ベストアルバム発売記念!「LiSAのBEST of BEST」インタビュー(後編)

エンタメ

2018/5/9

「LiSAのBEST of BEST」インタビュー後編は、事前に回答してもらった10個のアンケートのうち、後半の5つのテーマについて語ってもらった。インタビューの前編で「過去を振り返る以上に未来を見せてくれるアルバムになっている」と書いたが、2枚のベストアルバムに収められた新曲“Believe in ourselves”と“WiLL~無色透明~”が、その印象をもたらすトリガーになっている。いずれも1stミニアルバム『Letters to U』の収録曲を思わせるタイトルを持つ楽曲だが、そこに込められているのは、過去に経験した想いもすべて抱えてこれからも歩いていく、という決意と覚悟である。「何のために歌っているのか」「LiSAという存在はどうあるべきか」――簡単には答えが出ないであろうこれらの問いに向き合い、示された道とはどのようなものだったのか。LiSAの歩みを知るすべての人に読んでほしいテキストだ。

インタビュー前編はこちら

アルバムのことも、曲のことも、LiSAのことも、たぶんわたしが一番考えてる。だから、わたしは自分のことを天才って言うんだなって(笑)

【LiSAのBEST of BEST 後編】
⑥リリース時からの成長度合いがNo.1だと思う曲 ⇒ ROCK-mode、Catch the Moment
⑦「あと1回しかライブできません」と言われて、そのライブのM-1に選ぶ曲 ⇒ Catch the Moment
⑧「LiSAになる前の自分」に、「こんな曲歌えるんだよ」と教えてあげたい曲 ⇒ Believe in ourselves
⑨『-Day-』『-Way-』には入っていないけど、「実は入れたかった!」な1曲 ⇒ DOCTOR
⑩全部好きなのは前提で、それでもあえて一番思い入れのある曲を選ぶなら? ⇒ ジェットロケット

――前編に引き続き、事前に答えてもらった「LiSAのBEST of BEST」に沿って話を聞いていきます。テーマ6「リリース時からの成長度合いがNo.1だと思う曲」は、“ROCK-mode”と“Catch the Moment”。

LiSA:やっぱり、“ROCK-mode”はすごいなって自分でも思います。ただ“Catch the Moment”は、一気に“Rising Hope”と同じレベルに並びましたからね。

――テーマ5と関連づけて言うと、自分そのものが描かれた歌詞を持つ曲が、ものすごいスピードで愛されている。それは誇りに思えることだろうし、自分を好きでいてもらえてる確信が持てますよね。

LiSA:そう思います。自分が一生懸命伝えることが必要な曲と、もっと伝わりやすい形で人に伝えてもらえる曲、わたしはどっちもLiSAの曲としてすごくいいと思っていて。その中でも、自分の心持ちを言葉にした“Catch”をみんなが歌ってくれる、しかもそれを自分の曲だと思って歌ってくれるライブの空間がすごく好きです。みんなそれぞれに自分の大切な人を思い浮かべたり、ライブの大事な瞬間を感じたりしながら、この歌を歌ってくれているあの空間は、とても素晴らしいなあ、と思います。

――ここでちょっと番外編を挟みます。「作っていて、“わたし天才⁉”とうっかり思ってしまった曲」。ここでも“ROCK-mode”が登場しますね。

LiSA:はい。「遊びたい空間を曲に詰め込んだわたし、天才」って思って(笑)。みんなと一緒に最高な空間が作れるんだ、ちゃんとライブのことを歌いながら歌詞を作れてるわたし、マジ天才って思いました。それは、“コズミックジェットコースター”も一緒ですね。「ここで何をしたらみんなは楽しいかなあ」って思いながら歌詞を書いたりするので。

――とはいえ、自分のこと天才だと思うって、そうそうないでしょう(笑)。

LiSA:ははは。わたし最近、『ブルーピリオド』っていう漫画が好きで。なぜ好きかというと、何もやりたいことがなくて、でもなんだってできる高校生がいるんですけど、彼にとって突然美術がすごく魅力的に見えて、美術部に入って美大を目指していくお話なんです。そのきっかけは、先輩が絵を描いていて、その絵を見て「すごいっすねえ」「先輩、マジ天才っすねえ」って言うの。そうすると「天才じゃないよ。わたしは人よりも絵のことを考えてる時間が長かっただけだよ」って言って。わたし、「天才ってそういう意味なんだ」って思ったんです。だって、アルバムのことも、曲のことも、LiSAのことも、たぶんわたしが一番考えてるから。みんなとどんな空間を作ったら楽しいかなって一番考えてる自信がある。だから、わたしは自分のことを天才って言うんだって思って(笑)。

――(笑)テーマ7「“あと1回しかライブできません”と言われて、そのライブのM-1に選ぶ曲」。ここも“ Catch the Moment”で来たかっていう。

LiSA:いや、“Catch”でしょう。始まって、《♪ぼ~くぅ~のぉ、声が~響いた~瞬間(とき)に始ま~る、命のリミット~、♪あと何回キミと笑えるの~? 試してるんだ、僕を~、Catch the Moment》って1曲目が始まったら、もうボロ泣きでしょ? だって、あと1回しか歌えないんですよ?

――なるほど。今回のベストはこれまでを総括しているけれども、終わる感はまったくないわけですよ。むしろ「ここからだな」っていう感じさえする。だから「あと1回しかライブできない」なんて状況は当分訪れそうにないけど、あえて聞いてみよう、みたいな(笑)。

LiSA:(笑)いつも、未来に希望があるって信じて生きてるけど、「いつか終わるかもしれない」っていう恐怖心も、やっぱりずっと一緒にあるんですよね。

――“Catch”は、その気持ちがものすごく強く反映されてる曲ですからね。《あと何回キミと笑えるの?》っていうフレーズは、まさにそういうことだし。

LiSA:うん。そう思います。1曲目でこれ始まったら、みんなもう全泣きでしょ?(笑)。

――自分も歌えなくなっちゃうのでは?(笑)。

LiSA:大丈夫、2曲目に“コズミックジェットコースター”入れるから。泣いてる時間与えないです(笑)。

――(笑)そして、ここでまた番外編。「“あと1回しかライブできません”と言われて、そのライブのラストに選ぶ曲」。ラストは“BRiGHT FLiGHT”を歌う、と。

LiSA:はい。これは、それぞれの道の逃避行だから、ですね。やっぱりわたしが歌う理由として、みんながもっと楽しく生きられたらいいなあ、もっと毎日どこかで楽しくなったらいいなあって思いながら音楽を作ったりライブしてたりするから、自分が作ってきた宝物の曲たちの中でも――ほんとに、卒業式のような気持ちですね。「先生はもう、みんなに全部あげました、あとはみんながそれぞれ逃避行してください、それぞれが思いを受け取って旅立ってください」っていう。《Good bye bye》ですね。で、「BRiGHT FLiGHT」、そこから羽ばたいていく未来がキラキラしてたらいいなあって思います。真面目な人が、自分を脱いで羽ばたいていくときに「BRiGHT FLiGHT」って言うらしくて。「現実からの逃避行」みたいな意味が“BRiGHT FLiGHT”には入っているので、そこからみんなが旅立って、それぞれの道を歩んでいくラストがいいなあって思いました。

みんなに楽しんでほしいなっていう気持ち、ただそれだけ

――テーマ8「LiSAになる前の自分に、“こんな曲歌えるんだよ”と教えてあげたい曲」。“Believe in ourselves”。これはまあ、そうでしょう。

LiSA:いや、もうこれ、ヤバくないですか?

――というか、タイトルがちょっとエモすぎる(笑)。

LiSA:タイトルつけたのはわたしじゃないけどね(笑)。先輩(田淵智也)から「“Believe in ourselves”でしょ」って言われたときに、「ええ~? やり過ぎじゃない? なんかちょっとエモすぎじゃない?」って言ってたんですけど(笑)。

――(笑)田淵さんから見ると、LiSAの物語はそういうエモい姿をしているんでしょう。

LiSA:先輩に、「何のために歌ってるのかもわからないし、ずーっとみんなと一緒にいられるわけじゃないし、いろんなものを受け取りながら生きてるからしんどくなることもたくさんあるけど、でも自分たちの曲を聴いたときにやっぱり音楽が好きだと思ったし、みんなが一緒に歌ってくれたりする景色がすごく好きだし、この人たちのためにまだまだやれることがいっぱいあるなあ、まだまだやりたいなって思いました」っていう話をしたんです。で、先輩も泣きながら書いたって(笑)。「泣けるよねえ」って。

 先輩は、最初のミニアルバムからず~っとLiSAの曲を書き続けて、一緒にLiSAを作ってきた人だから。ほんとに、一緒に戦ってきた仲間ですよね。そして、“best day, best way”でLiSAという責任をわたしに背負わせて(笑)、導いてきた人なので、乗り移ってるんじゃないかなあって思います。

――けっこうハッとする言葉が歌詞の中にあって。《悲しかったり 傷つけたり ずっとこんなことばかりかな》っていう冒頭のところとか。やっぱり傷つくこともたくさんあるっていう。だけど何のために歌を歌いたいのか、歌わなきゃいけないのか、続けていきたいのか、その先につながる想いが、歌詞にちゃんと入ってるわけで。

LiSA:そうですね。“Catch”まではとにかくひたすら強い自分になりたくて、そういう歌詞を書いたり、強い自分としてライブをしたいと思ってたんですけど、最初の武道館から少しずつ自分の人間らしいところがボロボロ出始めてしまって。自分で自分の悪いところを受け入れられずにいたけど、みんながそれを受け入れてくれて、そこも含めて音楽に落とし込めるようになってきたからこそ、“Believe in ourselves”できちんと言葉にして歌えるようになったんだと思います。

――もうひとつ印象的だったフレーズが、《一緒に作り上げた景色の向こう側》で。「一緒に作り上げる景色」の話はそれこそ過去に何度も歌詞の中で出てきたけど、これからは向こう側を見るために進んでいく、それがLiSAとしての覚悟なんだなって思ったんですけども。

LiSA:そうですね。ほんとにこの“Believe in ourselves”は、みんなと一緒に歌を歌っていく、LiSAという役目をきちんとやるっていう、覚悟を決めた歌です。ずーっと思ってたことがあって――人の好きと自分の好きって、度合いが違うじゃないですか。たとえば「LiSAのことをいっぱい考えてるよ」って言われたとして、「いや、絶対わたしのほうが考えてるよ」って思っちゃうんですよ。それに、わからない人にとっては、“Believe in ourselves”も普通の歌ですよね。でも、わかってくれる人がいることのほうが奇跡で。そう考えたら、自分と人の好きが違っていて当然だなあ、と思って。自分のことは自分が一番考えてるし、わかってる。他の人がわからないなんて当然じゃん、だってわたしじゃないんだもんって思う。だけどその中で、わかってくれる人がいることがすごく大切なんだなって思います。

――確かに、理解者であろうとしてくれる人がいたとしても、結局それは他人だから、100パーセント理解することは絶対にできない。それは真理ですね。

LiSA:うん、そう。最近すごく好きでこの言葉を使うんですけど、みんなが好きでい続ける努力をしてくれてるんです。だからわたしも、愛してもらえるように努力をしなくちゃって思う。

――いや、でもどうなんだろう。実際、そんな努力したことないんだけど(笑)。

LiSA:(笑)。

――だって、アルバムを聴いたり、ライブを観て、「今回つまらなかったな」って思ったことが一回もないし。毎回新しいことをやっていると思うし、受け取る人のことをすごく考えてることが伝わらなかったことがない。だから自分は努力をしたことがないし、ファンの子たちもそうなんじゃないかな。

LiSA:それはすごく嬉しいです。やっぱり、「何ひとつ手を抜いてないぞ」っていう自信があるし、自分のエゴだけでやってるつもりもまったくないし、みんなに楽しんでほしいなっていう気持ち、ただそれだけでやってるから。みんなが「楽しむぞ」っていう気持ちで来てくれるから、わたしが楽しく考えた作戦も全部楽しんでくれる。だから、「楽しかった」って思ってくれる人がいっぱいいるんだなって思います。

――テーマ9「『-Day-』『-Way-』には入っていないけど、実は入れたかった!な1曲」。これはもう山のようにあるんだろうけど、1曲選ぶとしたら“DOCTOR”なんだ(笑)。

LiSA:あはは。今回ベストに入ってる曲って、ライブとアニメの2本柱だと思っていて。その中で、ライブ軸でいうと、みんなで楽しめたり、自分のメッセージや生き様みたいなものがライブに入ってるとして、わたしが作ってきたものの中で足りないものは何かっていったら、やっぱりエロなんですよ(笑)。

――ははは。

LiSA:LiSAに足りないものは、エロなんです(笑)。で、入れるとしたらやっぱり“DOCTOR”。

――長年見てきて、ずっとLiSAの音楽が好きではあるけど、正直エロを感じたことはほぼない(笑)。

LiSA:ひどい(笑)!! めっちゃ頑張ってるのに!

――“DOCTOR”といえば、やっぱり2015年12月の幕張メッセで――。

LiSA:(笑)やらかしましたからね。

――今思えば、「そんなに自分の中でエロを求めてたのか」っていう(笑)。

LiSA:(笑)なんか、昔は女性であることがすごくイヤだったんです。でも、女性であるからこそできる強みもいろいろあるなあ、と今は思っていて。それってやっぱり特権だし、性別って一番大事な特徴だなって思うし。女性がポールダンスとかしてるのを見ても、美しいなあって思うし、そういうポジションのエロです。イヤらしさじゃなくて、カッコよさのエロですね。

――テーマ10「全曲好きなのは前提で、それでもあえて一番思い入れのある曲を選ぶなら?」、ここで“ジェットロケット”が登場しましたね。

LiSA:やっぱり、“ジェットロケット”はどうしてもベストに入れなきゃって思って。1stアルバムの中の1曲ですけど、“ベスデイ”を作らせてくれたきっかけも“ジェット”なので、この人に顔立てしなければ『LiSA BEST-Day-』『LiSA BEST-Way-』っていうアルバムは作れないなって思いました。みんなと一緒に歌う歌、みんなと一緒に作っている景色を見せてくれたのが“ジェットロケット”だし、みんなが自分の曲だって思って歌ってくれてたのが“ジェットロケット”で、それがすごく嬉しくて。そこから、“ベスデイ”が生まれました。

――つながってますねえ。

LiSA:つながってますね。ウェイですね(笑)。

――ベストアルバムの収録曲で、衝撃を受けた新曲があって。“WiLL~無色透明~”です。

LiSA:いやあ、“WiLL”はね、物語も含めて歴史が深いです。根が深いですね。SPEEDのプロデューサー、伊秩(弘将)さんが作ってくれてるっていうこともあって――自分に歌う夢を与えてくれた人は、伊秩さんだと思っていて。それはSPEEDがいたからなんですけど。で、LiSAの役割を与えてくれたのは、先輩だと思ってます。だからそのふたりに新曲を書いてもらいました。“WiLL”は、自分の歴史の中で伊秩さんを通らなければ――神に会わなければ、ほんとのシンガーになったとは言えないわ、みたいな(笑)。“Believe in myself”以前に自分が憧れていたものに、きちんと触れたかったんですね。

――なるほど。文字通り“無色透明”そのものだった頃も含めての物語であると。

LiSA:そうそう。東京に出てくるときの自分が今、夢の上に立っていて、憧れの人と仕事をして、一緒に曲を作っている。自分たちが作ってきた歴史があって、その先の未来にこんなこともあったぞっていう。

――“無色透明”って相反するふたつの意味があるんだなあ、と思って。これって、今はまるで無色透明ではない、っていう裏返しでもあるんですよね。いろんな人が色を与えてくれた、だから今この歌が歌えるんだよっていう話で。

LiSA:いや、そのとおりです。うん、そうですね。

――ベスト盤って、どうしても総括感が出るものじゃないですか。だけどこのアルバムに収められた新曲たちがそう感じさせない、未来しか感じない作品になっていて。新曲たちがさらにLiSAを前に進めていってくれるし、本人もそういう確信があるのではないかなあ、と思うんですけど。

LiSA:はい。なんか、ベストアルバムって――それこそ意味深なときに出したりするじゃないですか(笑)。でも、こうしてひとつ宝箱がまた増えて。新曲として“Rising”みたいな曲を入れてもよかったけど、それはシングルでどんどん進化したものを作っていけたらいいなって思っていて。「今の自分のベストはこれだなあ」って思うし、そこに“WiLL”が入ることによって、今までつながってきた道のりをきちんと通ったおいしい宝箱、いい宝箱ができたなあって思います。

取材・文=清水大輔  撮影=CHITO YOSHIDA(AvGvST)
スタイリング=久芳俊夫 ヘアメイク=田端千夏