざまな年齢、属性を持つ女性たちが登場する。例えば、夫に先立たれた老年の女性、産後育児に追われて体形が変わった女性、自分の体は恥ずかしくて隠さなきゃいけないものだと思っている女性、胸の小さいことをコンプレックスに悩む女性…。気持ちに寄り添ったランジェリーが、彼女たちをより前に向くためのパワーを与えている。ツルリンゴスターさんは、ランジェリーにどういったメッセージを込めているのだろうか?

ランジェリー・ブルース

「自分の体を肯定する、までいければいいんですけど、肯定したり、やっぱり嫌いだったり、自分の体に対するどんな気持ちにも、いつでも寄り添ってくれるものなんじゃないかと感じています。自分の体が好きな人って本当に少数で、私含め多くの人が見て見ぬふりをしたい、無視できるなら無視したいものなのではないでしょうか。別に好きにならなくてもいいし、嫌いでもいいけど、余裕があったら向き合ってみる。そのときに少しラインを整えつつ、着けてみて気持ちいい下着を選べたら、自分にちょっと優しくなれる気がします」

ランジェリー・ブルース

 自分の体へのコンプレックス以外にも、本来の自分を押し込めるさまざまな“抑圧”が本作では描かれる。ケイも自分の仕事を軽んじられたり、自分のために選んだものを“らしくない”と断じられたりする。「君の心に火がついて」や「彼女はNOの翼を持っている」(「子育て情報メディアKIDSNA STYLE」で連載中)でも、抑圧とそこからの解放をテーマにしたエピソードが印象的なツルリンゴスターさんの作品。自身は人生における抑圧をどのように感じているのだろうか?

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「”抑圧”は今も感じます。女性であったり母であったり、外から受ける抑圧は日々いろんな形で降りかかってきます。同時に自分が抑圧する側にいたり、誰かを傷つける発言をしてしまった過去も消えません。前作の『君の心に火がついて』の中で、過去に無知から友人を傷つけてしまったキャラクターが『ごめんって言葉にしても全然許されねえから言えないけど ごめん』と、過去の行動を後悔して自分に向き合う様子を描いた場面があります。解消はこれからずっとされないんだと思います。されたこともしたことも消えず、ただ自分は昨日よりマシな人間になるように努力する。努力をやめないことが”抑圧”に打ち勝つ方法なんだと思います」

 人生に悩みや不安はつきものだ。ケイも仕事、恋愛とさまざまな面で不安やコンプレックスを抱えている。物語の中でケイは、その不安に向き合うことで人生を開いていく。ツルリンゴスターさんから、ケイと同じように不安を抱える人へのメッセージをもらった。

「もし『ランジェリー・ブルース』を読んでケイの中に少しでも自分を見つけてもらえたなら、とてもうれしいです。あなたの不安はあなただけのもので、私はそれを聞くことしかできないけれど、その不安を見つめることは、今すでにあなたの中にある培ってきたものを見返すことにつながると思います。そこに今あなたがいること、それが素晴らしく最高で、それが私がここにいられる理由にもつながります。一歩踏み出さなきゃいけないなんてこともないです。ずっとそこでコーヒーを飲んだり本を読んだりしていてもいい。気が向いたら、緩めのパッドもワイヤーも入ってない、地中海で着る水着みたいな下着をポチってみるのもいいかもしれません。もちろん下着じゃなくても大丈夫、そのとき自分に少しだけ優しくなれそうなアイテムや方法を増やしていくことを応援します」

取材・文=西連寺くらら

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