国会議員は法案を読んでいない?『日本が売られる』堤未果に、日本の未来を聞いた!

社会

2019/1/11

――日本政府が企業に忖度して国の資産を売り飛ばすために暴走していることはよくわかりました。その流れを食い止めるために、私たちにできることはあるのでしょうか。

堤未果氏(以下、堤) まず報道されている情報をしっかり見極める事が大事です。そのためにはまずその構造を知る事。日本には記者クラブというのがあって、言ってみれば政府から情報をもらいやすい関係を維持している訳ですね。政府と仲良くしなきゃいけないので、政府にとって都合が悪いニュースはなかなか大きく報道しにくい。こういう構造なんだ、とわかっていればニュースを冷静に見る事ができますよね。

 大きなスキャンダルの陰でひっそり報道されているような重大な法改正のニュースは、そうした構造やパターンを意識していれば段々見逃さなくなるでしょう。気づいたら自らブログやSNSなどでできるだけ拡散する。ヘッドラインニュースだけ目で追っていると、新しい情報がどんどん上書きされて全体像が見えなくなりがちですから、私の本でまず全体像をつかんでおくのも良いですね。ニュースの受け止め方が変わって、流されず立ち止まって見ることができるようになると思いますよ。

――『日本が売られる』(幻冬舎)には、水道を民営化したフランスで、水道料金の高騰とサービス悪化への不満が爆発して再公営化した話など、今こそ日本人が知るべき海外の事例もあります。

 第3章「売られたものは取り返せ」に書きましたが、すべてがマネーゲームの競争社会になっても幸せにはなれないと気がついている人は、世界中にたくさんいるんですね。食の安全はまったく信用ならないと思っている人が多い中国でさえも、遺伝子組み換えはいらないと言っているほどですから。

 国際通貨基金(IMF)も途上国を助ける人道的金融機関だというイメージを持つ人が多いですが、実は途上国に融資する代わりに水道やガスのインフラを民営化することを条件にしてきています。IMFにお金を借りる代わりに構造改革をさせられた多くの国々は、国内インフラが外貨に切り売りされ、さらなる不況や貧富の差の拡大を招きました。

 ですから、日本政府は国民の味方で悪いことはしないはず、という思い込みはもちろん、間違った先入観や固定観念が、私の本を読むとかなり破壊されると思います(笑)。本は、そのように正しい情報を知ることができる最良の情報源で、今世の中で何が起きているか知ることができますし、私たちは何をすべきか考える選択肢が増えます。反対に、SNSで自分が興味ある情報ばかり見ていると、考える力も選択肢も奪われる。

 だから本屋さんに行くのは、すごく大事なことだと思ます。

――政府は、種子法を廃止する法律と改正水道法を可決させましたが、地方では自治体が独自の条例を作って住民を守っているケースが増えていますね。そういうことができることも、知らない人が多いと思います。

 地方は国が守ってくれないことを知っているんですよ。私も各地で講演すると、「どうすればいいんでしょうか?」という質問をよく受けるのですが、「知事や市長にお願いして条例を作ってもらってください」とお話ししています。村社会が残っている地域などでは団結力が強くて、動き出すと早い。正しい情報収集と条例を作るための段階さえわかれば、日本人は小さく団結して一気に動くと思いますね。

――自分の地元の議員さんたちにも、この本を読んでもらいたいです。

 ぜひどうそ! 国会議員の先生たちもたくさん読んでくださっているんですよ。自分が所属している委員会以外の情報は追いきれないため、この本が便利だと仰るんです。つまり、多くの議員さんがよくわからないまま国会で賛成している法案が沢山あるということです。政策秘書一人では少なすぎますよ。アメリカは議員1人につき平均22人秘書がいますから、法案を読むのも手伝ってもらえる。日本の国会議員はすべての法案を読めません。

 で、法案を通したい官僚がレクチャーにくるわけです。そうなると、当たり前ですけど法案を通すために良いことしか言いませんから、みんな納得しちゃう。

――農薬や遺伝子組み換え問題はいかがでしょうか。

 農薬はすごく難しいんです。発達障害や自閉症やアレルギー疾患の原因が農薬だという声があっても、科学的に証明するのが難しいからです。でもアメリカのママさんたちは、証明はできないけど何を食べるか選ぶ権利はあると、農薬や遺伝子組み換え作物を使用した食品の表示の義務づけをさせました。また、グリホサート系除草剤でがんを発症した患者が、メーカーのバイエル社(モンサント社)を相手取って裁判を起こし、2億9000万ドル(320億円)の賠償金の支払いを命じる判決が出ました。(その後、賠償金は7800万ドルまで減額されたが、モンサントは上訴する予定)。この判決が出る前、モンサントはすでにおよそ8000件の(農薬被害に関する)訴訟を抱えていたと報じられており、判決を機に今後ますます訴訟が増えるだろうと言われています。

 実は日本でもグリホサート禁止条例を実現した町や給食を有機に変えた市など小さい単位でいろいろ動きが出てきています。国の法律を変えようと思うよりも、身近なところから変えていくほうが早いですね。

――アメリカのママさんたちは「FBI並みの調査力」だと書いてあって、唸りました。

 アメリカのママさんたちも、連邦政府はすぐには変えられないから、自分たちが住んでいる地区だけでも子どもが健やかに笑顔で暮らせるように活動をはじめて条例を作ってもらっています。日本人もその戦法でいけばいい。

 最近は、農薬使用禁止を求めているアメリカのママさんたちが作った団体の日本支部もできました。日本でも、グリホサートの体内残留値を調べる測定所を作ろうという動きも出てきています。やはりデータで証明することが一番説得力がありますから。

 そういうことの積み重ねが、やがて大きな変化につながっていきますね。

――前編で国民健康保険についての問題も伺いましたが、これはさすがに自治体でも変えられないのでは?

 大丈夫です。国はいま財源がないので、どんどん自治体に押しつけているんです。ということは裏を返すと、自治体に権限が委ねられているわけですから。本当に困っている人の保険料は上げないでくださいとか、住民からの要望がたくさんくれば実現できないことはない。要望の伝え方は手紙でもFAXでもいいですけど、一番効果的なのは区長や市長や知事に直接会いに行って話すことですね。国が暴走していても、自治体単位でそういう風に変えていくことはいくらでもできますよ。

――ぜひ次は、売られた日本を取り戻すための解決策や事例を書いていただきたいです。続編も期待しています。

 実は想像以上にその要望が全国から寄せられているんです。今回、書ききれなかった話もまだまだたくさんあるので、続編もぜひ! という声が。資料が多すぎるので体力勝負ではありますが…大丈夫かな(笑)。

【前編】金持ち以外の国民は使い捨て!? 『日本が売られる』堤未果に聞いた、日本の未来は?

取材・文=樺山美夏 撮影=内海裕之