公開直前! みんなで語ろう、映画『このすば』②――ダクネス役・茅野愛衣編

マンガ・アニメ

2019/8/25

『映画 この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説』 8月30日(金)公開 (C)2019 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/映画このすば製作委員会

『この素晴らしい世界に祝福を!』(以下『このすば』)が、映画になって帰ってきた! 8月30日(金)の公開に先駆けて、ダ・ヴィンチニュースではメインキャスト5名に登場してもらい、それぞれの視点で『このすば』への愛をディープに、熱く語り倒すインタビューを敢行! 原作小説は累計発行部数が850万部を突破し、アニメも絶好調。キャスト・スタッフが一丸となって生み出す、最高に笑えて、観ていていつの間にか元気が出てしまう『このすば』はなぜ素晴らしいのか、徹底的に迫ってみたい。

 第2弾に登場してくれたのは、ダクネス役の茅野愛衣。超がつくほどのドM、だけど実は育ちがよいお嬢様にして、パーティー随一の常識人であり、仲間想いなダクネスを、どのように体現しているのか?――というテーマに始まり、『このすば』が愛される理由を楽しく分析してもらった。ダクネスは、『このすば』に熱い想いを注ぐ茅野愛衣が演じるからこそ、最高のキャラクターになった。その事実が、言葉の端々から伝わってくるインタビューになったと思う。

映画版の収録が終わってから、『このすば』ロスがひどいです(笑)

──ダクネスは象徴的ですけど、茅野さんが関わる作品や役柄って、本当に面白いものが多いですよね。

茅野:確かに。特に『このすば』に関しては、わりとチャレンジというか、いろいろ幅を広げてもらった役だと思います。オーディションを受けるときも、事務所の方から「ドMの役ですけど、受けますか?」って言われて(笑)。

──(笑)。

茅野:でも、台本を見たら筋の通ったドMだったので、面白そうだな、と(笑)。

──ははは。なるほど。

茅野:お話自体も面白そうだったので、「受けたいです」って言って。けっこう、のどに負担がかかる役柄ではあったので、一発録りで録ってテープをお送りしたんですけど、それをいいと言っていただけて、役が決まって、関わることができて。こんなに長いこと演じるキャラクターになるとは夢にも思ってなかったので、「ついに映画版までついに来た!」っていう感じがします。パーティーメンバーのみんなが愛おしいし、役のこともどんどん好きになっちゃってるので、映画版の収録が終わってから『このすば』ロスがひどいです(笑)。

──すでにロス(笑)。

茅野:まだ、できあがったものを観てもいないのにロス、みたいな。今回は2日間かけて収録したんですけど、1日目が終わった時点で、みんな「『早い! あと一日でアフレコが終わっちゃう!』ってなっていて。それくらい、みんなが「待ってました!」って思える作品だし、それだけ喜びや楽しいことが詰まっているので、収録が終わってしまうと、より寂しさが増すというか(笑)。みんなで埋め合わないとどうしたらいいのかわからないので、「とにかくみんなシュワシュワを飲もう!」みたいな(笑)。

「公開されたらみんなで観に行きたいね」っていう話はしてるんですけど。それが終わったらいよいよ寂しさが来ますね。ダクネスとの付き合いも長くなってきて、『このすば』のゲームも録ったりしてたので、けっこう長いこと演じてるんですよね。そう、ゲームだと難しいところがあって、ダクネスって剣が当たらない設定なんですよ。しかもやられると喜んじゃうので、ダメージボイスにならない(笑)。

──(笑)確かに。

茅野:台本には「ああ!」って書いてあるけど、これは喜んでいる「ああ!」なんだろうな、みたいな(笑)。ダメージをくらっても死なないのに、攻撃は当たらないから、何にもならないんですよね。暁(なつめ)先生が考えたキャラクターだから、わたしが謝るのは筋違いなんですけど、ゲームでは「申し訳ありません」みたいな気持ちで収録してます(笑)。

──(笑)ゲームでの使い勝手の悪さも、ダクネスの愛すべき部分になってますよね。

茅野:そうなんですよね。ダクネスって、見た目はすごく美しいし、カッコいいし、かわいいところもたくさんあるのに、なんかダメっていう(笑)。でも、そこが人間味があって、いいなって思います。『このすば』って、異世界ものとは思えないほどの昭和感というか、古き良き、みたいな感じがするところが、すごく不思議で。なんか、人情にあふれてる感じがするんですよね。たぶん、お客さんにとってもどこか懐かしいような、ふるさとを思い出す感じになるのかな、という気がします。

──ダクネスはほんとにいいキャラだし、『このすば』自体も奇跡的な作品だなって観ていて思うんですよ。アニメは総合力ってよく言いますけど、原作と映像に力がありつつ、キャストさんの力によってパワーがとんでもなく増している稀有な作品、幸せな作品だな、と思います。

茅野:関われているわたしたちが、たぶん一番幸せ者だと思います。暁先生が作った船に監督の金崎さんが船長で乗っていて、みんなで「行くぞ!」って冒険に出てる感覚です。チームで一丸となっている感覚が、こんなにも目に見えて作品に出ることって、なかなかないと思うんですよね。同じモチベーションで、みんな同じ方向を向けているはほんとにすごいことだと思うし、こういう楽しい冒険はずっと続いたらいいなって思います。

──そうですね。しかも、なぜだか観てる側も一丸となってしまうところがすごいなあ、と。

茅野:確かに。やっぱり、身近な感じがあるんですかね。キャラクターたちとの距離が近い、というか。でも、距離が近いといっても、だいぶぶっとんだキャラクターたちなので、それがまた不思議なんですよね。だって、日常アニメっていう感じではないじゃないですか(笑)。なんだろう、欠点がいっぱい見えるところがいいのかしら?

──それは絶対ありますよね。欠けてるからこそ愛すべきヤツら、みたいな。

茅野:女神だって言うけどシュワシュワ飲んでグデグデ、みたいなところとか。このパーティーのメンバーって、一言じゃ表すことができないような人しかいないので(笑)。しかも、それはメンバーだけじゃなくて、出てくるキャラクターが全員そうっていうところがすごいことだなあ、と思っていて。今回の映画版に関しても、紅魔の里の人たちなんてツッコミどころ満載なんですよ。でも、ぶっとんでるのになぜこんなにも近くに感じるのか、というと、ちょっと弱いところもさらけ出してくれて、上っ面じゃなくて、まるごと心と心でぶつかってるところが見られるので、みんなそこを楽しんでもらえてるのかなあ、みたいな感じはちょっとあります。

──確かに。

茅野:みんな、体当たりじゃないですか。アフレコも、だいぶ体当たりなんですけど(笑)。「パワーで押し切れ!」みたいなところもたまにあったりするし、稀に見る熱量です。特にカズマは、映画版もとにかくセリフ量が多かったんですけど、(福島)潤さんがもう、へなへなになっちゃうんじゃないかっていうくらい、ハードな2日間だったと思います。でも、みんなキャラクターへの愛が強いので、妥協がないんですよね。「このセリフで終わってもいいや!」みたいな気持ちでやってるんだと思います。

──カズマって、カスな面があると同時に、一生懸命の象徴みたいなキャラクターですよね。

茅野:そうなんです。あと、お色気的なシーンもいっぱいあるんですけど、不思議なことに、そこが変にいやらしくならないんですよね。今回も――あまり深くは語れないんですけど、ボインに翻弄されるシーンがあって、そこのアドリブが神がかってるんですよ。アフレコ現場で笑いを堪えるのが、ほんとにつらくて。ダクネス的には、笑いを堪えるのもご褒美になると思いますけど(笑)。笑いで腹筋が割れるんじゃないかっていうくらい、笑わせてくれるんですよ。本当に、笑って笑って、なアフレコでした。今回は、めぐみんの故郷である紅魔の里のお話でもあって、じんわりと心にしみいるようなシーンもあったりするので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。

──カズマの話で思ったんですけど、『このすば』ってキャラクターがちょいちょいひどい目に遭うじゃないですか。調子に乗る→ひどい目に遭う、というサイクルが確立されていて。ひどい目といっても、笑えるレベルのひどさで。それって、観てる側は超楽しいんですよね。

茅野:わかります。なんでしょう、嫌悪感を抱かせない感じがあります。あと、回収が早いんですよね。ものすごいドヤ顔だったのに、すぐに落とされたりとか(笑)。

──(笑)それが、さっき茅野さんが言ってた昭和感につながるのかもしれないですね。昭和のコメディ感があるというか。

茅野:確かに。だから「劇団『このすば』感」があるのかもしれないです。みんなで壮大なコントをやっているかのような(笑)。もちろん、暁先生と、金崎監督と、上江洲(誠)さん、皆さんが考えたものがいい感じに化学反応を起こしていて――わたしたちはその3人の掌の上で、弄ばれているのかもしれないですね。「わあーっ」ってなりながら(笑)。ほんとに、『このすば』ってすごいなって思います。2期の制作を決めたのが、1期3話のキャベツが決め手だったっていう話もすごく面白くて。キャベツで手応えを感じて2期が生まれ、2期から映画版が生まれて。

 1期のときから、みんなテンションは高かったんですよ。アフレコでも「面白いものになるね」って言いながら、みんなで楽しんで作ってたんですけど、想像以上にファンの方に喜んでもらえていることがわかって、何かの形でお返ししたいなって思います。『このすば』って、応援してくださる方たちのあたたかさを感じることができる作品だし、何度でもみんなに会いたいと思わせてくれるんですね。映画版は、舞台挨拶でいろんな方にお会いする機会もあると思うので、感謝を伝えに行きたいな、と思います。

──『このすば』を観ている人みんながダクネスを大好きだと思いますけど、演じている茅野さんだけが知っているダクネスのいいところ、愛すべきところってなんだと思いますか。

茅野:ダクネスって、ドMがフィーチャーされがちなんですけど、実は一番純粋で。わたしは、彼女は心にまったく穢れがないと思ってるんですよね。セリフとしては、「穢れがないなんてこと、ひとつもないじゃない!」っていうくらい、けっこうすごいことを言ってますけど(笑)。でも、そのセリフで言っていることすらも、彼女はただの好奇心で動いていて、子どものように純粋に楽しんでいるきれいな心の持ち主なんじゃないかなって、わたしは感じています。生まれも、けっこうお嬢様だったりしますし。

 たとえば、作品の中で「汁物をズズズッて音を立てて飲んでください」って言われたとしたら、ダクネスではそれはあまりやりたくなくて。彼女の本質はお嬢様であり、生まれ育った環境を細かい所作で見せられたらいいなあ、と感じているので、声のお芝居でできることに関しては、できるだけダクネスの育ちや置かれている立場を感じさせられるようにしたいです。ただのドMなクルセイダーにはしたくない、というか(笑)。わたし個人としては、ダクネスの本質の部分を大切にしたいなあ、と思ってます。

──ドMであると同時にピュアだし、実はダクネスってめちゃくちゃ常識人ですよね。

茅野:そうなんですよね。しかも、人のことをすごく思いやれるんです。2期でカズマが死刑になりそうだったときも、仲間を守るため、カズマのために動いたのはダクネスですし。みんなの足を引っ張ることも多々あるんですけど、みんなのお母さんみたいな存在になったりすることもあるんですね。

またみんなで暁先生の船に乗って、楽しい航海ができたら

──今回の映画は、物語全体として『このすば』が好きな人にとっては「これこれ!」という感じになってますけども。

茅野:そうだと思います。みんなが待ち望んでる『このすば』だと思います。映画版だから特別なことがある、という感じもあまりしなくて、そのとっつきやすさが『このすば』のいいところなのかな、と思うので、肩肘張らずに観に来てほしいです。ただ、TVシリーズよりもさらにパワーアップした感じは、劇場で観られると思います。

──映画ならではのド派手さが映像にも反映されそうですね。

茅野:そうですね。1期と2期のラストもだいぶド派手感はありましたけど、今回はそれを上回る感じになると思います。ほんとに、何度波が来るかわからないので、わりと心してかからないと、腹筋が割れます(笑)。ダクネスみたいになっちゃうので、ちょっと気をつけてください。

──(笑)ダクネスも、最初のシーンからわりとらしさが全開ですよね。

茅野:はい(笑)。「ああ、これこれ」っていうお馴染みのシーンや、カッコいいシーンというか――壁になってるだけかもしれないけど(笑)。いつも、ダクネスに関しては、「活躍?」とか「?」をつけちゃいますね。あとは、今回もみんなでたくさんアドリブを入れてます。1期、2期も多かったですけど、今回もみんなの攻めの姿勢は変わらず。たくさん入れた分、たくさん削られているかも(笑)。

──(笑)それでも、入れる。

茅野:もう、ないよりはあったほうがいいっていう(笑)。基本、画面に映ってないときに入れたりしてたんですけど、「キャラクターは画面に映っていて、しゃべっていなくても入れる」という容赦ないことが起きたりしていて。でも、面白かったりすると、それを採用していただけて、あとから「じゃあ、口を動かしときます」ってやってくださるので、そこもお馴染みのメンバーだからこそできることだなって思います。

──アニメ作品の作り方として、相当珍しいですよね。アドリブを入れること自体はちょくちょくあることかもしれないけど、みんなしてアグレッシブに入れることはなかなかないのでは?

茅野:なかなかないと思います。確かに『このすば』ならでは、ですね。それこそ途中に入る、「このすばっ!」も、セリフからの流れで言ったりするので、それも相当珍しいと思います。2期で、バニルとの戦いのときにバニルに体を乗っ取られてしまって、ダクネスが「おかまいなく」って言ってるシーンも、「えっ、今なんて言った?」って言われて、もう1回「おかまいなく」って言ってるんですけど、あそこもアドリブなんですよ。1回で「このすばっ!」って入れてもよかったんですけど、せっかくだったらもう1回言っとこうかな、みたいな。よく、大事なことは2回言うって言うじゃないですか(笑)。

──(笑)今回の映画の収録で、「この人とこの人の掛け合いは見ていてヤバかった!」と感じたシーンについて教えてください。

茅野:個人的には、カズマとシルビアですかね(笑)。なんでしょう、今までに見たことがないクライマックスだと思うんですよ。あんなクライマックス、たぶんないと思う(笑)。

──ははは。

茅野:笑ったらいいのか、応援したらいいのか、感動したらいいのか、もうわからない(笑)。冷静になったら「何を見せられているんだ」って思ってしまうかもしれないですけど、悔しいくらい面白くて!

──絶妙にネタバレを回避した表現、ありがとうございます(笑)。

茅野:相当、言葉選んでますよ(笑)。観たら「これかあーっ!」って絶対なると思います。台本を読んだときは衝撃でしたし、絵で見たときもかなり衝撃的でした。たぶん、皆さん口を開けて観てしまうんじゃないかなって思います。お客さんが映画を観てる姿を撮っていてほしいですよね。よく、そういうCMあるじゃないですか。「全米が、口を開けた」みたいな(笑)。

──ははは。お客さんのリアクションまで含めて作品になる、という。

茅野:うん。日本の映画館って、「笑っちゃいけない」みたいな感じがありますけど、『このすば』に関しては、我慢しないで笑ってほしい気持ちがありますね。笑わないと、つらいと思うんですよ。ほんとに、アフレコ現場はつらかったので。いやあ~、腹筋おかしくなるくらい笑いましたからね。しかもヤマがあるので、うまいこと負荷がかかるんですよ。より効いてる気がします。『このすば』を観に行くほうが、下手に筋トレするより絶対いいと思います(笑)。

──(笑)ちなみに、茅野さん自身が『このすば』の世界にいるとしたら、どんなスキルを身につけて、どんなクラスにつきたいと思いますか?

茅野:悩みますけど、カズマのパーティーがずっと始まりの街にいるので、できれば始まりの街にいたいですね。そうなると、あまり強くなりすぎるとミツルギさんみたいに別のところに行っちゃうかもしれないので、ポジション的には荒くれ者みたいな感じでいたいです。荒くれ者って、職人さんだったと思うんですけど、やっぱり手に職は大切だと思うので。強くなりすぎないように、たとえ刃物を使ったとしても、調理をするほうの刃物がいいですね。ギルドのキッチンとかで働けたほうが、みんなの姿を見られて楽しいかもしれないですし。

──とにかく、始まりの町にい続けたい、と。

茅野:それこそ、あそこにいたら、見たい夢もサキュバスのお姉さんたちに見せてもらえるわけじゃないですか。楽しい街だと思うんですよ。適度にシュワシュワが飲めて、でもおいしそうなのでジャイアントトードくらいは倒せるようにはなりたいです。

──希望がめちゃくちゃ具体的ですね(笑)。

茅野:あはは。作中だと、ジャイアントトードを食べながらシュワシュワを飲むのがすごく幸せな図、というイメージがあるので。あれはやりたいです。

──クラスとかスキルの話ではなく、居住希望者(笑)。

茅野:始まりの街に住む! それでお願いします(笑)。何か訊かれたら同じことだけを返す役割でも全然いいですし、いつもギルドに行くとシュワシュワを飲みながらジャイアントトードを食べてるお姉さん、とかでもいいです(笑)。

──(笑)では最後に、映画版を収録してみて改めて感じた『このすば』という作品への想いについて教えてください。

茅野:やっぱり、作ってるみんながほんとに家族だなって思えるぐらい、1期、2期、映画版とやってきて、よりキャラクターへの愛も深まりつつ、作っている皆さんへの愛も深まりました。カズマたちはまだまだ冒険していくんだって思うと──原作は続いていますし──わたしたちも歩みを止めてしまっては、キャラクターや作品に申し訳ないので、できればまたみんなで暁先生の船に乗って、楽しい航海ができたらいいなって思います。まだまだ原作にも観たいお話がたくさんあると思うので、わたしたちは「いつでも帰ってきたい」という気持ちで、『このすば』ロスに耐えていようかな、と思います(笑)。

 皆さまの応援があれば、またこうやってお会いできる機会もあるかと思いますので、ぜひこれからも応援していただいて、『このすば』への愛を忘れずにいてもらえたら嬉しいです。たぶん、暁先生の船は大きいので、みんな乗れると思います(笑)。あまり寂しくならずに、また会えそうな予感で終わっていたいなって思います。楽しいことがあって、しょんぼりして、が続いている作品なので、それが終わることなく、ずっと続いてくれたら嬉しいです。

『映画 この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説』公式サイト

取材・文=清水大輔