他人事ではない? 自分や家族が癌になった時あなたはどうしますか——闘病漫画まとめ

マンガ

更新日:2018/12/10

 30年以上にわたって、日本人の死因トップを守っている「癌」。高齢化が進むにつれて、2人に1人が癌になるといわれているほど。にもかかわらず、癌については表面的な部分しか知られていません。そこで本稿では、実際に癌になったらどのような治療を受けるのか? 副作用は? 治療費は? 家族はどうすればいいのか? などといった、癌についての知られざる部分をリアルに表現している漫画を紹介したいと思います。

■ほのぼの絵柄で読みやすい闘病漫画のお手本

『元気になるシカ! アラフォーひとり暮らし、告知されました』(藤河るり/KADOKAWA)は、タイトルからもわかるように、著者の経験を描いたエッセイ漫画ですが、自分自身を鹿の姿で表現しています。人間ではないキャラクターを使うことで、重くなりがちな闘病漫画を読みやすく、手に取りやすいものにしてくれています。そんな可愛らしい絵柄でありながらも、その内容は癌を告知されたときの気持ちから、抗がん剤による脱毛の対策、さらに手術後の気持ちの変化まで、とてもしっかりと構成されており、著者と同じように卵巣癌になってしまったという方、身近に同じ病気の方がいるという方に、ぜひ、読んで欲しい良書となっています。

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■人気漫画家が自らの大病を赤裸々に描く

『南くんの恋人』など、多くの人気作品を描いてきた内田春菊さんが、自らが患った直腸癌との闘病を描いた『がんまんが 私たちは大病している』(ぶんか社)。この作品は直腸癌が見つかってから、手術を経て人工肛門を造設するまでが描かれています。ユーモラスに重くならないように描かれていますが、排泄機能を失うというのは、とても大きな出来事です。人工肛門になるというだけで、絶望を感じる人も多い中、それでも変わらずに生きていって良いということを、力強く教えてくれる内容となっています。著者はとても自分に正直な方なので、人によっては拒否反応を示す部分があるかもしれませんが、だからこそ、重い内容をわかりやすく軽やかに表現できたのは間違いありません。

■癌になったとき、あなたの心はどうなるのか?

 癌は日本人の死因トップというだけあって、癌闘病漫画も多く存在しています。本書は『32歳で初期乳がん 全然受け入れてません』(水谷 緑/竹書房)というタイトルからもわかるように、初期の乳がんを患った著者の体験を描いたもの。乳がんは気がつきにくいために、発見が遅れるケースが多いのですが、この著者はかなり初期で発見できたというある意味幸運なケースです。だからといって、癌であることにはかわりありません、告知されたときのショック、そして女性だからこその悩み、さらに自分の父親が癌で亡くなったという背景など、治療そのものよりも、著者の内面にフォーカスした内容となっていますので、自分の身に置き換えて読んで欲しい1冊です。

■癌患者の家族は、第2の患者さんなのです。

 癌になってしまった当事者のストレスは強烈なものがあります。多くの不安や、身体の不調など、想像を絶するほどの苦難に襲われているわけですが、それと同じぐらいのストレスを抱えているのは患者の家族なのです。そんな「第2の患者」と呼ばれる患者家族の目線で描かれたのが『今日から第二の患者さん がん患者家族のお役立ちマニュアル』(青鹿ユウ/小学館)。著者の婚約者が大腸癌を患ってしまったことによって、看病でヘトヘトになる毎日や気持ちを描写し、患者だけでなくその家族も大変であることを伝えてくれるだけでなく、家族特有の悩みにたいして、どのようにすればいいのかという解決策も提案してくれる1冊となっています。

■闘病をきっかけに新たな一歩を踏み出す

 闘病記というと、どうしても自分自身や家族のことに焦点を置きがちです。特に癌という大病ならばなおさらでしょう。しかしながら『さよならタマちゃん』(武田一義/講談社)は、自分自身だけでなく、家族や他の入院患者についての描写にも重点をおいています。淡々と進んでいく中に、時折、グサッとくるような描写やセリフがあり、気がつくと最後まで読み切ってしまいます。そういった意味では、通常の闘病エッセイに比べると、物語性が強いといえるかもしれませんが、人と人の関わりや、家族の大切さ、そして多くの苦労を乗り越えるための覚悟などが見事に描写されていますので、エッセイ漫画はちょっと苦手…という方にもオススメです。

■家族全体で癌を乗り越える姿に思わず声援を送りたくなる

『コミックエッセイ ちびといつまでも -ママの乳がんとパパのお弁当と桜の季節』(柏原昇店、濱岡 剛:監修/ジービー)は、癌になった当事者ではなく、その配偶者である著者の目線で描かれたもの。といっても、一方的なものではなく、ちゃんと当事者である奥さんの意見を聞いて、とても真摯に癌と向き合った内容となっています。基本的に4コマ漫画なので読みやすく、少ないコマでありながら、乳がんの治療についてわかりやすく教えてくれます。直接的な治療についてはもちろんですが、家族が癌になってしまった場合の、配偶者や子供たちの負担や気持ちの変化などもしっかりと描いてくれています。いつ、誰が癌になってもおかしくない現代だからこそ、1度は読んでおいて欲しい作品です。

 病気になると誰もが心細く不安になってしまいます。そんなとき、自分と同じような体験をした人がいることがわかると、それだけでも助けになるのは事実といえるでしょう。本稿で紹介した漫画はすべてが、癌という誰もがかかる可能性のある大病を扱ったものです。病気になった当事者はもちろん、家族も読んでおくと心が落ち着き、さらに大切な知識を得られるものが多くありますので、ぜひ、じっくりチェックしてみてくださいね。

文=龍音堂