ホールツアーのあたたかさに見る、「LiSAのライブが最強な理由」――LiSAインタビュー(後編)

エンタメ

2017/12/3

 最新アルバム『LiTTLE DEViL PARADE』を引っ提げ、9月から行われてきたLiSAのホールツアーには、ふたつの驚きがあった。まず、「力強く熱く激しい」と形容されるLiSAのライブが、今回のツアーではとてもあたたかくて、アットホームな雰囲気かあったこと。演出も含めたスケール感で会場全体を巻き込むアリーナ。ぎっしり詰まったオーディエンスがもみくちゃになるライブハウス。どちらもLiSAのライブの魅力を体現しているけど、ホールツアーで提示したライブのあり方は、今後LiSAの新たな武器になっていきそうだ。ふたつ目は、楽曲が浸透する早さ。アルバムのリードトラック“LiTTlE DEViL PARADE”が、シングルやアニメのタイアップ曲ではないにもかかわらず、観客の歌声で会場を最も揺さぶる鉄板のアンセムになっていたり、“Catch the Moment”が大合唱を巻き起こす曲になっていたり。LiSAはあらゆる楽曲をライブの中でオーディエンスとともに育ててきたが、その成長スピードは今、すごいことになっている。これらふたつのポイントには、LiSA自身がツアー中に自らの音楽を見つめ直すことができた、という背景がある。インタビュー後編のテーマは、「LiSAのライブが最強な理由」。“Catch the Moment”の大ヒットで幕を開け、年齢的にも節目を迎えた2017年を振り返ることで見えたLiSAの現在、そして未来像とは。

インタビュー前編はこちら

「わたし、やっぱり自分の音楽がすごく好きだな」って思った

――9月からのホールツアー、ものすごくいいライブができてるんじゃないかなって思って――。

LiSA:そう! そうなんです。

――もう、「なんだ? この楽しさは」みたいな。ちょっと新しい感覚があったんですよね。

LiSA:そう、わたし自身も楽しいんです。ツアー中に不本意なお休みがあったんですけど――お休みしてる期間に、自分の音楽とちゃんと向き合う期間があって。ここまでずーっと駆け抜けてきて、自分の中にも楽しもうっていうテーマを作っていろんなことを積み重ねてきたんですけど、強制的に音楽から離れたときに、わたしはどうしても不安症だから、自分の楽曲を歌ったり思い出したりするんですよね。で、今までの楽曲を全部聴いたんです。ガルデモも合わせると8時間半くらいあるんですけど、聴いてると「あ~っ、ここのレコーディングやり直したい!」「ここの歌い方イヤだなあ」とか、曲を作ったときの背景を思い出しながら、「自分の心情に当てはまる楽曲がすごくたくさんあるなあ」って、そのときに改めて思って、それを噛みしめて。今までも、もちろんライブが楽しいとか、みんなと一緒に過ごす時間だったり、楽曲を紹介するのが楽しいっていう気持ちがあったけど、自分自身が歌うことの楽しさもありつつ、それ以上にプレッシャーのほうが大きかったなって思ったんです。ちゃんとやらなきゃ、みんなにガッカリされないように頑張らなきゃっていうプレッシャーがすごく大きかったんだなって。でも、全部聴いたときに、「わたし、やっぱり自分の音楽がすごく好きだな」って思いました。ツアーに戻ってからは、1曲1曲を歌うのが超楽しくて。1曲1曲のフレーズとか、音を感じて動くことがわたしはすごく好きなんだなって。そう思ったら、もっと楽しくなっていったんです。

――まさに、今回のホールツアーから受け取るものって、そういう感じなんですよね。気負いがなくて、すごく自由な感じがする。佇まいが今まで以上に自然だし、お客さんを信頼して委ねてる感じも伝わってくる。どうしても、たくさんの人を「楽しませなくちゃいけない」感じになるアリーナでのライブを経験したことで、完全に一回り大きくなったんだなって思いました。

LiSA:うん、うん。それも確実にありますね。

――「このアットホームな感じ、すごく居心地いいな」っていう。LiSAのライブを表現するときに使われる言葉って、「熱くて、激しくて、力強くて楽しい」が多いと思うんだけど、今回のホールツアーで「あったかいなあ、ここ」という感じもプラスされたというか。

LiSA:アリーナからホールに行ったことによる自然体な感じ、わたしもすごくあると思います。アリーナって、1個間違えると、わたしひとりじゃ取り返せないんですよね(笑)。演出にしても、たくさんの人が一緒に動いてできあがってるところがあるので、きちんと決めなきゃいけないところ、失敗しちゃいけないところもいっぱいあって。そうすることで素晴らしいショウが作れるんだとしたら、ホールはもうちょっと人力な感じが必要な気がするというか。だからこそ、近い空間でパワーが通じ合えるし、あったかい感じでやろうっていう気持ちでツアーを始めたところもあります。アリーナで大きなライブをやった後に、なんでホールツアーをやるのかなって、自分の中で考えたんです。アリーナに来てくれた人たちが遊びに来るとして、その人たちが楽しんでもらえるライブ、「ホールツアーに来てよかったな」って思ってもらえることってなんだろうなあって、すごく考えました。

――ホールでやる必然性がちゃんと感じられるライブになってるんですよね。デッカいアリーナでスケール感のあるライブを観るのも楽しい、ライブハウスでもみくちゃになるのも同じくらい楽しい。で、ホールツアーはすごくあったかくて、穏やかな気持ちで楽しめて、やっぱり同じくらい楽しい。こういう一面も知ってもらえたら、好きになってくれる人もさらに増えるんだろうなあって思って。

LiSA:そこはすごく、積み重ねな気がします。そういう意味では、古坂(大魔王)さんと番組をやらせてもらったのもすごく大きかった気がしますね。古坂さんが、「LiSAっちのダメなところが見たい」って言うんですよ(笑)。アリーナとかでライブを観ると完璧なジャンヌ・ダルクみたいな感じだから、そうじゃなくて、漢字を読めないところとか(笑)、ちょっととぼけたところが見たい、それが君の魅力だからそこを出したいって言って、MCに誘ってくれたんです。迷惑をかけちゃいけないと思って、始まる前に台本に一生懸命全部フリガナを振ってから挑むんですけど、一生懸命完璧にやろうとしてるのに、「今日も赤いペンいっぱい引いてるね」って古坂さんがバラすの(笑)。そういう出会いも、すごく大きい気がします。

――なるほど。その部分もホールでのライブの空気にすごく活きてますよね。あとライブを観ていて思ったのが、「楽器何個弾くの?」っていう(笑)。

LiSA:増えちゃった(笑)。ピアニカ、ハーモニカ、カズー、電子ドラム――あとなんだっけ?

スタッフ:ギターだよ(笑)。一番出てこないといけないやつね。

LiSA:ははは。どうですか? ギター、サマになってきました?(笑)。

――単純に実力上がっていってる感じが(笑)。普通にカッコいいと思うし。

LiSA:(笑)やった~。

――ハーモニカとかピアニカにしても、ライブの中でちゃんと効果的に機能してるし、「やってみました感」が全然ないんですよね。電子ドラムの力で、“Peach Beat Beast”は最強の曲になったし。

LiSA:楽しいですよね。しかも“Peach Beat Beast”は、このホールツアーから、みんなが曲にあわせてモンキーダンスをするようになったんですよ。たぶん、最初はわたしが自分で楽しむやり方としてノリでやってたんですけど、みんなも同じことをするようになって。すごく揃ってましたよね。でも始めは全然そんなことなくて、徐々にみんなが作っていってくれたんです。

人は愛されると成長していけるんだなあって思う

――ホールツアーで印象的だったのは自然体な部分というか、力まずに楽しいライブができてるっていうことでした。で、それは休んでいる期間に「自分の曲がすごく好きなんだ」って改めて発見したのも大きいと思うけど、それこそこの6年間でロックフェスに出て、アニソンフェスにも出て、全国放送のテレビ番組に出たりとか、いろんな場を経験してきたじゃないですか。そのとき、その場所で目の前にいる人たちを楽しませるにはどうしたらいいか、一生懸命考えてきた結果が今のライブなんだなって思うんです。

LiSA:たぶん無意識にやってることではあるんですけど、一番大事なことはずーっとブレてないから。「今日もいい日だっ」とか、「みんなに楽しんでほしい」とか、ライブはデートだから楽しんでもらうためにねりねりするとか、根本の部分は何も変わっていなくて。それがみんなと作ってきた信頼関係になって、積み重なってきたんだと思います。

――実際、「こんなにアウェイに飛び込んできた人もなかなかいないんじゃないか」って思うんですよね。しかもアウェイだからビビるんじゃなくて、「この人たちはどうやったら喜んでくれるかな」っていうことを、無意識だけどコアの部分は変わらないまま探し続けてきて。しかも、それで跳ね返されたことが一回もないのもすごいことなんですよ。その場所その場所で、ちゃんと愛されてきたわけで。

LiSA:ロックフェスに出られるようになったときに、すごく悩んだことがあって。「この人たちにはどうやったら楽しんでもらえるか」っていう。歌う楽曲にしてもそうだし、自分が思っていることをMCで話すのか話さないのかも含めて、自分が持っている楽曲の中でどうやっていくかを考えたりして。バンドをやってる人たちって、わりとずーっとそのままだったりするじゃないですか。

――「俺らの音楽はこれなんで」みたいな?

LiSA:そう。そういう場所に行ったときに、「わたしらしくいつものようにやったほうがいいのかなあ?」とか「どこに行っても統一されてたほうがいいのかなあ?」とか、いろんなことをすごく考えて、セトリも含めて一回めっちゃ悩んだんです(笑)。でも、たとえばロックフェスに来ている人たちはそういう音楽が好きで来てるわけだから、自分のエゴで楽曲をやってもダメで。そういうことをすごく考えてきて、結果的には何も間違ってなかったと今は思ってるんですけど。

――それが一番正しいと思いますよ。ステージに立つ以上、そこにいる人たちが最大限楽しんでくれることを考えるのはある意味当たり前というか、そうしてほしいと観る側は思うわけで。それをいろんな場所で毎回考えてやってくれる人のライブって、その時点でもう最強だと思う。

LiSA:それを学んだのは、アニメのイベントですね。だって、アニサマ(Animelo Summer Live)でノンタイアップの曲はやらないじゃないですか。みんな、アニソンを聴きたくて来てるんですよね。そういう場所でたくさん学んだし、自分のエゴで音楽をやっちゃいけない場はいっぱいあって。で、それをすごく学んでからのロックイベントだったから、そこにいる人たちが何を求めているのか、自分が持っているものの中で考えられるようになったのかもしれないです。

――2017年は、年始からけっこう大きなことがあったじゃないですか。ずっと共に歩んできた『ソードアート・オンライン』の劇場版の主題歌があり、その曲が大ヒットして。さいたまスーパーアリーナのワンマンライブ2daysもあって、その当日には年齢的にも節目を迎えました、と。今年は特に充実してたんじゃないかな、と思うんですけど、振り返ってみてどんな1年だったと感じてますか。

LiSA:自分の中で、再認識することができた1年でした。自分のやりたいことや、「LiSAがどうあるべきか」っていうところも、いろんなものを見て、いろんなフェスに行っていろんな人に出会って、いろんな経験を積みながら、とにかくめちゃくちゃいっぱい考えましたね。将来のことも、今までの自分のこともたくさん考えて、LiSAという存在を再認識しました。「間違ってなかったな」って思うし、これからどうやって生きていきたいかもすごく見えたので、「あと10年できるな」って思ったし、10年といわずその先も、ちゃんとこの場所で生きていける方法を探していけるなって思いました。

――今回のホールツアーを観ていると、これから10年、10年以上先もやっていくにあたって、とてもいい雰囲気だなあ、と思いますね。いろんな人たちと音楽を共有していけるんだろうなあっていう感じがするし、ほんとに居心地がいいから「また来たい」って絶対思ってもらえるだろうし。そこにいるだけですごく幸せを感じられるライブってなかなかないと思うけど、実際にそれはもう作れている。ついてきてくれる人たちといつもどおり楽しんでいったら、とてもいい音楽ととてもいいライブが生まれていくだろうし、それは自然に広がっていく。今は、そういう感触があるんじゃないですか。

LiSA:そうですね、それはすごくあります。その人たちと行きたい未来がいっぱいあるし、行ってみたい場所も、やってみたいこともいっぱいあるし。一緒に楽しむために次はどんな音楽を作ろうかなあって考える楽しさも、すごくあります。ほんとにいろんな人が見てくれるようになったし、恥ずかしさを感じることなく「好きだ」って言ってくれる人がいっぱいいてくれてるのかなって思います。それって、育てられてる環境がすごくいいからなのかなって思っていて。自分の大事なところを活かしてもらいつつ、それを見守ってくれるファンの人がいて、一緒に楽しんでくれる人がいて。やっぱり、人は愛されると成長していけるんだなあって思います。

取材・文=清水大輔 撮影=中野敬久
スタイリング=久芳俊夫 ヘアメイク=田端千夏