医療のリアルが分かる! おすすめ医療漫画まとめ

アニメ・マンガ

2018/11/21

 医療漫画の中から、リアルさを追求した「ためになる」医療漫画を10作品セレクトした。選んだのは医療問題や、一般に知られていない医科などを取り上げた作品だ。誰もが知っておいて損はない医療の現実や情報についても解説されているものも多い。

 本稿でご紹介する作品は、医学博士や医師が監修した作品も多く、実際の医師や看護師も「勉強になる」と好意的な口コミを寄せるなど、リアリティの高さはお墨付き。未読の作品があるようなら、ぜひ読んでみてもらいたい。

■過酷すぎ! 現場のリアルを描いた医療漫画の決定版

『ブラックジャックによろしく』(佐藤秀峰/講談社)は、外科、産科、精神科、救急医療などこれらの現場を主人公の研修医、斉藤英二郎が経験する物語だ。

 延命医療、不妊治療、未熟児の出産、余命宣告、緩和ケア、精神科医療…。各エピソードは「ためになる」以上に、実際に病院で起こっている厳しい現実を強烈に突きつけてくる。

 特に精神科病棟をここまで描いた漫画は、連載されていた当時はまだなかったかもしれない。このエピソードは深く、悲しく、読後やるせない気持ちになるかもしれないが、未読の方はぜひ読んでもらいたい。臓器移植を描いた続編『新ブラックジャックによろしく』(小学館)も出版された。

■「笑える」病院ってこんな所! 研修医成長ストーリー

 女性研修医が、医療現場の最前線で一人前に成長していく物語が『研修医なな子』(森本梢子/集英社) だ。作者は『ごくせん』を描いた森本梢子氏。本作は森本氏の実姉が勤務する、熊本大学医学部附属病院への取材に基づき執筆された。病院や医療をコメディタッチで描いており、ソフトな医療漫画を読みたい方におすすめだ。

 出版からかなりの年月が経っているにもかかわらず、未だに人気が高い作品だ。ポイントは描かれる医療現場や治療なども誇張が少なく、現実に即していること。そして主人公が天才的な才能を備えた医師ではないことだ。なな子は実習、毎日の治療、学会での研究発表などを地道に積み重ね、いつしか研修医を指導する立場になっていく。彼女は現実の医師が、自分と重ね合わせられるほどリアルなのかもしれない。

■「へき地医療」に立ち向かう若き女医のコメディ漫画

『サイハテ村けやきクリニック』(まるいミカ/日本文芸社)は限界集落の最果村(さいはてむら)を舞台に、若き総合診療医である欅かえでの奮闘を描く。大病院までバスで2時間、救急車でも1時間。そんな最果ての村で「地域医療」「へき地医療」の最前線にかえでが奮闘する。

 都会に住んでいると実感が湧きにくいかもしれないが、医師不足は日本全国で起きている。特に過疎化が進んだ限界集落などで起こっている「へき地医療」の問題は深刻といわれているのだ。

 限界集落では住民が高齢になっていることも問題に拍車をかけている。国も地方行政も医師確保のために動いてはいるものの、なかなか明るい兆しはないのが実情だ。本作はコメディタッチで描かれており、本来は深刻な現実も楽しく読んで学ぶことができる。

■「心療内科」「精神科」の病気や症状が気楽に理解できる!

 心療内科の病気の全てを笑いながら学べるのが『マンガで分かる心療内科』(ゆうきゆう:原作、ソウ:作画/少年画報社)だ。著者は現役の精神科医で「ゆうメンタルクリニック」は実際の心療内科・精神科クリニックである。

 心療内科で扱う認知症、適応障害、うつ病、依存症、過食・摂食障害・拒食症などを、ギャグ漫画形式で紹介している。確かに笑えるようには描いてあるものの、情報の量や質の高さは、現役精神科医の作者ならではだ。なお作中で説明が不足している情報は、しっかり解説文で補足している。

 一般的な内科や外科の症状と違い、これらの病気や症状を理解するためには難解な書籍を読むか、医師などの専門家に聞く必要があった。何となく知ってはいたが誤解していた部分も多いはずだ。それを肩の力を抜いた状態で学び、理解できるのは本作の最大の魅力だ。

■見えない病を診つけ出すのが仕事! 「診療放射線技師」の画像診断コミック

『ラジエーションハウス』(原作:横幕智裕、漫画:モリタイシ/集英社)の主人公、五十嵐唯織は診療放射線技師だ。彼らはレントゲン検査で使われるX線、他にもCT、MRI、超音波などを扱う医療技術者だ。

 本作では、人体内部の様子を映し出し、心臓や脳などを調べる放射線技師の知られざる仕事にスポットがあてられる。健康診断などで誰もが一度は受けたことがあるだろうレントゲン検診、そしていつか受けるかもしれない他の検査の内容や背景は、知っておいて損はないだろう。また五十嵐が幼馴染の放射線科医師に憧れるなどの恋愛要素も楽しめる物語になっている。

■目を背けてはいけない、幸福な出産の光と陰

 産科・婦人科医療の光と影をリアルに描いているのが、ドラマにもなった『透明なゆりかご』(沖田×華/講談社)だ。作者である沖田氏は見習い看護師を経験している。その時の体験をもとに幸福な出産の裏側にある妊娠中絶やDV、性虐待といった事例にも焦点をあてた作品だ。

 主人公の華は中絶の現場やその後処置などを体験して「産婦人科は命が生まれるだけの場所ではない」と知る。一時は辞めようとするが、出産の現場に立ち会い生まれる命の力強さに感動し、仕事を続けていく決意をする…。

 シリアスな内容の反響は大きく、話題になった。子育て中の方、これから子どもが欲しいという人で本作をご存じなかったというならば、この機会にぜひ読んでみてほしい。本当に厳しい現実を知ることで、生まれる命の重さや大切さをより一層理解できるのではないだろうか。

■手術時に命を管理する「麻酔科医」の日常

 現在の医師不足の中でも深刻なのが「麻酔科医」が足りないことだといわれている。その激務と日常を時にシリアスかつコミカルに、そしてリアルに描いているのが『麻酔科医ハナ』(なかお白亜/双葉社)だ。

 主に世間と隔絶した手術室にいるため、目立つ外科医の陰に隠れ、その存在をあまり知られることもない麻酔科医。しかし彼らは患者の生命活動の一切を手術終了まで絶え間なく管理する、重要な役割を担っているのだ。監修は医学博士でもある麻酔科医の松本克平氏が行った。

 本作は華岡ハナコを主人公に、大学病院の麻酔科医の激務を描いている。もし手術を受けるとしたら必ず世話になるだろう麻酔科医のリアルを、エンターテイメントとして楽しめる作品に仕上げている。

■これが「産科医療」の現場…感動のドラマと厳しい現実

 産科医療の現実がリアルに描かれているのが、『コウノドリ』(鈴ノ木ユウ/講談社)である。年間約100万人の新しい命が誕生する産科の現場は、本作を読むとただ幸せな出産ばかりではないことがわかる。思った以上に命の危険と隣り合わせの出産は多く、出産を経験(家族も含む)したことがあればその現実的な描写は共感できるはずだ。

 各エピソードのテーマをいくつか挙げると「未受診妊婦」「切迫流産」「人工妊娠中絶」「海外出産」「子宮外妊娠」「無痛分娩」。そして今大きな問題になっている「先天性風疹症候群」…。一般的には聞き馴染みのないものもあるだろうが、いずれも産科医療においては“普通に”起こっている現実だ。感動できるヒューマンドラマであり、医療従事者たちも絶賛するリアルな物語といえるだろう。

■医師たちの羅針盤! 知られざる「病理医」の物語

『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見』(草水 敏:原作、恵 三朗:漫画/講談社)で描かれる「病理医」をご存じだろうか。病理医は、生検や病理解剖などを行って、病気の原因過程を診断する専門医のことである。毎日ひたすら顕微鏡をのぞいている彼らは、患者に会うこともなく感謝もされることはない。また病理医は汚染対策着である白衣を着る必要もない。

 医師なのか?と疑問に思うかもしれないが、実は専門の診療医以上に「総合的な」病気に対する知識が必要とされる。そして「がん」を疑うような場合には病理医が判断を行い、手術や投薬の方針が決まっていく。彼らは病院と医師たちの羅針盤といっても過言ではないのだ。

 物語の主人公は岸京一郎(きし・けいいちろう)。各診療科の医師は、彼の鑑別をもとに、診断を確定し、治療の効果をはかる。強烈な個性を持った岸は人知れず患者の命を救っていく…。自分や親しい人間が大病を患い、医師の口から「病理で調べる」という言葉を聞いた時、本作が思い出されるかもしれない。

■目指すは「最上の小児外科医」!

『最上の命医』(橋口たかし:著、入江謙三:取材・原作/小学館)の主人公は西條命(さいじょうみこと)。彼は生後まもなく心臓手術を受けて命を救われた。命は自分を執刀した神道医師のような“最上の名医”を目指し小児外科医として奮闘する。その天才的な腕を振るい、病院の確執や利権と戦いながら、小児医療改革も進めていく。

 子どもの頃から才能の片鱗を見せ、超人的な技術を持ち、患者とかかわる人たち全てを救おうとする若き天才医師。設定としては誰もが楽しめるエンターテイメントとして描かれている。ただ小児外科の医療描写は非常にリアルだ。

 医療監修は小児科医であり医学博士でもある岩中督氏が行っており、病気や手術法は図解入り。作品中の医療技術などは高度すぎる手術法だけではなく、基本的で安全性の高いもの、応急処置なども紹介している。テレビドラマ化もされ、続編として『最上の明医 ~ザ・キング・オブ・ニート~』も描かれた。

 さまざまな医療問題や出産は、誰もがいつ直面するかわからない。また知られざる診療放射線技師、麻酔科医、病理医などもいつか世話になるかもしれない現実である。

 医療の現実や医療そのものを、気軽に知ることができる本格的な医療漫画は間違いなく「ためになる」。ぜひこの機会に読んでみてはいかがだろうか。

文=古林恭