おうち勉強がうまくいく方法は実は簡単! 3億回再生のYouTuberに聞く、親子の自己肯定感を上げる自宅学習戦略

暮らし

公開日:2021/3/8

教育YouTuber・葉一さん

「コロナ禍で子どもが自宅学習をがんばっているけど、成績が上がらない」
「子どもの自宅学習を増やしたら、家族全体の生活パターンが窮屈になってきた」

 このように子どもの自宅学習で悩んでいるとしたら、その理由は「勉強法」にあるかもしれません。

 動画の累計再生回数が3億回(2021年3月現在)を超える教育YouTuber・葉一(はいち)さんによるチャンネル『とある男が授業をしてみた』。YouTubeで勉強できる? と侮るべからず。子どもの成績がアップした、不登校で遅れていた授業に追いついた、などの声が相次いでいるそうです。

 本稿では、著書『塾へ行かなくても成績が超アップ! 自宅学習の強化書』(フォレスト出版)も大反響を呼んでいる葉一さんにインタビュー。誰にも強制されないからこそ戦略が必要で、味方につければ“勝手に”成績アップする自宅学習成功の秘訣を聞きました。

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自宅学習がうまくいかない理由は?

教育YouTuber・葉一さん

——自宅学習をがんばっているのに成績が上がらない理由はなんでしょうか?

葉一さん(以下、葉一):今の勉強法が合っていないとか、学習環境が整っていないケースは多いです。この本で紹介している勉強法は、塾講師をしていた時に実践していたものですが、正直に言うと、学校や塾に通っていたとしても自宅学習は何より大事。勉強には「できなかったことができるようになる」「できるようになったら忘れない」の2段階が必要ですが、わずかな授業時間だけでできるようになるわけがないんです。だからこそ、成績アップにつながる自宅学習の戦略をこの本にまとめました。

——戦略を立てることで効率的に成績アップしそうですね。ちなみに、自宅学習に向き不向きはあると思いますか?

葉一:たしかに、ひとりでは勉強が捗らないという子もいますよね。自宅学習の要は、自分で時間をスケジューリングして自分の力で成績を伸ばすこと。つまり、自分をプロデュースする力です。これさえできていれば、塾の自習室やカフェでの学習など、場所がどこであっても構わないと思います。自宅学習を制すると主体性が高まるので、社会人になってからも役に立つと思いますよ。

勉強法を変えれば成績が勝手に伸びていく

教育YouTuber・葉一さん

——本書では「机周りの誘惑物を撤去」など、おうちで集中力を高めるために意外と子どもが実践していない方法も多くて、目からウロコでした。

葉一:以前、なかなか集中できないと悩んでいた中学生の自宅の机を写真に撮って見せてもらったら、アイドルの写真がいっぱい貼ってあったんです。話を聞いてみると、写真を見ると「DVD見たいな」などと思ってしまうと。これでは勉強に集中しにくいですよね。写真を外してもらってからは勉強の習慣ができていましたね。

——何を変えたらもっと効率的に勉強できるのか、子どものタイプによっても変わりそうですね。

葉一:そうですね。中には、勉強の習慣はできているけど時間をかけすぎている子もいます。勉強って量より質なんですよ。以前、平日部活の後に2〜3時間も勉強していた子がいたので、45分に減らすように伝えたら、3時間のうちの無駄な勉強を削るようになって、勉強を効率化するリズムを掴めたことがありました。それからは勝手に成績が伸びていきましたね。真面目な子ほど、勉強に時間をかけやすい傾向があります。

——なるほど。子どもが自分に合った勉強法を見つけて、成績が勝手に伸びていくのは親としてもありがたいです(笑)。

葉一:大人もそうですけど、子どもも何が間違っているのかわからないことが多いので、誰かが助言してあげられるといいですよね。親御さんが子どもの悩みに気づいて助言してもいいし、お子さんがこの本を読んで実践してもいいと思います。読むだけでなく、ぜひ実践してほしいですね。「この方法だと勉強しやすい」「学んだことを忘れないようになった」などの実感がないと、勉強法が身につきにくいので。

——『とある男が授業をしてみた』の使い倒しワザも紹介されていて、本とYouTubeのW学習で効率的に学べそうです。

葉一:YouTubeはもともと、勉強をやりたくない子どもたちのボトムアップをしたくて始めたものなので、基礎レベルを学びたい子にも見てもらえたらと思っています。

 今まで勉強をしていなかった子も、受験や友だちの影響で「そろそろしないとやばい」と思う瞬間がかならず一度はやってくるんですよ。でも、いざやろうと思っても勉強法がわからない。そんな時に活用してもらいたいんです。YouTubeでは授業だけではなく、子どもが勉強で抱えがちな悩みについて話した動画もたくさんそろえています。

——デジタルネイティブの子どもに合わせた勉強法を、どうやって掴んでいるんですか?

葉一:自分の時代の当たり前を疑いながら、「こんなのあり得ない」って思わずにどんどん試しています。最近でいえば、子どもたちから「#study with me」(勉強している動画を流しながら自分も勉強する動画)のリクエストが多かったので試してみたら、ものすごく見られていたんです。今の子どもたちってSNSなどで多くのデジタル上の繋がりを持っていても、拭いきれない孤独感に悩んでいる人も少なくないように感じています。

 YouTubeは無料なので、合わなければやめてもいいですし、勉強法に正解はないのでいろいろな選択肢をひとまず試してみてほしいです。それが、学習環境が大きく変わったコロナ禍で自分に合う勉強法を見つける視点なのかなと思っています。

勉強で自信がつくと自己肯定感アップにも!

——葉一さん自身も勉強で悩んでいた辛い時期があり、恩師とのきっかけを経て受験に成功した経験があるとか。勉強をして良かったと思うことは何ですか?

葉一:やっぱり自信がついたことです。高校3年になってから死に物狂いで勉強して、成果を出したことで自信がついたし、自己肯定感アップにもつながったと思います。その自信は今でも役立っています。あの時がんばって良かったとしみじみ思いますね。

——本書では今の子どもたちの自己肯定感の低さも指摘されていますが。

葉一:子どもたちの声を聞いていると、自分がダメな人間だと劣等感を持ちながら生きている子がすごく多い。SNSで同年代のキラキラしている子と自分を比べる機会が増えたことが関係していると思います。最近のコロナ禍では特に、友だちに会えなくて感情をアウトプットできない分、塞ぎ込みやすいのかもしれません。

——そんななか、勉強で自信をつけられることもあるだろうと。

葉一:もちろんスポーツや芸術系でもいいのですが、そちらは体格や才能がある程度関わってくる面があるので。身近なもので、なおかつ努力が成果に繋がりやすいのは勉強だと思っています。勉強で少しずつ成功体験を積むことで自信をつけてほしいです。

——成功体験というとテストの成績アップなどでしょうか。

葉一:そうですね。そして成績アップを判断する基準として、ただ点数を比較するのではなく、前回から平均点が下がったテストで前回と同じ点数だった場合、それは成績アップをしている、ということにも気づいてほしい。もっと小さなことでいうなら、以前解けなかった問題が正解していても成長ですからね。自己肯定感が下がっていると自分に厳しくなる子が多い。ひとりだけでは成功体験に気づけないので、ちゃんと成果が出ていることを親御さんや友だちが伝えてあげるといいと思います。

親は「伴走者」になることで子どもの笑顔が増える

教育YouTuber・葉一さん

——親はどういう立場で子どもの自宅学習を支えるのがいいでしょうか。たとえば、親のNG行動はありますか?

葉一:監視役になってしまうのは良くないと思います。自分にも2人子どもがいますが、失敗させたくないので、どうしても管理したくなっちゃうんですよね。でもそうすると、親はガミガミ言うだけの存在になっちゃう。勉強の主役は子どもたちなので、ガミガミ言っても子どものモチベーションを下げるだけ。言いたくなってもグッと堪えることが大切だと思います。

——本書にも「叱りではなく褒めを9割に」などの方法が紹介されていますね。具体的にはどんなタイミングで?

葉一:褒めどころは探してみると結構あるものです。テストで100点を取ることは褒めどころとしてわかりやすいですが、普段の宿題でもいつもよりキレイに文字が書けている、姿勢がいい、手伝いをしてくれたなど、いろいろとあるものです。大切なのは親側の褒めのハードルを下げることだと思っています。

 それと、褒めの質を上げるのもおすすめで、よく「点ではなく線で褒める」ことを意識しています。うちの息子は小学1年ですが、苦戦していた「虫」という漢字が書けるようになった時に、「○点とれてすごいね」だけではなく「苦戦していた虫が書けてるじゃん!」と過去の息子と今を線で結んで褒めるようにしました。これは、ただそのテストの得点を褒めてもらうより、子どもはちゃんと親が見てくれていることにうれしくなるので、褒めの質が上がります。ガミガミ言いたくなる場面が出てきたら、どこかに褒め要素がないか探して、ちゃんと言葉にして褒めてあげるといいと思います。

——どうしても褒めより叱るほうが先に出てしまいます(笑)。

葉一:本当にそうで、自分も日々反省です(笑)。でも言いすぎた時は「ごめん」と謝ることをルールにして、子どもの気持ちをフラットに戻せるようにしています。

——時には謝りながら、褒めの連続で子どものモチベーションを上げると。

葉一:はい。他には、ゴールを決めてあげることも子どもの安心感につながると思います。先ほど言った「できるようになること」「忘れないこと」をセットにして、今日はここまででOKと1日のゴールを子どもに決めてもらう。それを親も共有して、終わったら褒めるし、ゲームをしてもOK。それさえ明確にすればあまり苦労はしないと思いますし、どんな年齢のお子さんにも適用できると思います。

——勉強を教える以外にも、親にできることはいろいろあるんですね。

葉一:そうですね。ただ大きな変化は期待しないほうがいいと思います。子どもは学校でもストレスを溜めていますし、気分がいい時ばかりではないですよね。がんばれる時にがんばって、少しずつ変わっていくのを見守ってほしいです。親は子どもの管理者ではなく「伴走者」になれたら、子どもの成績がアップして笑顔が増えていくと思います。

自宅学習は親子関係を深めるチャンスでもある

教育YouTuber・葉一さん

——子どもの自宅学習がうまくいかないのは親の責任が大きいと感じている親御さんもいるようですが…。

葉一:子どもって本当にわがままで、近くにはいてほしいけど干渉されたくないんですよね。もし何かできることを探しているなら、ご自身が自宅学習をするのも効果的です。親御さんの影響力ってやっぱり偉大で、子どもは親の言動を見ているんですよ。言うことを聞かない、と思っている子ほど親のことを見ているような気がします。

——子どもの問題は自分たちで解決させるのがいいということでしょうか。自宅学習を味方につければ、メリットはいろいろありそうですね。

葉一:そうですね。自宅学習は親子で二人三脚の状況を作りやすくなると思います。子どものがんばる姿を見ていると、褒めるタイミングが増えると思いませんか? どんな小さなことでも良くて、「文字がきれいになった」「姿勢が良くなった」などでも十分。実際、姿勢を良くして背筋を伸ばすだけでも酸素が身体に入りやすくなって学習が頭に定着しやすくなりますから。

——成績アップしたわが子の笑顔を見れば、親の自己肯定感も上がりそうです! 家庭内の雰囲気も良くなりそうですね。あらためて、この本をどんな親子におすすめしたいですか?

葉一:親御さんも子どもたちも、勉強法に迷っていることが多いんですよね。なので、がんばっているのに成績が上がらない、今の方法だと生活が窮屈になっている、という方に読んでいただきたいです。勉強のやり方って難しく考えてしまいますが、じつはとてもシンプル。この本にまとめたのも「こんなことでいいんだ」っていう簡単なことばかりですが、子どもは確実に変わっていくと思います。全部試す必要はありませんので、視点を変えるきっかけになればと思います。

取材・文=麻布たぬ 撮影=島本絵梨佳

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