パスタ世界チャンピオンが教える、家で作れる「世界一」の味! 至福の家イタリアンは“タブー”にも挑戦

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公開日:2022/3/4

「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン
『「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン』(弓削啓太/主婦の友社)

 2019年、イタリア最大手のパスタメーカー「バリラ」が主催する国際パスタ競技大会「パスタ・ワールド・チャンピオンシップ」で優勝した、弓削啓太シェフの初のレシピ本『「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン』(主婦の友社)が2022年2月28日に発売されました。

 イタリアンの名店・横浜サローネ2007の料理長であり、自身のYouTubeチャンネル「YUGETUBE」(ユゲチューブ)も登録者数14万人超え(2022年3月現在)。いま、注目が集まるイタリアンシェフ・弓削啓太さんにお話を聞きました。

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「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン

――弓削さんは予約のとれない名店のシェフでありながら、ご自身のYouTube「YUGETUBE」(ユゲチューブ)も人気ですね。どんなきっかけがあったのですか。

弓削シェフ 2020年の春、コロナ禍でパスタがスーパーの陳列棚からなくなっているというニュースを見て、パスタが家庭で人気なのだなとあらためて実感しました。

 この時代に僕にできることは、おいしいレシピを伝えること。普段お店で出しているものとは違う、家でおいしく作れるレシピを配信しようと思ったのがきっかけです。

 以来、テレビやレシピ動画サイトへの出演、他のシェフとのコラボ、書籍化のお話など数多くいただき、僕自身も「家イタリアン」について試行錯誤を重ねてきました。

YUGETUBE

――では、この初のレシピ本は、「YUGETUBE」(ユゲチューブ)のレシピを集めたものでしょうか?

弓削シェフ 「本気のカルボナーラ」「15分で濃厚! ミートソースパスタ」「ペペロンチーノ」など定番パスタの多くは、「YUGETUBE」でもご紹介している人気メニューですが、いずれもおいしさはそのままに、より家で作りやすいように、新たにアレンジを加えています。

「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン
15分で濃厚! ミートソースパスタ

――えっ、そんなウマい話が!?

弓削シェフ もともと、「YUGETUBE」はおうち時間に、家族と楽しい時間を過ごしてほしいという気持ちで、おもな視聴者には「ふだんはあまり料理をしないお父さん」を考えていました。実際、視聴者の8割は男性です。

 でも、今回、初めての本を作るにあたって、日々のごはん作りを担っている、いわゆる「主婦」の方にも本格イタリアンを楽しんでもらいたいと思いました。材料をより身近な食材に変えたり、できるだけ手間を省けるよう工夫しています。

 でも、「これを端折ったら、おいしくできないな」というポイントは、手を抜かない。単なる「時短」ではなく、メリハリをつけることを心がけました。

「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン

――なるほど。シェフ目線から、シュフ目線というわけですね。
本の中には「ここがWow(ワオ)!」という、弓削さんからのポイントが随所に書かれていますが、この「Wow!」とはどういうことなのですか?

弓削シェフ 僕が料理を作るとき、一番大事にしているのが「Wow!」、つまり「驚きや感動があること」です。

 たとえば、パリで開催されたパスタの世界大会で優勝したときのレシピは、「ペンネ・アル・ゴルゴンゾーラ」という、イタリアンではド定番のクリーム系パスタ。

 そこで僕は、パリを代表する秋の味覚である牡蠣に、海苔、山椒、日本酒、みりんといった日本の食材を使って勝負しました。

「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン

 まず、山椒の清涼感ある香りを感じて、口に入れるとゴルゴンゾーラの濃厚な味わい。ソースには日本酒を使うので、チーズの塩味を酒の甘みがまろやかにします。

 香りは日本で、食べるとイタリアという驚きや意外性が、評価されたのだと思います。

――それは確かに、「Wow(ワオ)!」ですね。

弓削シェフ ただ、この「Wow!」は、単なるサプライズとは違うんです。

 食べる人にとって、「えっ、家でこんなにお店みたいな味が!」「この食材でイタリアン!?」という期待以上、見た目の想像以上のおいしさがあること。

 そして、作る人にとっても、「こんなに安い食材で、高級な味になるの⁉」とか「このひと手間だけで、プロ級の料理ができるんだ!」という、手間やお財布や時間の「Wow!」があることを目指しました。

 家庭料理でも「Wow!」があると、おうち時間がより楽しくなりますよね。

――具体的に、作るときの「Wow(ワオ)!」とは?

弓削シェフ いろいろありますが、一般的にタブーとされていることが実はおいしさのモトだったりします。

 たとえば「焦がす」。

「焦がすなんて怖い」と言われたこともありますが、焦げているくらいのほうがおいしいものはたくさんあります。

 鶏肉やステーキなど、カリッとしっかり焦げ目がついているほうがおいしいですよね。きのこも、まずカラカラになるまで素焼きするとうまみが凝縮されて、レストランの付け合わせで出てくるようなプロっぽい味ができます。

「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン
「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン

 トマトもうまみ成分が豊富なので、焼いて焦がしてから湯を注ぐと、うまみたっぷりのパスタソースになります。

「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン
「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン

恐れずに「焦がす」! 「うまみ爆発!フレッシュトマトソース」

「YUGETUBE」でも再生回数が多い「きのこのクリームパスタ」では、なめこを焦がして、ポルチーニ茸のような食感やとろみをつけています。

「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン
「きのこのクリームパスタ」

 手打ちパスタはおいしいけれど、作るのが大変ですよね。「餃子の皮」をカットしたら、ツルリとした食感の生パスタになりますよ。

「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン
「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン

「餃子の皮でたらとブロッコリーのパスタ」

 他にも、ペペロンチーノのソースは油と水がまざってトロリとなる「乳化」がキモ、とよくいわれますが、乳化させなくたっておいしく作れるんです。

「パスタ世界一」がかなえる至福の家イタリアン
「乳化は二の次! イタリア式ペペロンチーノ」

 いんげん、長ねぎはくたくたになるまで煮ると、今まで味わったことのない感動のおいしさになります。

 そんな、いわゆる「料理の常識」とは離れたコツやアイデアを、多くの方に知っていただけたら嬉しいと思っています。

――常識超え、本場超えの家イタリアン、気になります!
そんな、ダ・ヴィンチWebの読者さんにメッセージをいただけますか。

弓削シェフ 僕も家で料理を作ることもありますが、毎日三食、家族のために料理をしている妻には頭が上がりません。

 家で料理をするときは、基本的に家族や恋人、友人など「大切な人」に向けて作るということだと思います。

 身近な食材で、できるだけ簡単に、プロ並みの味を楽しんでいただきたい。そんな思いを込めて試行錯誤を繰り返したレシピを、大切な人と一緒に食べていただけたら、料理人としてこの上なく幸せです!

弓削啓太(ゆげ けいた)
横浜「SALONE2007」料理長。2019年パリで開催された、イタリア最大手のパスタメーカー「バリラ」が主催する国際パスタ競技大会である「パスタ・ワールド・チャンピオンシップ」にて優勝。パスタの世界1位に輝く。自身のYoutubeチャンネル「YUGETUBE」(ユゲチューブ)はチャンネル登録者数14万人以上(2022年3月現在)。「世界一受けたい授業」「あいつ今なにしてる」等テレビ番組にも多数登場。

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