災害直後にかける言葉で家族の命が危険になることも!? ついやってしまう災害時のNG行動とは…

暮らし

公開日:2021/1/19

 災害に直面すると気が動転して、知らず知らずのうちにNG行動を取ってしまいがちです。自分や家族の命を守れるかどうかは、災害時に正しい行動が取れるかどうかにかかっています。国際災害レスキューナースとして多くの被災地の現場を経験し、防災術を広める活動を行っている辻直美さんに災害時にやりがちなNG行動を伺いました。

「災害直後の声がけで、家族の命を危険にさらしてしまう可能性もあります。また、災害時、真っ先に確認したいのは大切な人の安否。繋がるまで何度も電話をかけてしまうのはNGです。どのように行動するとより安全なのか、具体的なOK行動を解説します」

NG行動1 相手の状況を確認する前に「こちらに来てほしい」と捉えられる可能性のある言葉を発する

「例えば、自宅にいるときに地震が起きたとします。棚が倒れ、物が落ちて足の踏み場がなくなるほどの大きな地震で、家族と別々の部屋にいて安否が分からない場合、あなたはどうしますか?

『◯◯ちゃん大丈夫? わたしは無事だよ! リビングにいる!』と言って、“わたしはここにいます”と主張してしまう方が多いのではないでしょうか。実はこれが、二次被害を招くかもしれない危険な行為なんです。

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 特に子どもは、親に『ママはここにいるよ!』と言われると、もしギリギリのバランスで家具が崩れ落ちずに済んでいるような危険な状況でも、親のいる部屋に移動しようと頑張ってしまいます。非常時は子どもに冷静な判断はできません。その場に留まらせる方が安全な場合があります。『そこにいてね』『行くから待っていてね』という言い方に変えれば、自分の無事を伝えつつ、相手が状況を顧みずに動いてしまうリスクを避けることができます。親は日常生活でも何かと子どもに『おいで』と言いがち。日常生活から子どものところに行く癖をつけておくと非常時にも対応できるようになりますよ。

 大人同士の場合も、“わたしはここにいます”と主張することが『こちらに来てほしい』という意味に捉えられてしまうこともあります。相手の姿が見えないと、不安でつい“ここにいるよ”と言ってしまいそうになりますが、一旦深呼吸をして、冷静になりましょう。大人同士であっても、もしかすると相手の方が危険な状況に置かれているかもしれません。状況が分からないまま相手に動くことを促す言葉は言わない方がベターです」

NG行動2 声を聞こうと何度も電話をかける

「家族や恋人と離れているときに被災した場合、安否を心配するのは当然です。しかし、連絡が取れないからといって、焦って何度も電話をかけることはやめましょう。みんなが同じことを考えるので、被災後30分も経たないうちに、被災地の電話回線はパンクし、電波は繋がりにくくなります。ただでさえ精神的に不安定なときです。混線して繋がらないだけかもしれないのに、不安ばかりが膨らみます。スマートフォンの電池がどんどん減って本当に連絡が取れるようになったタイミングで充電切れになってしまう可能性もあります。

 あらかじめ大切な人との連絡の取り方を決めておくと、必要以上に不安にならずに済みますよ。ポイントは、自分の安否を伝えることだけに意識を置くこと。例えば『ワンコールだけ鳴らして切る。それを3回繰り返したら“生きています”というメッセージ』などの合図を決めておきましょう。直接声を聞かなくても安否が分かる手段を作っておくと、着信があっただけでもひとまずは安心できますよ。

 その後、さらに『災害用伝言ダイヤル(171)』(※)にメッセージを入れておきましょう。1分間しか録音できないので、簡潔に3点“無事であること”“今いる場所”“次の行動”に絞ってメッセージを残しましょう。具体的には、『怪我もなく無事です。今は家にいますが、〇△の避難所に移動します。また1時間後にワン切りします』など。“次の行動”を伝えることが特に大切です。少なくともこの先数時間の相手の動向を知れることで相手を安心させることができますし、行動や連絡のすれ違いを防ぐことができる利点があります。もし『次の行動』を伝えていなかったら、家族が無理をして家に帰ってきたのに会えないなどのすれ違いが生じてしまう可能性もあるのです」

※「災害用伝言ダイヤル(171)」…大災害が発生すると設置される伝言板。毎月1日、15日に体験利用できます。

「むやみにSNSを確認するのもやめておいた方がいいでしょう。不安を膨らませないようにする、スマートフォンの充電を取っておく必要があります。残念ながら被災直後のSNSにはデマが溢れ、いいねやリツイートを稼ぐために確かではない情報を語る“にわか専門家”も現れます。災害時の精神が不安定な状況では、人は安心できて、自分に都合のいい情報だけを信じたくなるものです。たとえそれが正しい情報でなくても…。

 また、SNSで発信することで助けを求めるのも控えましょう。思うような反応を得られない場合、よけいに不安な気持ちが大きくなってしまいます。情報収集にSNSを使うなら、まずは情報のソースやツイートの日時を確認するなどのファクトチェックを行い、日ごろからネットリテラシーを磨いておくことも必要です」

取材・文=箕浦 梢



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