テーマは、『CCさくら』と「多面性」。作曲者としての幅を広げた新曲『Jewelry』を語る――早見沙織インタビュー

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2018/3/28

 声優・早見沙織の4thシングルは、現在放送中のTVアニメ『カードキャプターさくら クリアカード編』エンディングテーマ、『Jewelry』(3月28日リリース)。2015年8月に自身名義での音楽活動をスタートして以来、歌唱だけではなくクリエイティブ面でも類い稀な才覚を披露してきた早見だが、『Jewelry』は一層の驚きを聴き手にもたらす1枚だ。もともと、自身の楽曲ラインナップになかった「ストレートに明るい曲」を意図して制作し、視聴者としてリアルタイムで体験した『カードキャプターさくら』からインスパイアされて歌詞を紡いだ表題曲の“Jewelry”。「早見沙織節」とさえ言える印象的なメロディラインに、自身が演奏したピアノが寄り添うカップリング曲の“琥珀糖”。どちらも、「作詞・作曲=早見沙織」による楽曲だ。声優としてもメインキャラクターを数多く射止めながら、表現への尽きない欲求を携えて自身の音楽を探求する早見沙織のアウトプットは今、とても魅力的である。各楽曲の背景から、表現者としての現在のモードまで、幅広く語ってもらった。

多面的というテーマを、もうちょっと切り取ってみたい

──表題曲の“Jewelry”、とても素敵な曲に仕上がりましたね。まずは、この楽曲の制作を振り返ってみてもらえますか。

早見:やっぱり、すごくストレートに明るい楽曲なので、「ストレート!」って意識しました(笑)。まっすぐ、明るく、曇りがない感じ。実はこれ、タイアップのお話がある前に、「明るい曲作るぞ~」と思って作った曲なんですよ。

──なるほど。なんで明るい曲を作ろうと思ったんでしょうね?

早見:なんだったかなあ……。自分的にもいろいろ幅を広げていったほうがいいなあ、と思っていて。だから、「底抜けに明るくて、凝りすぎてない曲は、今のところ、ないな。やってみよう」という感じで、チャレンジする気持ちで作りました。たとえば“Installation”(2ndシングル。2016年リリース)とかもそうだけど、終わりに着地しない曲、曖昧なまま終始する曲が多かったりするので、「バン!てメジャーでしっかり終わります、みたいな曲があってもいいかもしれませんね」ってディレクターさんと話していて、「確かに!」と思って。ちゃんと解決する曲、みたいなイメージです。

──実際、新しい何かを切り拓くのとはちょっと違うのかな、という印象があって。いろんな回路があって、そこが開いたイメージが浮かんでくるというか。全然言語化できてないけど、いろんな色の──。

早見:出た! 色トークきた! 話しやすいやつ(笑)。

──(笑)たとえば「自分の音楽には黄色を出せる回路はないな」って思っていたんだけど、実際にはあった。今までは隠れていたものが見えてきた、みたいな感じだったのかな、と。

早見:そういうところ、あったと思いますね。ある、あります。工事中だったけど、開通した感じはあるかもしれないです(笑)。曲の原型自体は、すごく早くできたんですよ。作るときに迷いがないから、曲にも迷いがない、みたいな。もちろん、他の曲に比べたらなので。あくまで当社比ですけど。

──当社比(笑)。

早見:当社比で(笑)。自分的には「おっ? おおっ! 開通しましたあ! テープカットぉ!」みたいなイメージなんですけど、『さくら』のエンディング曲になってなかったら、この曲を発信するゲートが開いてなかった感もありますね。わたしの中で一番しっくり落ち着いたのは、エンディングの絵と一緒に観たときで。絵と一緒に流れるまでは、すごくドキドキしてたんですよね。未知数な部分がすごく多かったんですけど。エンディングの絵と合わさって観たときに、とっても楽しい気持ちになったし、自分が小さいときに観てたアニメのエンディングの「終わったぞ感」を感じて、「よかったぁ」って思いました。

──映像として観る前は、何がそんなに心配だったんですか。

早見:自分が作った曲がエンディングとかタイアップになることもあまりなかったし、今回は共作とかでもないので、ある意味プレッシャーというか……「うおー!」みたいな(笑)。シンプル、ストレートで、癖ばっかりの曲じゃないから、馴染んだことによって生まれる魅力が大きかったのかもしれません。

──癖、いつもはありますもんね。「早見沙織的な作曲の癖」って、わりとわかりやすく出てますよ。

早見:えっ! ほんとですか?

──今回カップリングで作詞・作曲してる“琥珀糖”は、それこそ早見沙織的な作曲の癖が出てると思います。「これこれ」みたいな。もはや安定の「節」と言ってもいいレベルで。

早見:確かにこれは──コテコテです(笑)。実は、“琥珀糖”のピアノはわたしが弾いてるんですよ。

──あっ、そうなんだ。それはすごい!

早見:ピアノの譜面は矢吹香那さんがアレンジしてくれて、音もブラッシュアップしてくださったんですけど、弾いてるのはわたしで――大変でした。手にめっちゃ汗かいて、鍵盤が滑る滑る(笑)。「弾きます?」ってなって、そのときは何も深く考えずに「あっ、では」みたいな感じでOKしちゃったんですけど、練習を始めたときに、「待てよ? これは、もしや、とんでもないことをやろうとしているのではないか?」って思って。でも、ディレクターさんのイメージの中で、女性がひとりでおうちにいて、すごくうまいわけじゃないけど自分で弾いて、深夜とかに歌って、みたいな像があったらしいんですね。だったら、バリバリに弾けるわけじゃないけれども、自分の手でやったほうがいいんじゃないですかっていう話になって、「確かに」と思い、練習しました。

──歌詞も、とてもよかったですよ。曲とすごく馴染んでると思います。

早見:“Jewelry”のカップリングは何にしようって考えたときに、似たような感じでもいいけど、180度違う感じにして。ひとりの人の幅の広さ、内面みたいなものを表現できるような1枚になったらいいな、っていう目標があって。だから、宝石っぽいけど、ずっとあるものとなくなるもの、っていうところから派生して、2曲のコンセプトを考えていった感じです。

──2曲並べたときのコンセプトも、自分で考えたんですか。

早見:そうです。わたしがこうしたいなと思って、この曲のタイトルもそれに決めて――改めて文字になると思うと、「大丈夫かな?」みたいな気持ちになってきますけど(笑)。“Jewelry”は、小さいときに『カードキャプターさくら』を観てた人にも届けたいし、今の人にも聴いてほしい曲ですけど。大人になった人は、こんなことを思ってる。でもその人は、全然違うことを考えてるときもあるっていうところからスタートして――多面性にずーっと着目していて。対比ができたら面白いのかも、とか。それを落とし込んで、1枚の盤として完成させることができたので、多面的というテーマをもうちょっと切り取ってみたい、という気持ちになりました。

──人間のいろんな感情を描きたいと思ったのは、どういう背景があるんでしょう。

早見:なんだろう……自分がそういうふうに思うから、ですかね。自分もそうだと思うし、相対するみんな、人々もきっとそうなのではなかろうか、と。たとえば、「弱気な人だよね」って言われてる人は、本当にただ弱気なんだろうかって思うこと、ありませんか? ある面では、執着がないだけの人かもしれないじゃないですか。たとえば、全然主張しない人がいたとして、その人は本当に何も考えてないのかな、主張しないのかなと思ったときに、その人が絶対的にこだわる部分って、もしかしたらわたしが見えない、全然関係のない部分でしっかり芯を持ってる人なのかも、とか思ったりするんですね。「ほんとにそれだけなのかなあ」みたいなことを、昔からよく考えるんです。決して悪いように捉えたいわけじゃないんですよ。たとえばすごくやさしい人が実は意地悪なんじゃないか、とはあんまり考えたくなくて、肯定的にとらえたいっていう気持ちが根底にあるんですけど。「この人はこういう人だ」というレッテルを貼っても、それは必ずしもイコールにはならないような気がする。そういうことを考えることがあって。

──それは日々考えてる? 最近よく考えるっていうこと?

早見:昔からよく考えてますね。「なんかあの人、こういう人だよね」って言ってる人を見ると、「ほんとにそうかな?」みたいな。「今言ってることだけがすべてじゃないんだろうな」と感じておきたい気持ちがあるのかも。まあ、自分がそうだからかもしれないですけどね。自分のすべてを1日で出すことはできないし、10年経っても20年経っても全部を見せることはできないので――なんかこれ、言葉にすると超ヤバい発想っていう感じなんですけど。「何を考えてんだ」って思いますよね(笑)。

──いやいや(笑)。それは、いい意味で人にとても興味があるっていうことでもあるでしょうし。

早見:誤解したくないのかも。いろいろ、自分自身のこともあるんだと思います。ある一面を見て、「こういう人ですよね」って決められたくない、みたいな部分があるのかもしれないです。

──たとえば、“琥珀糖”の歌詞を読んでいて思ったんですけど。この歌詞の言葉を取り上げて、「これ、早見さんそのものですよね」って言われたらイヤだろうな、と想像してたんですよ。

早見:ああ、わかる!(笑)。確かにそうなんですよね。

──こういう部分もあるって言ってるだけ、だから。特に取り上げたいと思っていたのは、《背負うもの全部投げ出しちゃいたい》っていう部分なんですけど。

早見:ここ、よくみんなに言われるんです。キーポイントなのかも。

──まさにキーポイントで、「ほんとはそんなこと思ってたんだ」とか思ったら、それは誤解中の誤解で。「いやいや、違うよ。でも、そういうところもあるんだよ」っていうだけであって。

早見:うん、ほんとにそのとおり。正しく伝わってよかった(笑)。

(『CCさくら』は)もう、どんぴしゃ世代なので(笑)。ある意味それって、自信に繋がるというか。嘘偽りがなくなる分、説得力が生まれるといいな、と思ってました

──話を“Jewelry”に戻すと、この曲の作詞は、作品が大きいだけに大変だったんじゃないですか。

早見:はい。やっぱり、自分の中で作品がとにかく大きくて。すっごく好きだし、当時めちゃめちゃ観てたし、劇場も行ったし、グッズも買ったし。幼稚園とか、小1くらいでしたけど、今こうして声の仕事をしていても、絶対関わると思ってない聖域みたいな部分だと思ってたんですよ。だから、「うわぁ、どうしようかなあ……」と思いました。

──単純な話、なぜ作詞を自分でやることを受け入れたんですか?

早見:ある意味では、だからこそのものもあるのかな、と思って。もう、どんぴしゃ世代なので(笑)。当時のことで、断片的に覚えてることもあるんですよ。それをうまいこと使えたらいいなあ、という部分もありました。ある意味それって、自信に繋がるというか。「だってこれ、実体験の気持ちだもん」みたいな。嘘偽りがなくなる分、説得力が生まれるといいな、と思ってましたね。面白かったのが、サビの一番最初は《大丈夫》になってるんですけど、プリプロの段階では、《大丈夫》か《絶対ね》のどっちかにしようと思ってたんですよ。で、曲のことを全然知らない友達とごはんを食べに行ったときに、「『さくら』の曲やるんだってね」「そうなんですよお!」って話をして。別の会話の流れで、わたしが「いや、絶対大丈夫ですよ」って言ったら、「さくらちゃんのキーワードだね」って言われたんです。「あれ? そうでしたっけ?」って話になって。「さくらちゃんといえば、『絶対大丈夫』だよ」って。

──《大丈夫》は、そこから引っ張ったんじゃないんですか。けっこう有名な決めゼリフですよね。

早見:違うんです(笑)。「絶対大丈夫だよ」が決めゼリフだったことを、すっかり忘れてたんですよ。でも、偶然考えた二択が《絶対》と《大丈夫》だったっていう。ほんとに感動して、「えーっ! うそーっ!!」って思って。「無意識にインプットされた『さくら』のオーラ、すごいな」って思いました。で、《また会えるよね》っていう歌詞は、確か20年前にやってた『さくら』の最終話の一番最後の言葉って、「また会えるよね」だったと思うんです。それは鮮明に覚えていて、絶対入れたくて。だけど、さくらの「絶対大丈夫だよ」は覚えてなかった(笑)。偶然生まれました。

──20年前に観た作品と向き合って出てくる言葉は、「絶対」と「大丈夫」だったという。このふたつの言葉の強度、すごいですよね。

早見:強度、すごいです。ちょっとこう、むしろ書き始めておっかなびっくりしちゃうくらい、パワーがすごくて。昔、ごっこ遊びをよくしてたんですよ。でも、わたしはさくらではなくて、だいたい知世ちゃんだったので(笑)。それで今は歌詞を書かせてもらってるって、驚愕の展開ですよね。

──昨年、『はいからさんが通る』で紅緒を演じて、竹内まりやさんの曲(“夢の果てまで”)を歌って。前回のインタビューで、「人生ってこんなことあるんだ」っていう話があったけど、今回の『さくら』はそれをさらに上書きするような強烈な体験ですよね。

早見:ほんとにそうなんですよ。こればかりはもう、神様ありがとう、まわりの方ありがとう、みたいな感じでございます。

──以前から、「音楽を作る存在として〇歳児」っていう表現をよくしてるじゃないですか。“夢の果てまで”のときは3、4歳児で、今はどうなってるんですか?

早見:そうですね、ゆうても3歳6ヵ月、みたいな(笑)。ゆっくりですけど。声優のお仕事も、トントントーンって理解していくよりは、結果として目に見えるものはわりとゆっくり積んでいくタイプなので、焦らずにいこうかな、と思います。今年は、もっと学びたいですね。わたしの中では、「もうちょっとこういう曲やってみたいなあ」というイメージもあるので、それが形にできたらいいな、と思います。

──最後にざっくりした質問になりますが、いろんな曲を作れるようになった結果、表現者としてどうなっていきたいんでしょうか?

早見:どうなりたいんだろう? 表現が出てきた瞬間って、「おおおお、わくわくするー!」ってなるじゃないですか。お芝居でも、作品としての完成具合はわりと二の次で、「わっ!」て自分の中でなる瞬間が好きなのかもしれないです。それを追いかけたりしてたりするのかな。何かが動いた瞬間を残して、形にして、それを形にしたときにまた動いていくのが、楽しいのかもしれないですね。この間、友達と話していて、「やっぱり、楽しくないことをずっとやることはできない」っていう結論に至って(笑)。

──(笑)圧倒的な真理ですねえ。

早見:自分の中で納得できないことや、「うーん……」って思うモヤモヤの中でずっと生きることはできないね、やっぱり楽しいことをやっていかなきゃ、っていう話になって。そういうものに囲まれたい、みたいな(笑)。自分の中で、「あ、楽しいぞ!」って思えることを、どんどん追いかけていきたいですね。

前回の早見沙織インタビューはこちら

取材・文=清水大輔 撮影=北島明(SPUTNIK)
スタイリング=武久真理恵 ヘアメイク=樋笠加奈子(アッドミックス ビー・ジー)

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