松本穂香「人生の大切なことは、ただ誰かを、何かを愛すればいい。観てくださる方も、純粋に楽しんでそれを感じていただけたら」
公開日:2019/9/8
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、主演映画『おいしい家族』がまもなく公開される松本穂香さん。ふくだももこ監督との意外な共通点や映画の撮影現場について聞いた。
松本穂香さんが本誌のために選んでくれたのは、西加奈子さんの代表作『サラバ!』。松本さんは、主演映画『おいしい家族』の公開を控えているが、その監督を務めたふくだももこさんも、西さんの大ファンだという。
「まったく知らなくて、嬉しい偶然でした。ふくだ監督は小説も書かれていて、西さんのことをとても尊敬しているんだそうです。実は今回の映画のために、西さんがわざわざ推薦コメントを寄せてくださっていて」
そのコメントは――。
「人間の美しさではなく、人間の歪さを肯定する作品です。」
「本当に素敵な言葉。絶対に西さんじゃないと出てこないですよね。心からお礼を言いたいです」
ところで今回の映画は、伊豆諸島の新島、そして式根島の入り江が撮影場所となった。松本さん演じる橙花の実家も、島の空き家が使われた。
「これもまた偶然なんですが、携帯を持っていくのを忘れちゃったんですね。それで返って、余計なことを考えずにすみました。人もいなくてコンビニもなくて、一切気を逸らされることがない。空き時間は本を読んだり、書き物をしたり。完全に撮影に集中できたと思います」
映画の中で一番好きなのは、ラスト近く、板尾創路さん演じるお父さんと台所で二人、言葉を交わすシーンだ。
「台所は、橙花にとって亡くなったお母さんの思い出が一番詰まったところだから、どうしても入れなかった。でもそこで、初めて本心からお父さんと語りあう。すごく親子だなあ、というシーンだと思います。私の一番好きなセリフもここで登場します」
完成した作品を観ての松本さん自身の感想は?
「自分のダメなところが見えてしまったりするんですが(笑)。でも周りの役者さん、皆さん本当に可愛らしいんです。なんかそれが、この映画の魅力を象徴しているように思えて。人生の大切なことはとてもシンプル。ただ誰かを、何かを愛すればいい。観てくださる方も、純粋に楽しんでそれを感じていただけたらと思います」
(取材・文:松井美緒 写真:山口宏之)
映画『おいしい家族』
監督・脚本:ふくだももこ 出演:松本穂香、板尾創路、浜野謙太、笠松 将、モトーラ世理奈、三河悠冴、栁 俊太郎 配給:日活 9月20日(金)全国ロードショー
●東京の生活に疲れ気味の橙花は、母の三回忌のため離島の実家へと帰ってきた。なんとそこでは父が亡き母の服を着て、おいしいごはんを作っていた! しかも女子高生の子どもがいる中年男・和生と家族になると言うのだ。
(c)2019「おいしい家族」製作委員会