柄本時生「俳優は声を出す職業。まず、その役の声を探します」

あの人と本の話 and more

2017/8/5

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、ひょうひょうとした佇まいと独特の存在感で活躍の幅を広げている柄本時生さん。舞台『チック』でロシア移民の風変わりな少年チックを演じる。原作は世界中で愛されているドイツの児童文学。14歳といえば、柄本さんが俳優デビューした歳でもある。27歳の今、振り返って何を思うのか。

「14歳っていったら、なんだろう、いじめられてた時期ですね。僕、いじめられっ子だったんです」

 14歳の思い出は、ちょっと意外な告白から始まった。

「学校で無視されてたのに、地元の下北沢に帰れば、友達がいたんで、まったく気がついていなかったんです。ある日、机にチョークがバラまかれていて。それで、あ、俺、いじめられてたんだって。そのあと、すぐ夏休みに入ったんですが、その頃、地元の幼馴染がもれなく3人とも不良になっちゃって、いつも4人でつるんでいたから、これはついていくしかないなって、僕も金髪にしたんですよ。自分を変えたいっていうのはなかったんですが、当時はまあ、やっぱり無理してましたね。幼馴染たちは、国士館で柔道をやりながら不良やってたんで、めちゃくちゃ強かったんです。僕が何もしなくてもケンカに勝ってくれたから、見事にスネオをやってましたね。金髪にして、眉毛もなくなって、夏休み明け、学校に行ったら、あいつ、ヤバくなったぜ、逆にこっちがやられるんじゃねえかって、みんなから急に話しかけられるようになって。僕としては地元の友達についていかなきゃってやったことが、なんか功を奏しちゃったみたいで」

 マンガ誌にハマっていたのも、そのくらいの時期だったとか。

「ちょうど『銀魂』が始まったのがその頃だったんです。映画になったじゃないですか。出たかったなあ。福田(雄一)監督に写真、送ったんです、なんの役でもいいからって。当時は、月曜は『ジャンプ』でしょ、水曜は『サンデー』と『マガジン』、木曜に『チャンピオン』、毎週全部買ってましたから、下北のキオスクのオバちゃん、めちゃめちゃ仲良かったんです(笑)。だけど、小説は一冊も読んだことがない。学校で読書感想文書かされた時も、はじめの7ページを読んで、真ん中の7ページを読んで、ラストの7ページを読んで、書くんです。だいたいそれでわかるんじゃないかって。戯曲は読むんですけどね、いまだに小説は読まない。読みたくなったら、いつか読むだろう、みたいな」

 映画のオーディションに受かって、俳優デビューしたのも、14歳の時。父は柄本明、母は角替和枝、兄は柄本佑という俳優一家に育ったが、「これ以外にも道はあるっていうのは、今でも思うことがある」と言う。

「今から料理の学校に行って、そっちの道に行ったって、別にいいよなって。スクープ記者とか、カッコいいじゃないですか。そういう役を演じることはあっても、本物にはかなわないですから。14歳でデビューしたとき、ずっと続けていくっていう勇気はなかったですね。学生っていう逃げ道が欲しくって、大学を受験したけど、落ちて、そこからです。18歳の時ですね、もう覚悟決めなきゃなって意識しはじめたのは。反抗期とかもなかったんですよ。反抗したこと、1回もなかった。兄ちゃんは、ちょっと反抗期っぽい時期があったんですが、映画の仕事が始まって、帰ってきたら、いきなり敬語になってたんです。映画の現場って、当時まだ完全な縦社会で、グーでパチコーンいかれるくらい当たり前の世界でしたから。文句があるけど、黙って仕事してる男の姿っていうのはカッコいいですよね。そういうのを見られたのは、やっぱり良かったなって思っています」

 舞台は「他人様に見られることを再確認する場所」だという。

「映画やテレビの撮影現場っていうのは、どう転んでも周りにいるのは身内の人たちじゃないですか。舞台は、どうしたって他人様に見られる。それが怖いんだって再確認できる場所だと思っています。慣れたらおしまいだなっていうのは、いつも念頭にありますね」

 役づくりをする時には、まずはその役の声を探す。

「俳優って声を出す職業ですから、その役の声を探さないとダメだって思ってます。このあいだ、稽古が始まったところなんですが、いかんせん、まだその声がつくれてないっていうか、もっと考えないといけないなって。僕は、こう観てほしいとか、あんまりだいそれたことは思わないんです。観た方が、14歳の頃、こんなことがあったなって思い出して、楽しんでいただければと思っています」

(取材・文=瀧 晴巳 写真=冨永智子)

柄本時生

えもと・ときお●1989年、東京都生まれ。2003年、映画『Jam Films Sすべり台』で俳優デビュー。ドラマ『初恋芸人』『増山超能力師事務所』、映画『超高速!参勤交代』『聖の青春』『彼女の人生は間違いじゃない』などで独特の存在感を発揮している。舞台『関数ドミノ』『流山ブルーバード』の公演が待機。ドラマ『愛してたって、秘密はある。』に出演中。
スタイリング=矢野恵美子 衣裳協力=CLOUDY HS TEE (リネンTシャツ) 9504円、FOLKSY SHIRTS COAT (シャツコート)1万9980円(CURLY/TheWeft TEL03-6450-5905)どちらも税別価格 
パンツはスタイリスト私物

 

『SKET DANCE』書影

紙『SKET DANCE』(全32巻)

集英社ジャンプC 390〜400円(税別)

開盟学園高等学校・学園生活支援部、通称「スケット団」の活躍を描いた学園コメディ。リーダーのボッスン、元不良の武闘派ヤンキー娘・ヒメコ、クールな情報屋・スイッチの3人が、学校内のヘンテコな依頼を解決するべく、奔走する。2010年、小学館漫画賞少年向け部門受賞。アニメ化もされた人気作。

※柄本時生さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ9月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

舞台『チック』

原作/ヴォルフガング・ヘルンドルフ 上演台本/ロベルト・コアル 翻訳・演出/小山ゆうな 出演/柄本時生、篠山輝信、土井ケイト、あめくみちこ、大鷹明良 8月13日(日)~27日(日) シアタートラム ほか兵庫公演あり 
●14歳の冴えない少年マイクは、ケンカばかりの両親と退屈な学校生活にうんざりしていた。転校生のチックは、ロシアからの移民で風変わりな問題児。二人は、チックが盗み出したオンボロ車に乗り込み、ひと夏の旅に出る。世界中で愛されている児童文学を舞台化。本国ドイツでは今も上演を重ねる話題作。
※『チック』の映画版『50年後のボクたちは』は、9月16日(土)より全国順次公開。