ryuchell(りゅうちぇる)さん「プリンセスの絵本を読むときは『女の子から好きって言ってもいいんだよ』と言い添えます」息子さんにすすめた絵本とその思い

文芸・カルチャー

更新日:2021/12/22

ryuchell

 2016年にモデル・タレントのpecoさんと結婚して、一児の父となったryuchell(りゅうちぇる)さん。我が子の誕生にあわせて育児セラピストの資格も取得したryuchellさんに、おすすめの絵本と、絵本が子どもに与える影響についてうかがいました。

(取材・文=立花もも 撮影=島本絵梨佳)


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――そもそもどうして育児セラピストの資格をとろうと思ったんですか?

ryuchellさん 子育てにおいても、生きる上でも、人を愛することってとっても大事だけれど、愛だけじゃ子どもは育てられない、ちゃんと知識を身につけないと、って思ったんですよね。たとえば赤ちゃんって、お腹のなかにいるとき、すでに聴覚が機能しているんです。だから胎教で音楽を流したり、お腹に向かって話しかけたりするのが大事なんですけど、生まれたあとも多くの子は耳が発達しているから、僕たちが発する言葉に含まれる感情をけっこう敏感に感じとる。優しいことを言っていてもイライラしていたら、それが自然と伝わっちゃうんです。子どもは立ち直りが早いし、絶対にそれをやっちゃいけないってわけじゃないんだけど……ぴりついた声を聞かせ続けていたら、子どもにも影響が出てしまう。

――なるほど……!

ryuchellさん だから絶対にそれをやっちゃいけない、というよりも、そういう知識があるだけで気をつけるようになるでしょう? あっ、いけない、いまピリピリしてる、って深呼吸することができる。イヤイヤ期も、みんな悩まされると思うし、なにをやっても否定されているような気分になって、落ち込んでしまう人もいるかもしれないけど、これは脳の成長を促すためにやっていることなんだ、モンテッソーリ教育を子どもが自分で自分に施しているようなものなんだ、って思えば、コップの水をひっくり返されても「わかる、やりたくなるよねー」「どうなるのか気になっちゃうんだね」って声をかけるという選択肢が生まれる。もちろん、そのうえでダメなものはダメだと教えていかなきゃいけないんだけれど「なんでそういうことするの!」って怒るんじゃなく「わかるけど、だめだよ」って注意することができる。さっきも言ったとおり、多くの子どもは耳が発達しているから、声のかけ方は注意しなきゃいけないんですよ。感情的にならない余裕は、愛情じゃなくて知識がもたらしてくれるんじゃないかなって思います。

――じゃあ、絵本の読み聞かせをするのも、子どもの成長にはとてもいいことなんですね。

だるまさんが
『だるまさんが』(かがくいひろし)

ryuchellさん そうですね。僕も、よくしていました。息子の場合、活発な子なので、『だるまさんが』(かがくいひろし)みたいに動きのある絵本を気に入っていました。だるまさんと一緒に揺れながら読むのが楽しかったみたいです。これも育児セラピストの勉強をしたときに学んだことなんですけど、なにか注意したり教えたりするときにリズムをとることが大事なんですよ。そのほうが、耳に入りやすい。だから、たとえば英語を覚えさせようと思ったら、映像を見せるより音楽を流したほうがいいみたい。目の情報に助けられて、耳から受け取る情報が減ってしまうみたいなんですよね。

ryuchell

――じゃあ絵本も、音だけのほうがいいんですか?

ryuchellさん 絵本は、そのバランスが絶妙なんだと思います。絵も、音も、子どもに適した情報量でつくられている。『だるまさんが』を、揺れながらリズムをつけて読んでいたら、息子も楽しそうで、だんだん自分から次のページをめくろうとしたり、成長がいっぱい見られて嬉しかったな。シリーズものなので「次はこっちのだるまさんを読んでみようか」と進んでいけるのもよかったです。あと『ママだいすき』(まどみちお:文、ましませつこ:絵)もよかったな。いろんな動物の、ママと子どもの関係を描いた絵本なんですけど、読みながら「ママもパパもリンクのこと大好きだよー」って声をかけることがコミュニケーションになるし、自分も愛されているんだという実感が、自己肯定感を育むんじゃないかなと思うので。

ママだいすき
『ママだいすき』(まどみちお:文、ましませつこ:絵)

――少し大きくなったら、読む絵本の傾向が変わったりしましたか?

ryuchellさん 今は自我も芽生えて、恐竜や乗り物の図鑑に夢中ですね。あと、ディズニープリンセスの物語。図鑑のように、情報を与えるような本は好きなように読ませて、外に出たとき「あの車知ってるー!」って答え合わせをするみたいに楽しむようにしているんですけど、プリンセス系の物語を読むときは、ちょっと声をかけるようにしています。というのも、やっぱり、物語では女の子が待っている側として描かれていることが多いんですよ。好きだって言うのも、たいてい、男の子。それ自体は全然否定しないんだけど、世の中って、その積み重ねで“こういうもの”って固定観念が植え付けられていっちゃうと思うんです。だから、「こんなふうに描かれているけど、別に、女の子のほうから好きだって言ってもいいんだよ」って添えるようにしています。

――待つ側のプリンセスも否定せず。

ryuchellさん そう。どっちでもいいんだ、って。『ママだいすき』を読んでいるときも「パパも大好きだよ」ってことは伝えるようにしていました。そうすると、社会に出て多様な生き方をしている人たちに出会ったとき、いちいち拒否反応を起こすことがなくなるんじゃないかと思うんです。「ああ、そういう人もいるよね」ってニュートラルに受け止めることのできる感性は、自己肯定感と一緒で、子どものうちから親にできる土台づくりなのかな、と。おっしゃるとおり、昔ながらの、待つ側のプリンセスを否定する気もありません。でも、ジェンダーバイアスというのは無意識に形成されていってしまうものだから、偏らないように、選択肢は広くもてるように、言葉をかけることは意識しています。

――ryuchellさん自身が好きな絵本はありますか?

いろいろ いろんな かぞくの ほん
『いろいろ いろんな かぞくの ほん』(メアリ・ホフマン:文、ロス・アスクィス:絵、杉本詠美:訳)

ryuchellさん 『いろいろ いろんな かぞくの ほん』(メアリ・ホフマン:文、ロス・アスクィス:絵、杉本詠美:訳)は、ママ友に薦められたんですけど、すごくよかったです。タイトルどおり、いろんな家族の形を描いた絵本なんですよ。親がママだけのおうち、パパが2人いるおうち、パパとママで国籍が違うおうち、っていう構成の違いだけじゃなくて、経済状況によって住んでいる場所も変わってくるし、宗教によってお祝い事もそれぞれなんだっていうことを教えてくれる。だけどどの家族にも共通して、ど真ん中には愛があるんだよ、いろんな形の幸せがあっていいんだよ、ってことが伝わってくるんです。息子には難しいと思うから読ませていないんですけど、いつか渡したいな。きっとなにか、伝わるものがあるんじゃないかなと思います。ただ、いまオススメした本が、みなさんのお子さんにとってもオススメかどうかはわかりません。

――それぞれ、好みがありますもんね。

ryuchellさん 絵本は親子のコミュニケーションツールとしても、心の発達のためにも、そしてもちろん言葉の力を養うためにも、とても大切なものだけど、いちばん大切なのは、目の前にいる子どもとしっかり向きあって、その子の個性を見ることだと思います。実際、いただいた絵本でも、僕が買った絵本でも、息子がまったく興味を示さなかったものもたくさんありますからね。それは絵本が悪かったんじゃなくて、単に、息子の個性に合わなかっただけ。だいたい、親がこうしてほしいと願う“圧の強いもの”は、子どもは敏感に感じとって避けたりしますからね(笑)。本当に絵本を好きになってもらいたいなら、好きなようにさせるのがいちばんだと思います。だけど子どもは、自分で絵本を買うことはできないから、いろんな種類の絵本を買って、選択肢として与えてあげる。選ぶのは、あくまでもその子自身。そうしたほうが、子どもとの信頼関係も培われていくんじゃないかと思います。

ryuchell

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