凄腕医師の活躍が痛快すぎる! スゴ腕ドクターの医療漫画まとめ

マンガ

更新日:2018/12/3

 医療漫画の中でも、天才的な腕を持つ「スペシャルな医者」が活躍する物語は特に人気が高い。ここではコミック界で名高い凄腕医師たちから、6人を選んでみた。いずれも技術と志は高く、人間味あふれるヒーローたちである。

 病気になった時に思うのは、できるだけ「名医」にかかりたいということ。もし彼らにかかることができれば、どんな難病もどんなひどいけがの手術も怖くないとさえ思えるはずだ。

■チームドラゴンを率いる天才心臓外科医

 高度な手術を成功させる「チーム」を率い、もちろん熟達した医療技術を持つ朝田龍太郎を描いたのが『医龍 Team Medical Dragon』(乃木坂太郎:著、永井 明:原案/小学館)である。

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 天才は傲慢ではぐれ者、孤独にメスをふるうイメージだが、一分一秒を争う手術においてはスタッフとのチームワークが重要だ。龍太郎は過酷な医療支援NGOの現場で仲間たちと連携。鮮やかなジャズバンドのセッションのような手術を行い、患者を救ってきた。龍太郎たちのチームは、畏敬の念を込めて「医龍」と呼ばれていた。

 明真大学付属病院のスカウトを受けた龍太郎は、このチームを再び作り上げ、高難度の「バチスタ手術」に挑む。生臭い大学病院内の権力闘争を背景に、天才が率いる心臓外科チームの成長が描かれる。

■一族の宿命を背負ったスーパードクター

 野獣の肉体と天才的な頭脳を持つ、異能の医師の物語が『スーパードクターK』(真船一雄:漫画、中原とほる:原案協力/講談社)だ。日本医学界の最高権威・帝都大医学部を首席で卒業した天才青年医師が主人公、KAZUYA。実は彼は医師の家系「Kの一族」の宿命を背負ったスーパードクターだった。

 裏の世界で、命を救いメスで悪を切り裂くKは、マフィア、テロリストなどに狙われる身だ。表情は常に固く気難しいイメージだが、仲間とのふれあいでツッコミを入れ、オーバーなリアクションをするなど、コミカルで人間味あふれる一面も持っている。報酬は数千万円もの大金を受け取ることもあるが、社会的弱者からの支払いはリンゴにするなど、無報酬で手術をする場合もある。病気を治し、事件や陰謀を解決していくハードボイルドストーリーだ。

■「医療の神の手」を持つ天才外科医は16歳の現役女子高生!

 16歳の女子高校生が外科医として活躍するのが『パナケイアの手』(松本救助/白泉社)である。医療漫画としては設定が荒唐無稽のようだが、生野いくみは先天的に高い能力を持つ子供「ギフテッド」として描かれている。飛び級で進学し医療先進国アメリカで世界最年少の外科医になった。

 物語は研修医の田宮といくみが出会うところから始まる。自分は医師だと得意げに告げる田宮だったが、いくみこそアメリカで「医療の女神パナケイアの手」を持つ天才と認められた「世界最年少の外科医」だった。豊富な知識と技術に精神が追いついていない彼女は、田宮に触発され日本で外科医として働き始める。神が宿ると言われるその腕で、患者の病と心を癒していく。ラブコメ要素も楽しめる、わかりやすいエンタメストーリーだ。

■フリーランス外科医はコミックでも「失敗しない」!

『Doctor-X 外科医・大門未知子』(かどたひろし/幻冬舎)は2012年には民放視聴率No.1となった大ヒットドラマのコミカライズ版だ。大門未知子は大学の医局に属さない一匹狼、すなわちフリーランスのドクターである。

 趣味は手術、特技も手術、という未知子は、どんな困難な手術にも「私、失敗しないので」と言い切るなど、率直な言動で大学病院内のヒエラルキーを完全無視。いわゆる「白い巨塔」な大学病院で、スーパーフリーランス女医が自分の仕事をまっとうする、痛快な医療ストーリーだ。本作では未知子が「ドクターX」と呼ばれるようになった理由など、ドラマの核心部分も描かれる。

■患者の人生をも再生! 神の異名を持つ外科医

『ホルスの手』(関 達也/日本文芸社)は、再生を司るエジプトの神「ホルス」の異名を持つ天才外科医、九条十三郎が主人公だ。その技術はまさに神業。成功率10%という難手術に挑み、病院外で輸血をしながら手術も行い、圧倒的な手術スピードで救急医療でもその腕をいかんなく発揮する。性格は一匹狼気質で傍若無人。組織のメンツやルールなどといったものが一切通用しない。

 あるエピソードでは、アクシデントで仲間に撃たれた銀行強盗を助ける。なんと催涙弾の煙の中で手術を行い、犯人を改心させる。十三郎は再生の神「ホルス」の異名通り、患者の命とその後の人生も再生させる天衣無縫な天才外科医である。

■歴代最高は揺るがない! 天才医師は今日もどこかでメスをふるう

 凄腕医師を紹介する本稿のトリをつとめるのは、やはり『ブラック・ジャック』(手塚治虫/秋田書店)をおいて他にないだろう。無免許医、闇医者、もぐり医者、世界の医学会からその腕を認められた天才医師…。人々からさまざまな呼び方をされる「BJ」こと間 黒男(はざま くろお)。鋭いメスで人間の心の奥の本性をもえぐる不朽のヒューマンストーリーである。

 不発弾による重症などからの「外傷」と「トラウマ」。ハーフの友人の皮膚を移植したルックスなどの「シリアスな過去」。医学界に反発する「異端児キャラクター」。高額な医療費を請求しつつも弱者・貧者の命も救うなどの「ハードかつ人間味あふれる性格」。これらの設定は、現在まで続く医療漫画の系譜に多大な影響を与えている。凄腕医師もの、医療漫画の金字塔と言えるだろう。

 命と人間の尊厳をテーマにする医療漫画は、ともすれば重苦しい内容にもなりがちだ。そこで彼ら凄腕医師たちのスーパーな活躍は極上のスパイスとなり、医療漫画をスカッとする痛快なエンターテイメントに昇華させてくれる。未読のものがあればぜひご一読をおすすめしたい。

文=古林恭