離婚を回避するには結婚前の○○○が大切! リクルートブライダル総研 研究員・落合歩さんインタビュー【後編】

恋愛・結婚

公開日:2017/12/27


 結婚や恋愛、家庭生活全般に関する調査・研究を専門におこなっている「リクルート ブライダル総研」(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ運営)。その研究員である落合歩さんに、現代の夫婦関係についてお話をうかがっているロングインタビュー。後編では2016年に実施された「離婚に関する調査2016」をもとに、離婚のリアルについてうかがいます。離婚経験者と有配偶者(*初婚同士の既婚者)、データから見えてきたその意外な経験の差とは?

離婚に関する調査2016(リクルートブライダル総研)より

調査から見えてきた意外な“スタート時の差”

――ブライダル総研では2016年「離婚に関する調査2016」も実施していますね。「離婚を望んでいた割合は男性よりも女性の方が高く、6割を超える」「離婚経験者は有配偶者と比較し、周囲に離婚経験者がいる割合が高い」などの興味深いデータが出ています。

落合歩さん(以下落合):ブライダル総研では恋愛から結婚、夫婦関係までさまざまなテーマに関する調査を行っています。離婚についてもこれまで結婚や夫婦関係などの枠組み内で取り上げてきたんですが、改めて2016年に離婚について詳しく調査してみたんです。

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離婚に関する調査2016(リクルートブライダル総研)より

――「有配偶者のなかで、約5割の人が離婚を考えた経験あり」という結果も気になりますね。多いような気もしますし、意外と少ないような気も(笑)。

落合:調査の対象は20代から60代の男女です。具体的な行動に移したかどうかは別として、考えたことがあるという人の割合ですから、リアルな数字としてはこのくらいかなと(笑)。ただ前編のインタビューでもお話ししましたが、結婚生活に満足している人は有配偶者の約7割です。大半の人は現状に満足もしているんです。

離婚に関する調査2016(リクルートブライダル総研)より

――今回の調査で面白かったのは、離婚経験者と有配偶者とでは「結婚スタート時の経験に違いがある」ことですね。

落合:具体的には「性格を理解してもらうこと」「家族が親しくなること」「親族や友人を知ること」「金銭感覚のすり合わせ」「価値観のすり合わせ」などの経験をしているかどうかで、二つのグループに差が認められました。調査してみるまではここまで差が出るとは思っていなくて、興味深い結果だなと感じています。

――たとえば結婚前に相手の友人に会っておくとか、そういう経験のことですよね。その有無が離婚率と関係している?

落合:はっきりした因果関係があるとは言い切れません。ただ数字から言えるのは、何らかの繋がりはありそうだ、ということ。相手のバックグラウンドを知ることで、結婚相手本人への理解も深まりますよね。それがその後の結婚生活にも影響を与えることは、十分考えられるのではないかと思います。

――「有配偶者の方が挙式または披露宴・結婚パーティを実施している割合が高い」というデータも出ています。これはどういう背景が考えられますか?

落合:結婚式は「選択」「決断」の連続なんですよ。ある程度のお金が動きますし、決めるべきことが次々と出てくる。誰を呼ぶのか、どこにどれだけお金をかけるのか、どんな演出にするのか。そういうことを二人で決めていくことで、お互いがどんな価値観で物事を見ているのか分かってくる。さらに「この人どんな人なの?」といった会話も生まれ、相手の背景や人間関係も分かってくる。もちろん結婚前にも分かっていると思うんですが、それがより明確になるのが結婚式などのイベントなんです。

――なるほど、結婚式にはそういう意味合いもあるんですね。たしかにお互いの優先順位がリアルに明かされる気がします。

落合:そうした大きなライフイベントをともに経験することは、相手の価値観をよく知るきっかけになるでしょう。

――調査結果を見ても「価値観の違い」「金銭感覚の違い」「人生観の違い」が離婚理由のトップ3ですもんね。そこを結婚前からすり合わせておくことが大事なんですね。

落合:その通りです。離婚というと結婚後の生活ばかりが注目されがちですが、実はスタート時点ですでに重要な分岐があるんですよ。それがこの調査によって明らかになった。これから結婚を考えている方は、知っておいて損のない情報だと思います。もちろん結婚した後も前編でお話ししたように、折に触れてお互いの価値観をすり合わせていくことが重要です。

若いうちから理想の人生のイメージを

――同性婚や事実婚をめぐるトピックが取り上げられるようになり、従来の結婚観も分岐点にさしかかっている気がします。落合さんはこれからの日本の夫婦関係はどうなるとお考えですか?

落合:この先ますます多様化が進んでゆくことになると思います。これは結婚に限った話ではなく、個人の価値観自体が昔に比べて多様化しているので、結婚も同じような流れに沿って変わっていくでしょうね。しかし現状の結婚生活のスタイルがすぐになくなるとは考えにくい。未婚者は結婚意欲もありますし、結婚した理由では、「子どもがほしい」が高いためです。大枠では今の形を残しながら、より多様化していく、というのが今後の流れではないでしょうか。

――落合さんは大学でライフデザインなどについて講義されているそうですね。現代の若者たちの結婚観とは?

落合:今の学生を見ても、結婚したいと思う人たちの割合は減っていない気がしますね。さらに、多くが子どもを希望しています。そして夫婦の役割分担の意識は男性が5対5と想定している学生が多いのも特徴的だなと思います。

――若者の結婚離れというわけではないんですね。

落合:特にそういう感じは受けないですね。もちろん、カタチは一様ではなくなってきているとは思います。どんなカタチでも認められるようにはなってくる。そうすると選択肢が広がると思うので自分の軸を明確にしておくことが重要になります。よく授業でも話すんですが、結婚するにせよしないにせよ、自分がどんな人生を送りたいのか早めに考えておくことが大切です。それによって就く仕事も変わってきますし、子どもを生む生まないという選択も変わってくる。なんとなく過ごしてしまうと納得感の低い結果になってしまうので、若いうちからよく考えておいた方がいいよ、と。

――未婚者も既婚者もときどき立ち止まって、自分がどう生きたいのか再確認する。大切だけど忘れがちなことですね。

落合:そうなんです。結婚したい人とは結婚してほしいし、したくない人は結婚しなくてもよいと思います。ただ結婚するかどうか、自覚的に選択できるようにしておくのは大切なこと。そのうえで同性婚もあり、事実婚もあり、独身もあり、納得のいくライフスタイルを選んだらいいんです。本当は結婚したかったんだけど…と後から悔やむことのないように、早めに人生のイメージを明確にしてみてはいかがでしょうか。

――ありがとうございました。

【前編はこちら】https://ddnavi.com/interview/424902/a/

<プロフィール>


落合 歩(おちあいあゆむ)

リクルートブライダル総研 研究員。化粧品メーカーのマーケティングや宣伝部を経て2007年(株)リクルートに中途入社。 マーケティング局宣伝企画グループ、コーポレートコミュニケーション室を経て2011年より現職。 主に未婚者の動向から結婚・結婚式、新婚生活準備に関する調査、研究、提言を行う。

取材・文=朝宮運河