AKB48横山由依「いつか山田悠介さん原作の映画に女優として出演するのが、私の夢」 長編小説『僕はロボットごしの君に恋をする』刊行対談

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更新日:2017/11/7

『リアル鬼ごっこ』で二十歳の時に作家デビューし、次々とベストセラーを世に送り出してきた山田悠介が、書き下ろし長編小説『僕はロボットごしの君に恋をする』を刊行した。
山田作品のファンを公言しているAKB48の横山由依が、感想をナマで伝えた。


山田悠介(右)やまだ・ゆうすけ●1981年生まれ、東京都出身。2001年、『リアル鬼ごっこ』を自費出版しデビュー、ベストセラーに。『@ベイビーメール』『親指さがし』『パズル』『スイッチを押すとき』『その時までサヨナラ』など映像化作品多数。『僕はロボットごしの君に恋をする』は、13年11月刊『貴族と奴隷』以来の長編。
横山由依(左)よこやま・ゆい●1992年生まれ、京都府出身。2009年9月、女性アイドルグループAKB48の「第六回研究生(9期生)オーディション」に合格。現在、チームAのメンバーで同チームのキャプテン。15年12月より、AKB48グループ総監督(二代目)も務める。女優としても活躍中で、ドラマ『豆腐プロレス』では女子プロレスラー役に挑戦。
衣装協力:ブラウス¥36,000、スカート¥44,000(以上ともにDISAYA/H3Oファッションビュロー)、パンプス¥27,000(FABIO RUSCONI/バーニッシュ)、イヤリング¥28,000(KAORU/バーニッシュ)問い合わせ先:H3Oファッションビュロー/03-6712-6180 バーニッシュ/03-3468-0152 *価格は税別

 

山田 おひさしぶりです。『種のキモチ』の時に雑誌で対談させていただいて以来だから、5年ぶりくらい? その間に、横山さんはAKB48グループの総監督になりましたよね。

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横山 はい。たかみな(高橋みなみ)さんの後を継がせていただきました。

山田 僕はこの5年の間に、子どもが2人生まれました。子どもと遊ぶのは楽しいですね。気がつけば今回の『僕はロボットごしの君に恋をする』が、4年ぶりの長編なんです。

横山 待ちに待った、という感じでした。読み始めたら止まらなくなって、あっという間のラストで……。最初のほうで、「もうすぐ東京に三度目のオリンピックがやってくる」って書いてあるじゃないですか。2060年の東京が舞台なんだって知った時は、いきなり衝撃を受けました。「2020年の東京オリンピックまであと何年だ」みたいに、なんとなく自分もここ数年過ごしてきていたのに、さすが山田さんだなあ、と。

山田 2回目の東京オリンピック、すっ飛ばしちゃいました(笑)。

横山 一番驚いたのは、今回は愛のお話じゃないですか。私は10代の頃から山田さんの作品を読ませていただいているんですが、『リアル鬼ごっこ』や『スイッチを押すとき』、『@ベイビーメール』といったホラー作品を書かれている方だなっていうイメージがやっぱり強くて。

山田 確かに最近、あんまりホラー的なものをやらないんですよ。子どもが生まれたことで、人間性がちょっと変わったのかな。温かい話のほうが好きになってきたというか、あんまり残酷なものはちょっとなあっていうふうになってきたんですよ。若い頃は結構、すさんでたのかもしれない(苦笑)。小説ってたぶん、その時の〝自分〟が出てしまうんですよね。

──主人公の青年・大沢健は、20代男性の見かけをした人間そっくりのAIロボット(通称「三号」)を操る、「操作官」です。仕事では、極秘任務の「AIロボット警備プロジェクト」の一員として、街をパトロールして凶悪化する犯罪を防ぐ。プライベートでは、天才科学者であり同僚の陽一郎と友情を育み、彼の妹・咲にずっと片想いをしています。未来のロボットが出てくる話を書こうとしたきっかけとは?

山田 テレビとかで「AIの進歩」を知ったのがきっかけです。じゃあ、小説でもAIを題材で扱ったらいいんじゃないかなって発想ですね。今年、グーグルが開発したAIが囲碁の世界チャンピオンを完膚なきまでに叩きのめしたんですよね。囲碁でAIが人間に勝つまではあと10年とか15年かかるって言われていたのに、あっという間に進歩してしまった。社会はこの先どうなるのかな、ってところにも興味がありました。

横山 いろんなところに作品のヒントってあるんですね。

山田 ただ、AIが出てくるお話って世の中にいっぱいあるんですよ。その中でも「これは面白そうだ」と思ってもらえるものがいいなって時に……僕が一番大事だと思ってるのは、題名なんです。手に取ってもらわないとしょうがないわけだから、題名でまず目を引いて、ツカミの設定で引っ掛かってもらうようにする。

横山 私、まんまと引っ掛かりましたね(笑)。

少し大人になったから 愛のテーマと向き合えた

横山 ロボットが途中から、咲ちゃんのボディーガードのようになる。咲ちゃんの前でいいところを見せようと思って奮闘するところ、笑っちゃいました。

山田 シュールですよね。

横山 お笑い、お好きですか?

山田 僕、お笑い芸人になりたかったんですよ。

横山 そうなんですね!

山田 小さい頃、劇団にもいたんですよ。でも、表に出るタイプじゃないなって自分で分かったので、裏の仕事がしたいなって。放送作家とか脚本家になりたいと思っていて、結局今は小説を書いているんです。

横山 今回のような近未来のお話って、難しくなかったですか?

山田 いろいろ苦労しましたね(ネタバレになるので編集部略)。

横山 ぜんぜん気付きませんでした。でも、そのご苦労は見事に成功してますよね。また読み返したくなりました。

──さきほど横山さんは、本作が「愛の話」だったことに驚かれた、とおっしゃっていました。そのテーマについて、どんな感想を抱かれましたか?

横山 愛する人の秘密を知ってしまった時に、自分だったら愛し続けることができるんだろうか、と考えたりしました。あと、思いを伝えるチャンスがあるうちに、伝えたほうがいいんだなって感じましたね。明日、何が起こるか分からないじゃないですか。だったら大切な人に「大切です」って思いは今日、伝えておいたほうがいいのかなって。

山田 いいこと言うなぁ。乙女ですよね。たぶん男性の読者は、未来でロボットでAIで……「ワクワクするよね!」ってところが一番なんですが(笑)。

横山 もっと若い頃に読んでいたら、受け取り方が違ったのかもしれません。愛というテーマについてこういうふうに考えられるようになったのは、自分も少し大人になったからかもしれない。大人になれているのかな、と感じられたこともこの本を読んで嬉しかったところでした。

山田 僕が書いているものはあくまでエンターテインメントなので、楽しんでもらえたらそれでいいんですよ。僕から伝えたいメッセージのようなものはない。でも、楽しんでもらったうえで、今の横山さんみたいにいろいろなことを感じていただけたなら、書いて良かったなと思いますね。4年ぶりに頑張って良かった(笑)。

横山 実は……いつか山田悠介さん原作の映画に女優として出演するのが、私の夢なんです。

山田 じゃあ僕も、『僕はロボットごしの君に恋をする』が映画化されるのを目標にします! その時は是非お願いします。あっ、ロボット役じゃないですよ!(笑)

取材・文:吉田大助 写真:山口宏之 スタイリング(横山):岡本さなみ