東大ゴルフ部が優勝しちゃった……! 講義+レッスン+ドキュメントで「上手くなる流れ」を紹介。東大式ゴルフであなたが変わる! ゴルフ自己啓発本【著者インタビュー(前編)】

スポーツ

更新日:2017/12/27


 日本ゴルフツアー初のプロコーチとして、中嶋常幸、佐藤信人ら多くのプロをコーチ。その後、国際ジュニアゴルフ育成協会理事長に就任し、吉田弓美子、成田美寿々、川岸史果といった活躍中の女子プロを育ててきた井上透さん。その井上さんが東京大学ゴルフ部の監督になり、チームを優勝に導くドキュメントが描かれた『弱小集団東大ゴルフ部が優勝しちゃったゴルフ術』(主婦の友社)。ゴルフレッスン書ながら、東大生ゴルファーの成長にサラリーマンゴルファーを投影できるユニークな一冊だ。その味見をさせてもらうべく、井上さんにインタビューした。

■東大生もサラリーマンゴルファーのように悩んでいた

 ゴルフと東大生。イメージが重なりづらい両者だが、それはまったくの正解で、部員のほとんどはゴルフ未経験者。入部前からやっていた学生は全体の1割程度だという。その弱小集団が、多くのプロゴルファーを輩出している日本大学、東北福祉大学といった“列強”と同じ舞台で戦うことを目指すという。

「僕がコーチになったとき、未経験者は言わずもがな経験者もサラリーマンゴルファーと同じでした。レベルはもちろん、練習でやっていることも同じ。定期的に練習していても、その都度対処療法をすることの繰り返し。根本的なところができていないので、昨日できたことが今日はできなくなる。たまに80台も出るけれど普通に100を叩く、といった部員が戦力の中心だったのです」(井上さん)

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■「練習しているけれどうまくならない」

 東大生も多くのアマチュアゴルファーのように悩んでいたわけだが、事はそれだけにとどまらなかった。東大ゴルフ部は、世のサラリーマンゴルファー同様か、それ以上に重いハンデを背負っていることが判明する。お金、車、クラブ、練習環境、時間……そのすべてが足りない。サラリーマンゴルファーの置かれている環境とそっくりだったのだ。

つまりはお金がないということ。一般の学生なら普通のことかもしれませんが、ゴルフをやるとなると事情は違ってきます。もちろん、ゴルフ部ではほぼ全員が家庭教師などなんらかのアルバイトをしていますが、到底それだけではまかないきれないわけです。(本文より)

「正直、どうしようかと思いました。ゴルフ場に行くのに車を調達しなければならない。できなければ電車で行けるゴルフ場を探す必要がある。試合に出ている部員でもクラブが足りなかったりするし、合宿になると、“ここぞ”とばかりにバッグを担いで朝から晩までラウンドしまくる。技術を云々する前に、変えなければならないことがありすぎて……。でも、引き受けた以上は責任をもってやりたい。彼らに“うまくなりたい”という気持ちがあるからなおさらです。部としてゴルフをやる以上うまくなって、“東大ゴルフ部出身です!”、と胸を張れる卒業生にしたいじゃないですか」(井上さん)

 月イチのコーチからスタートしたものの、ひたむきな部員の姿を見て、どんどんのめり込んでいったという井上さん。気がつけば合宿や試合会場にまで足を運び、コーチングをするように。どこまで面倒を見てくれるのか半信半疑だった部員たちも、コーチに信頼を寄せるようになっていった。

■東大生の明晰な頭脳に着目


 コーチをするにあたり、井上さんが着目したのは彼らの明晰な頭脳。お金、時間、環境が不足している東大生の武器はそれだけといってもいいくらい。そこで部員たちがトータル的にうまくなれるシステム作りに着手した。そのひとつが講義。部員はまず、“ゴルフがうまくなる方法”について井上さんの講義を受ける。また、経験者には自分のスイングやパッティング技術を正しく分析できるよう、井上さんのスタジオに常備されている分析機器の使い方とデータの読み解き方の修得を課せられる。

知力とは、分析する方法を知り、正しく分析できる力。自分の調子の悪さを分析する術を知らなかったことも、ゴルフ部員が抱えていた大きな問題点でした。もっとも、これは誰にでもあてはまること。その証拠にアマチュアゴルファーのほとんどは、ミスが出ると「なぜミスしたのかな?」と疑問符をつけたまま放置します。(本文より)


 この効果たるやてきめんで、部員たちは水を得た魚のようにゴルフに取り組み始めた。授業のない早朝や夜に、井上さんが部員のために開放しているスタジオに殺到するようになり、中には練習したまま泊まり込み、出勤した井上さんを驚かせる者まで出る始末。

「朝、スタジオに行ったら鍵が開いているので、これは泥棒にやられた!と思いました。恐る恐るドアを開けて入ったら、打席でゴソゴソ動いているものがある。それが前の晩に練習しすぎて終電に乗れず、眠り込んじゃった部員だったんですよ(笑)」(井上さん)

 無味乾燥なレッスン書とは無縁のドタバタ青春ストーリーを楽しめるのも本書の魅力なのだ。

【後編】はこちら:東大ゴルフ部が優勝しちゃった! 講義+レッスン+ドキュメントで「上手くなる流れ」を紹介。東大式ゴルフであなたが変わる! ゴルフ自己啓発本【著者インタビュー(後編)】

<著者プロフィール>
井上透(いのうえ とおる)

1973年生まれ、横浜市出身。アメリカでゴルフ理論を学び、1997年より日本における初のツアープロコーチとして男子ツアーに帯同。多くのプロのコーチングを行っている。2011年には早稲田大学大学院にて「韓国におけるプロゴルファーの強化・育成に関する研究」にて最優秀論文賞を獲得。国際ジュニアゴルフ育成協会理事長として、『世界ジュニアゴルフ選手権』の日本代表監督を務めるほか、2017年より東京大学ゴルフ部の監督に就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)。

『弱小集団東大ゴルフ部が優勝しちゃったゴルフ術』
著:井上透
価格:1200円+税
ISBN: 978-4-07-425923-6
発売日: 2017年12月13日
出版社:主婦の友社