調査データから見えてきた結婚と離婚のリアル。リクルートブライダル総研 研究員・落合歩さんインタビュー【前編】

恋愛・結婚

2017/12/25


 結婚や恋愛、家庭生活全般に関する調査・研究を専門におこなっている「リクルート ブライダル総研」(リクルートマーケティングパートナーズ運営)。その最新の調査レポート「夫婦関係調査2017」には、「既婚者の約7割は夫婦関係に満足」「一方で、30代妻の満足している割合は大幅に減少」などの興味深いデータが示されています。ブライダル総研研究員・落合歩さんにリアルな夫婦のあり方について、前・後編でお話しいただきました。

イクメンブームの陰で妻の満足度が減少

「夫婦関係調査2017」(リクルートブライダル総研)より

「夫婦関係調査2017」(リクルートブライダル総研)より

――今年7月に発表された「夫婦関係調査2017」では、夫婦関係に満足している割合は全体で67.2%でした。これは2015年の調査から1.9ポイントの減少です。男女別、年齢別で見ていくと特に30代妻が13.9ポイントという大幅減少ですが、なぜなのでしょうか?

落合歩さん(以下落合):30代の女性は子育て世代です。年齢的に小学生以下の子どもを育てている場合が多い。小学生以下の子は物理的に手がかかりますから、そこがポイントでは、と考えています。実際、小学生以下の子どもの有無と夫婦の満足状況に関するデータも出しているんですが、やはり小学生以下の子どもがいる妻の満足状況は大きく下がっているんです。

――30代が子育て世代というのは、今に始まったことではないですよね。なぜ今回大幅ダウンしたと思われますか?

落合:おそらくここ数年で、理想と現実のギャップが大きくなってきたのではないでしょうか。「イクメン」という言葉がブームになり、夫の家事・育児参加がささやかれているなかで、現実はそこまで変化に対応しきれていない。妻側はある程度期待をしてしまうが、実際は期待ほどでもない。そのギャップが満足度を引き下げているのだと思います。

――なるほど、イクメンブームゆえの結果ですか。

落合:ですからこれはもうちょっと長いスパンで見ていく必要があります。日本でもワークライフバランスが重視され、男性も家事や育児に時間を割こうという空気が出てきました。実際に育児休暇を取得する男性も、少しずつですが増えてきています。今はちょうど過渡期にあたっているんですよね。

――では、落ち込んだ満足度はまた回復してくる?

落合:ゆくゆくは下がり幅が減ってくるような気がします。結婚後の変化についてのアンケートでは、「家事の負担が増える」と答えた男性が20代、30代では50%近かった。2015年前の調査に比べて、30代男性では約11ポイントも増えています。意識として「ある程度の覚悟を持つ」というふうに変わりつつあるのは確かです。もちろん意識だけでなく、それに見合った社会制度ができることも必要ですね。そうなると、期待と現実が合ってきて「がっかり」が少なくなっていくのでは、と思っています。

――家事をしたくても忙しくて帰れない、という夫もいるのが現実です。

落合:欧米の進んだ国では、男性でも一日3時間は家事や育児に参加しています。日本では平均1時間程度ですから、比べるとまだまだですね。これは個人的な体験談ですが、知り合いの女性がイギリス人男性と結婚してロンドンに住んでいるんです。夜の7時半に仕事から帰宅すると、夫がご飯の仕度をして待っていてくれるのだとか。日本ではそういう生活スタイルは浸透していません。働き方が夫婦関係に与える影響は大きいですね。

――満足度が下がったと聞くとドキッとしますが、そう悲観的になる結果ではないんですね。

落合:そうですね。満足度は下がりましたが、夫婦関係が不満だと答えている人は全体の1割程度なんです。不満足ポイントが増えたという話ではなく、あくまで満足度が2ポイントほど下がったという結果です。

30代妻の時間的・精神的ゆとりが減少

「夫婦関係調査2017」(リクルートブライダル総研)より

「夫婦関係調査2017」(リクルートブライダル総研)より

――それを聞いて安心しました(笑)。今回の調査では「家庭に対する思いや意識のバランス」「時間的ゆとり」「精神的ゆとり」についてもアンケートしています。ここでもやはり小学生以下の子どもがいる妻のポイントが2015年に比べて減少している。子育て世代のお母さん方の苦労が、あらためて浮き彫りになる結果となりました。

落合:普段の仕事や家事に加えて、子育ての負担が増えると当然、ストレスになるでしょう。子どもって思い通りにはならないし、夫婦二人の時にはなかった悩みも生まれますからね。2015年に比べて減少しているのは満足度と同じで、思い描いている家庭像に現実が追いついていないことの表れだと思います。

――では、妻が「精神的ゆとり」「時間的ゆとり」を取り戻すには、どうしたらいいんでしょう?

落合:当たり前ですけど、納得感を高めることだと思います。こうしてほしいという希望があるのなら、男性側も寄り添う必要がありますし、そのためにはコミュニケーションやお互いの意思表明が必要になってくる。もちろん子育て世代の負担を減らすような社会としての取り組みも欠かせません。

――大切なのはやはり夫婦のコミュニケーションと意思表明ですか。

落合:ええ、それはこれまでの調査データでも出ていることなんです。会話の量によって夫婦間の満足度はずいぶん違ってくる。そうした意味でも、コミュニケーションの頻度を上げることは大切ですね。また、その中でお互いの考えを表明すること。たとえば家事にしても、あらかじめ夫婦で役割分担を決めておくのもひとつの工夫です。料理は誰、掃除は誰、洗濯は誰と。ちょっと堅い言い方をすると、「責任の所在を明確にする」ということです。もちろん、杓子定規に完璧に線引きをする必要はないですが、お互いが事前に分かりやすい役割をもっておくと納得して取り組みやすいと思います。

――それだと「やってくれない相手にストレス」→「夫婦喧嘩」というパターンは避けられそうですね。

落合:ぼくの知り合いのある夫婦は、半年ごとに役割分担を話し合っているそうです。スポーツの契約更新みたいな感じですね(笑)。この家事はいざやってみたら負担が大きかったとか、仕事が忙しくてここは担当できないとか。そういう話し合いを日々重ねていくことで、柔軟に調整し、お互いに納得できる環境作りをしていくのが大切なんです。

――簡単な工夫で満足度の減少はストップできるんですね。

落合:もちろん人によって専業主婦がいいという方、家事の一部だけ手伝ってほしいという方、人それぞれ理想とする家族のカタチが違います。大切なのはどんなカタチが理想なのか、何に優先順位を置いているのか自分でちゃんと理解して、お互いに伝えておくこと。可能なら結婚前に一度、理想の家庭像を話し合っておくといいですよね。

インタビューの後編では昨年実施された「離婚に関する調査2016」をもとに、現代日本の離婚についてもお話しいただきます!

<プロフィール>


落合 歩(おちあいあゆむ)

リクルートブライダル総研 研究員。化粧品メーカーのマーケティングや宣伝部を経て2007年(株)リクルートに中途入社。 マーケティング局宣伝企画グループ、コーポレートコミュニケーション室を経て2011年より現職。 主に未婚者の動向から結婚・結婚式、新婚生活準備に関する調査、研究、提言を行う。

取材・文=朝宮運河