人生100年時代の「金持ち老後」と「ビンボー老後」の分かれ目とは? 『PRESIDENT』編集長に訊いてみた!【前編】

ライフスタイル

2017/12/12

鈴木勝彦編集長

 人生100年時代といわれる昨今、定年後の暮らしに不安を感じている人も多いだろう。40、50代になると、自分だけでなく子どもや親の問題も抱えるようになり、生き方、働き方、暮らし方を見つめ直す機会が増えてくる。いざというとき後悔しないために、今から準備できることはあるのだろうか? 人気ビジネス雑誌『PRESIDENT』の鈴木勝彦編集長に話を伺った。

――出版不況のなか、『PRESIDENT』はビジネス誌のトップ3に入る人気雑誌として、長年、多くのビジネスマンから支持を得ています。まずは雑誌の特性と編集方針をお聞かせください。

最新号は「話が面白い人入門!」特集(プレジデント2017年12/18号)

鈴木勝彦編集長(以下、鈴木) 『PRESIDENT』はビジネスマンの問題解決マガジンを標榜してつくっている雑誌で、1963年の創刊から54年目になります。月2回刊にしたのは2000年からで、当時は企画のテーマを自分の半径1メートル以内に落とし込むように言われました。90年代後半に「自己責任」という言葉がよく使われるようになり、人間関係が希薄になって社会が殺伐としてきてから、私事の問題に対する読者の関心が高まってきたのです。その傾向は今も続いているように感じます。

 そのテーマの範囲は、私が編集長になった2012年には半径50センチになり、50センチが0センチになって、今やマイナス5センチ、10センチと、興味の範囲がどんどん自分の内側に向いて狭まってきているんですね。『PRESIDENT』は40代半ばの男性をターゲットにしていますが、心理学や哲学、お金、自分や親の老後の問題、家やお墓の問題などが企画の柱になっています。私は今49歳ですので、読者の困り事を考えるのは自分の困り事を考えることと同じです。特に編集長になってからは、自分は何が不安で何が知りたいかを深掘りしてきた6年間でした。

――生き方、働き方、暮らし方が多様化しているなかで、さまざまな問題が顕在化してくるのが40代、50代なんですね。

鈴木 その世代になってくると、自分の問題も社会の問題も、すべて自分で考えて自分で答えを出していかなければいけないんですね。それは私自身も直面している問題です。自分自身の悩みはもちろん、少子高齢化や年金制度などの社会問題も必ず個々人に降りかかってきますから。100軒の家があれば100通りの答えがある。ひとつひとつの家庭の事情ごとに、選択肢もたくさんあるわけです。最近は、「自分の骨は海に撒いてほしい」という親もいるわけですから、「お墓ってそもそも何?」というところから考える必要も出てきます。哲学に関心が向くのは、そういう“そもそも”を考える問題が増えてきたこともひとつの要因でしょう。自分自身の折り合いをどこでつけるか?という問題も多いですからね。

――人生100年といわれる時代になり、定年後の人生の長さを考えると、お金の問題も深刻になってきます。御誌でも「金持ち老後 ビンボー老後」の特集が特に人気が高いそうですね。

人気の特集のひとつ(プレジデント2017年11/13号)

鈴木 実は、私が編集長になった2012年にも、「金持ち老後 貧乏老後」という同じような特集を組みました。このなかで今でも問い合わせをいただくのが、「シニア1000人調査でわかった リタイア前にやるべきだった後悔トップ3」という企画です。1位が健康、2位がお金、3位が人間関係で、私もこの結果を受けて、ジム通いをはじめたり歯の定期健診を受けるようにしたり生活習慣を変えました。

 やはり身体が弱るとネガティブになりがちで、不安や悩みをグルグル考え続けるのは身体を動かしてないからだと、私自身も体感的にわかるようになりました。そういう体験を雑誌にも投入して、読者と一緒に考えるようにしています。身体は消耗品だということに、もっと早く気がつけばよかったと思いますけれど(笑)。『LIFE SHIFT』のリンダ・グラットンさんも言っているように、人生100年時代にお金よりも大きな価値を生むのは健康だと私も思います。

――2位のお金に関して、30・40代から気をつけるべきことはありますか?

鈴木 もっと貯蓄をしておけばよかったという声が多いので、家計の見直しをすることをオススメします。また物を買うときは、本当にそれが必要なのか、何のために買うのかよく考えてから買うことです。私自身も、見栄で出費してかなり無駄遣いをしてきました。お金を使う行為には、その人の人生観や価値観が反映されているべきなんですね。高級なブランドものでも、家や車や教育の出費でも、自分はなぜそこにお金を使うのか理由づけできなければいけないと思います。

 たとえば私の親の世代は、家に対する価値観がはっきりしていて、家は一族の象徴だから家を大きくしていくことが人生の目的という考え方でした。しかし今は核家族で、年をとってから大きな家に住んで誰が掃除するんだ?という問題が出てきますし、病院が近くにある都会暮らしのほうがいいという方も増えています。独身時代、子育て時代、リタイア後と人生のステージによって暮らし方も変わるでしょう。老後の暮らしの質を高めたいと思ったとき、自分はどんな条件が必要なのか、早めに考えておく必要があると思います。私の実家がある地域では、「家が売れなくて困っている」という話もよく聞きますから。

――2017年11/13号の特集では、家計防衛の対策や、社会保障制度の変化、高金利商品、さまざまな制度の活用の仕方が紹介されていて、現役のうちに知っているのと知らないのとでは大きな差が開くだろうなぁと思いました。

鈴木 金融リテラシーを高めるのは、もちろん早ければ早いほうがいいです。私自身も、金融リテラシーが高い人がうらやましいのですが(笑)、税制や確定申告、社会保障制度の仕組みを理解したうえで家計管理ができること、投資も自分でしっかり調べてリスクがとれること、失敗しても修正していけること、こういったことができる人は一生お金が貯まるでしょうね。村上ファンドの村上世彰さんは、子ども時代に100万円のお小遣いをもらって運用するように言われたそうです。現役世代の若い人たちは失敗しても挽回できますし、チャンスはいくらでもありますから、チャレンジしてみるといい練習になると思います。今後は、子どもたちにもそのような金融リテラシーの教育が重要になっていくでしょうね。

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取材・文=樺山美夏