阿部サダヲ「十三郎の家族の物語が好きでした」

あの人と本の話 and more

2016/5/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、5月14日公開の映画『殿、利息でござる!』で主演した阿部サダヲさん。フィギュアスケートの羽生結弦選手も仙台藩のお殿様役で出演した痛快時代劇の見どころを訊いた。

「羽生くん、凄かったですよ。堂々として、あんなにすらすらせりふ言えるんだって、びっくりしました」

 ビンボー庶民が小銭をかきあつめ、大名に金を貸し、その利息で一発逆転を狙うこの映画で、羽生くん演じる殿様との対面は、クライマックスの重要な場面でもある。
「フィギュアでも、とめないといくらでも練習しちゃって、練習しすぎちゃうらしいんです。撮影現場でも“もう1回やらせてください”って自分から言ってて、そういうのもカッコよかった。挨拶がまたうまいんですよ。撮影は一日で終わっちゃったけど、何カ月か一緒に過ごしてたくらいの内容で、おかげで僕、きたろうさんに“お前もああいうこと言えよ、ちゃんと”って言われました(笑)」

 ベストセラー『武士の家計簿』で知られる磯田道史の原作『無私の日本人』の一編「穀田屋十三郎」を『フィッシュストーリー』『奇跡のリンゴ』の中村義洋監督が映画化。

「シリアスな原作を喜劇に変えたところも凄いなと思ったけど、監督がふくらませた十三郎の家族の物語が好きでしたね。なぜ自分が養子に出されたのか。十三郎は父親(山﨑努)の本意を知らないから、壮大な勘違いをしてる。弟の妻夫木くんの芝居がまたよくて、自然と泣いてました。うちは特に父の教えみたいなのってなかったんですけど、うちのお父さん、人前に出るのが好きで、あ、自分にもそういう血が流れてるんだなって今になって思います。親戚が集まったりすると、知らない人に対する声のかけ方とか、うわー似てる、同じとこあるわってドキッとする。昔は“お父さんは間違ってる”って思ってたのにな(笑)」

 十三郎じゃないが、図らずも似てしまうのが親子なのだろう。そういえば前回登場していただいた時、息子さんと車中泊をしたいと言っていたあの話は、実現したのだろうか。
「僕、今年寝袋買いまして、寝ました、車中で。みんなはやってくれないけど」

 父の心、子知らず。これまた十三郎と同じ。いや、きっと親と子はそういうものなのか。

「ファンの方からは“自分も車中泊しました”って、いっぱい言われたんですけどね。うちがまだしてない!(苦笑)」

(取材・文=瀧 晴己 写真=干川 修)

阿部サダヲ

あべ・さだを●1970年千葉県生まれ。92年より「大人計画」に参加。舞台、ドラマ、映画と活躍。95年、宮藤官九郎らと「グループ魂」を結成。出演作に、映画『なくもんか』『寄生獣』『奇跡のリンゴ』『謝罪の王様』『ジヌよさらば~かむろば村へ〜』など。7月7日より主演舞台『ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン』(シアターコクーン)が控える。
ヘアメイク=荒川英亮 スタイリング=チヨ(コラソン) 衣装協力=TONO RISOOK

 

『甘いお酒でうがい』書影

紙『甘いお酒でうがい』

川嶋佳子(シソンヌじろう) KADOKAWA 1200円(税別)

この日記の書き手「川嶋佳子」とはお笑い芸人シソンヌのじろうがコントで長年演じている40代独身女性。誰にでも身に覚えがある日常の悲哀を淡々と綴っていく。哀しみをいかに笑いに変えるか。物悲しいのにどこか明るい諦念のようなものがある。517日分の日記から、ひとりの女性の人生が浮かび上がる。

※阿部サダヲさんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ6月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

映画『殿、利息でござる!』

原作/磯田道史「穀田屋十三郎」(『無私の日本人』所収 文春文庫) 監督/中村義洋 出演/阿部サダヲ 瑛太 妻夫木 聡 竹内結子 配給/松竹 5月14日(土)より全国ロードショー 
●重い年貢に夜逃げが相次ぐ宿場町・吉岡宿に住む十三郎(阿部サダヲ)は、知恵者の篤平治(瑛太)から町を救う計画を聞く。藩に大金を貸し付け、利息を巻き上げる。必要な資金は千両。ビンボー庶民が一世一代の大勝負に挑む。
(c) 2016「殿、利息でござる!」製作委員会