岡山天音 「借りてきた庭で縦横無尽に遊ぶ“マンガ力”に圧倒される作品です」
公開日:2022/1/9

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、岡山天音さん。
(取材・文=河村道子 写真=諸井純二)
アニメ化もされた西尾維新の名作に食指はずっと動いていたという。
「カルチャーの核になるようなものには極力触れてみたいという好奇心がありました。でもアニメ作品は自分とは相性が合わなくて。マンガがあると聞き、読み始めたんです」
そのマンガ作品を描いていたのは、奇しくも子どもの頃、夢中で読んでいた『エア・ギア』の作者だった。
「改めて大暮維人さんのマンガ力に圧倒されました。原作という枠があるなか、マンガに変換し、表現するとき、“どう遊ぶか?”という様が凄い。借りてきた庭のなかで縦横無尽にやっているような感じが。たとえばシンプルな告白シーンで見せる顔のどアップやバトルシーンの緊張と緩和が交互にある構成など、予想外の表現が次々出てくるので目が楽しいんです(笑)。わくわくしてしまう」
作者の姿勢にも傾倒したという。
「好奇心のようなものが伝わってくる。マンガ家としてのご自身を確立されてなお、その引き出しを更新し続けているのだなと。自分の好きなものに対し、常に新鮮な心地で夢中になり、向き合っている姿は美しい。自分もそうありたいと思います」
返還直前の沖縄に生きる人々の想いが爆発した“コザ騒動”を背景に、戦後沖縄の縮図のようなバーでの一夜を描く舞台作への出演は、きっとその思いを体現するものになる。
「映像作品の本数に比べると、舞台は僕のなかでまだ“事件”。栗山民也さんの演出、共演は舞台の大先輩ばかり、題材も奥に進んでいかないと取り組めない。でもどこに迷い込めるのか、目の前に立ちはだかるのは果たして何だろう?という未知の領域に踏み出す期待感があります」
物語の中心には分断してしまった血の繋がらない兄弟がいる。岡山さんはそのひとり、アキオを演じる。
「今、東京で暮らす27歳の僕からすると、彼は想像もつかないような場所で生きている。表面的には整備されたように見えるけど、何かに駆り立てられる、内側と外側の溝の深さのようなものを持つ人物です」
稽古が始まる前、ともに兄弟を演じる松山ケンイチさんと、舞台となる沖縄市コザに赴いたという。そこで得た、土地の刻んできた空気感も、自身の「実感ある体感」にし、“心がぶつかり合う”会話劇に挑む。
「日常で吸っている空気とはまったく違うものが味わえる、深度のある舞台になると思います。初めて見るその世界を、僕たちと一緒に体感しに来ていただきたいです」
ヘアメイク:森下奈央子 スタイリスト:岡村春輝 衣装協力:トップス3万8500円(Ohal/JOYEUX TEL03-4361-4464)、その他(スタイリスト私物)
舞台『hana-1970、コザが燃えた日-』

作:畑澤聖悟 演出:栗山民也 出演:松山ケンイチ、岡山天音、神尾 佑、櫻井章喜、金子岳憲、玲央バルトナー、上原千果、余 貴美子 1月9日(日)~30日(日) 東京芸術劇場プレイハウス ●1970年12月20日(日)未明。コザ市にある米兵相手の質屋兼バー「hana」に揃ったいびつな“偽の家族”――。心からぶつり合う会話劇からは、沖縄という土地が背負わされているもの、現在も変わらぬその業と見つめるべき未来が浮かびあがる。沖縄返還50年目の今年、返還直前の沖縄に生きる人々を描く意欲作。