松坂桃李×鈴木亮平「日岡と上林の初対峙シーンは運命の恋人との出会いみたいだった」映画『孤狼の血 LEVEL2』公開記念対談!

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公開日:2021/8/18

松坂桃李さん、鈴木亮平さん
松坂桃李さん(写真左)、鈴木亮平さん(写真右)

 2021年8月20日公開の映画『孤狼の血 LEVEL2』。映画では激しくぶつかる松坂さん演じる日岡と、鈴木さん演じる上林。おふたりはどんな思いで役を演じていたのか。

(取材・文=野本由起 写真=小嶋淑子)


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松坂:実は、前作の出演依頼をいただいた時、マネージャーさんから「私、この台本が面白いかどうかわからないので読んで決めてください」って言われたんですよ。

鈴木:ああ、そう!

松坂:それで、僕が台本を読んで、監督が白石(和彌)さん、主演が役所(広司)さんと聞いて、「これは絶っ対にやりたいです!」となったんです。日岡という役は、誰にも渡したくなかった。思い入れが強い役なんですよね。

鈴木:僕は、最初に『孤狼の血 LEVEL2』のお話をいただいた時、お断りしたほうがいいかなと思いました(笑)。一作目が完璧な映画だったし、これを超えるのは難しいと思ったんです。でも、脚本を読んでみたら、僕の役があまりにもめちゃくちゃで。白石監督が「この役を鈴木亮平に」と言ってくれたからには、もう挑戦するしかない。読み終わった瞬間、「やります」って即答しました。

――松坂さん演じる日岡は、前作からの3年間でずいぶん変わりましたね。

松坂:前作はエリート好青年から始まり、あの終わり方をして。その後、日岡に何があったのか、空白の3年間を『LEVEL2』の冒頭から表現したいと思っていました。ビジュアルもそうですし、日岡なりの正義もそう。僕の中の日岡は、“狼に育てられた犬”というイメージなんです。ガミさん(大上)を父のように思いながらも、「自分はガミさんとは違うやり方でいくんだ」と覚悟を決める。その気持ちをぶつけたいと思いました。でも、完璧に成長したわけではないんですよね。『LEVEL2』を経ても、日岡は孤狼になりきれなくて。今回は、日岡が負け戦の中でどうあがくのかを見せたいと思いました。

鈴木:一方、上林からすると、自分以外は全員悪人に見えてくるんですよね。彼は、さまざまな裏切りに遭いながら生き延びてきた人。すごく繊細だし傷つきやすいんですよ。誤解を恐れずに言えば、環境が違えば、僕だってもしかしたら上林になる可能性がある。そう思えば、自然とお芝居できましたね。

上林は人生を懸けて日岡のような人を探していた

――そんなふたりが初めて対峙するシーンは、ヒリヒリするような緊迫感がありました。

松坂:そのシーンまで、ふたりは違う時間軸をたどっていて。だからこそ、初対面のシーンはテンションが上がりましたね。「こいつが上林か!」って。

鈴木:今回の映画、僕はあのシーンにすべてを懸けてました。最初は日岡に対して「なんだこいつ」と思っているけれど、臆さずガンガン来るから「お、こいつ東署の刑事か。度胸あるな」となって。そこから「五十子会のオヤジが殺された時、裏で糸を引いてたのはお前か?」と全部つながっていく。横で組のヤツらがアホな会話してる間、僕らはずっと無言で腹の探り合いをしているんですね。あの見つめ合いが、『LEVEL2』で一番痺れた瞬間でした。

松坂:運命の恋人に出会って、雷が落ちる瞬間みたいな(笑)。

鈴木:本音を言うと、僕はもっと激しいものを感じてた。きっと上林は、日岡みたいな人を探してたんだと思います。ずっと、人生を懸けて。

松坂:僕からすると、最高の悪に出会った感じでしたね。

鈴木:最高の悪? 日岡のこと?

松坂:違いますよ(笑)。上林が最高の悪であればあるほど、作品の血流が良くなる感じがして。しかも、亮平さんが上林の奥行きを作ってくれたから、ただの悪人になっていないんですよね。もちろん犯罪を正当化するつもりはありませんが、そこに至るには理由がある。だから憎みきれないし、悪が魅力として映るんです。

鈴木:上林はサイコパスではないし、殺人を楽しんでるわけでもないんだよね。彼の正義や信念については脚本に書かれていなかったけれど、それが僕への挑戦状。ただの悪人にもできてしまう役だけど、どこまで上林を人間にできるのかが僕の仕事でしたね。少なくとも、世界で僕ひとりだけは、この人を愛してやりたいと思える人間に作っていきました。

――上林は、よく「外道」と言いますが、彼にとってはみんなが「外道」に見えているんでしょうね。

鈴木:実は台本には、「外道」というセリフは一度も出てきていないんです。でも、役を作っていくうちに全員が外道に見えてきたので、ちょいちょい入れました。監督は、けっこうアドリブを許してくれるんですよね。

松坂:よっぽどのことがない限りは。

鈴木:よっぽどの時は却下されるけどね(笑)。僕が日岡の運転する車に突っ込んでいく時、「警察の犬だから『犬のおまわりさん』を歌いながら突っ込みたいです」と言ったら、「それはダメ」と言われました(笑)。

――アクションシーンも凄絶でしたね。殴り合いの場面では、鈴木さんが予定より一発多く殴ったとか。

鈴木:やってるうちに、もう一発殴りたくなったんです。本当は危ないのでダメなんですけど。でも、桃李なら対応してくれると思って。

松坂:アクションって、会話みたいなものですよね。セリフのニュアンスが変わったぐらいの感じで捉えておいたほうが、お互いに対応しやすいのかもしれません。

鈴木:初めて共演する役者さんにはやらないけどね。桃李とは、過去に二度共演しているから。

松坂:信頼関係はありましたよね。

――完成した『LEVEL2』の手ごたえはいかがですか?

松坂:役所さんに観ていただきたいですね。

鈴木:「観た」って言ってたよ?

松坂:え!?

鈴木:たまたま舞台を観に行った時にお会いしたのよ。そうしたら「いやぁ、よかったよ」って。

松坂:それはうれしいです! 僕としては、確かに『LEVEL2』と名乗れる映画になったと思ってます。前作にとらわれすぎずにみんなで作り上げた、熱量あふれる作品になりました。

鈴木:間違いなく自分の代表作になるだろうと思います。個人的には、二作目が成功した映画は、一作目よりも二作目のほうが好きなんですよ。『ターミネーター』とか『ダークナイト』とか。

松坂:あ、わかります。

鈴木:「仁義なき戦い」シリーズも、二作目の『広島死闘篇』になると若手俳優がすごいパワーを発揮しますよね。あの名作と比べるのはおこがましいですが、エネルギーあふれる映画にできたかなと思います。それに、二作目って僭越ながら敵役が大事だと思っていて。いかにして主人公を攻めて攻めて追い詰めるか。そんな二作目の敵役になれて、ありがたかったですね。欲を言えばタイトルも、上林の髪型になぞらえて『もみあげのない天使』にしてほしかった(笑)。監督には却下されましたけどね。

ヘアメイク:髙橋幸一(Nestation)/松坂さん、宮田靖士(THYMON Inc.)/鈴木さん スタイリング:丸山晃/松坂さん、徳永貴士/鈴木さん 衣装協力:松坂さん/スーツ41万8000円、シャツ11万円(共にエルメネジルドゼニア/ゼニアカスタマーサービス TEL03-5114-5300)、その他スタイリスト私物 鈴木さん/スーツ29万7000円(エトロ/エトロジャパン TEL03-3406-2655)、その他スタイリスト私物 *すべて税込

松坂桃李さん、鈴木亮平さん

まつざか・とおり●1988年、神奈川県生まれ。2009年ドラマ『侍戦隊シンケンジャー』で俳優デビュー。映画『新聞記者』『いのちの停車場』など出演作多数。9月23日に映画『空白』、2022年には主演映画『流浪の月』の公開も控えている。

すずき・りょうへい●1983年、兵庫県生まれ。2006年ドラマ『レガッタ』で俳優デビュー。映画『羊と鋼の森』『ひとよ』、ドラマ『テセウスの船』など出演作多数。10月15日に出演映画『燃えよ剣』が公開予定。

映画『孤狼の血 LEVEL2』

映画『孤狼の血 LEVEL2』
原作:柚月裕子「孤狼の血」シリーズ 監督:白石和彌 脚本:池上純哉 出演:松坂桃李、鈴木亮平、村上虹郎、西野七瀬ほか 配給:東映 8月20日(金)全国ロードショー ●3年前、暴力組織の抗争に巻き込まれ命を落とした刑事・大上。その後を継ぎ、刑事・日岡は広島の裏社会を治めていた。しかし、刑務所から出所した要注意人物によって、秩序が崩れていく。絶体絶命の窮地を、日岡は乗り切れるのか――。
(c)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会
公式サイト:https://www.korou.jp/

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