医療漫画といえばコレ! 時代を超える不朽の名作まとめ

アニメ・マンガ

2018/11/14

 医療漫画というと『ブラック・ジャック』がまず思い浮かぶ方は多いだろう。確かに時代を超えた不朽の名作であることは間違いない。けれど素晴らしい医療漫画は他にもある。本稿では時代を超えて愛され続ける医療漫画を10作品ご紹介したい。いずれもリアルで、深く、重厚で、泣ける。間違いなく感動できる作品を選んでみた。

■医学博士が描く世界最高のもぐり医者

 言わずと知れた医療漫画の金字塔的な作品が『ブラック・ジャック』(手塚治虫/秋田書店)。無免許医にもかかわらず、世界中の医師たちの間で「天才」と噂されているブラック・ジャック。彼は延命困難な大怪我や世の難病・奇病などのオペに挑み、患者たちとの人間ドラマが展開されていく。

 作者の手塚氏はブラック・ジャックとは違い医師免許を持つ。本作を支えるリアルな医療情報や手術描写は、医師であり医学博士である手塚氏ならではだろう。医師の監修ではなく、医師自身が描いた数少ない医療漫画である。以前にダ・ヴィンチ読者が選ぶ医療系マンガ・小説ランキングでも堂々の第1位を獲得している。

■時は幕末、刀の代わりにメスで人を救う医師

 テレビドラマも高視聴率を記録した大ヒット作品が『JIN―仁―』(村上もとか/集英社)だ。脳外科医の南方仁(みなかたじん)は、病院を脱走しようとする患者と揉みあう内に、1862年にタイムスリップしてしまう。電気も消毒薬も抗生物質もない世界。仁は悪戦苦闘しながら医療を行い、江戸の民の命を救う…。

 本作の魅力は、まず主人公、仁の誠実なキャラクターだろう。前述のブラック・ジャックとは対照的な人柄で、こんな医者にかかってみたいと思わせる。そしてもうひとつは歴史物、幕末物であること。1862年といえばいわゆる江戸末期の動乱期。幕末の志士や偉人と言われる人物たちが登場し、物語に花を添える。江戸時代の文化や世界観などのディテールも綿密に描かれている。

■研修医が向き合う、理想とかけ離れた医学界の現実

『ブラックジャックによろしく』(佐藤秀峰/講談社)の主人公、斉藤英二郎は念願の医者になった。やる気に満ちていた英二郎は、医学部卒業からまだ3カ月で月収はわずか3万8千円。高額な報酬を取るブラック・ジャック、そのオマージュであるタイトルが皮肉にも感じられる薄給である。

 研修医の給与をこの作品を読んで初めて知ったという方も多いかもしれない。本作ではこのような医師の実情、現代の医療現場がリアルに描かれている。英二郎は理想とかけ離れた医療の矛盾に苦悩しつつ、熱意を持って懸命に、自分がすべきことをやる。本作品は版権フリーや、全巻完全無料で読めることでも話題になった。

■大学病院内の権力争いの中、チームドラゴンがバチスタ手術に挑む!

『医龍 Team Medical Dragon』(乃木坂太郎:著、永井 明:原案/小学館)は、天才的な技術を持つ外科医・朝田龍太郎(あさだりゅうたろう)が主人公。かつてNGOで「医龍(チームメディカルドラゴン)」と呼ばれた医療チームを率いていた朝田は、医師を辞めていた。しかし教授の座をめぐり権力闘争渦巻く大学病院の現場に誘われ、復帰する。そこで朝田は重篤な心疾患を救う術式、バチスタ手術を行うチームの一員になるが…。

 チームには伊集院という研修医がいて、朝田は彼をチームで厳しく育て成長させる。この伊集院の成長が本作のもうひとつのテーマである。本作もまたテレビドラマがヒットし、続編が作られるなどして話題になった。

■命を救う一族の宿命を背負うフリーランス医師“K”!

 裏の世界で生き、命を救い続ける医師の家系「Kの一族」。その宿命を背負った主人公、KAZUYAの物語が『スーパードクターK』(真船一雄:著、中原とほる:原案協力/講談社)だ。神技のメスさばき、天才的な頭脳、無敵の肉体を持つKはまさにスーパードクター。連載期間は10年、単行本は44巻と、医療漫画作品では異例といえるロングヒットとなった。

 本作は、医学監修されたエピソードや医療問題も扱っている。また『週刊少年マガジン』で連載されていたこともあり、バトルなどのスカッとさせるストーリーも描かれた。また続編である『K2』が『イブニング』で現在も連載中だ。こちらは「Kの一族」の分家筋にあたる神代一人と、KAZUYAのクローンという設定の黒須一也、2人のKが活躍する。

■ドラマでも話題になった離島医療のリアル

 柔和で真面目な性格の医師、Dr.コトーこと五島健助を通して「離島の診療所」を描いたのが『Dr.コトー診療所』(山田貴敏/小学館)だ。ある日離島に東京から五島がやって来る。最初はあまり歓迎されなかった五島だが、治療とその人柄により、島民の信頼を徐々に得ていくことになる。

 ハートフルなストーリーだが「無医村」「僻地医療」といった現実の医療問題が理解できる。沖縄の美しい離島を舞台にしたテレビドラマも人気で、スペシャル版や第2シリーズまで制作された。ちなみに五島は、実際に30年間離島医療に携わってきた医師をモデルにしている。

■絶対的天運で患者を救う「ゴッドハンド」

 普段はドジだが天才的な腕を持つ真東輝(まひがしてる)の活躍を描いたのが『ゴッドハンド輝』(山本航暉/講談社)だ。輝は研修医から医師になって以来、患者の死に一度も直面したことがない「絶対的天運」の持ち主。飛行機事故にあった自身のトラウマ、かつてゴッドハンドと呼ばれた父親への想い、ライバル医師との関係などが描かれている。

『週刊少年マガジン』という少年誌掲載ながら、医師不足などの医療問題や、病院の経営者視点の物語が描かれた。また麻酔科医・整形外科医・形成外科医といった焦点があてられることが少ない医師を取り上げているのも特徴。第58巻までの発行部数は900万部、テレビドラマ化もされたメガヒット作品だ。

■作者は現役医師! 臓器移植がテーマの物語

 手術シーンや症例が非常にリアルに描かれているのが『メスよ輝け!!』(高山路爛:作、やまだ哲太:画/集英社)だ。それもそのはず、作者の高山氏は外科医。医療に従事するかたわら、その合間に本作の原作を執筆していた。2018年現在も医師と作家の二足のわらじを履いている。

 本作は大学病院の関連病院に勤務する当麻鉄彦が、外科的技術で患者の命を救っていく物語。鉄彦は作品世界で日本初の脳死肝移植を成功させた医師となる。当時まだ合法でなかった臓器移植がテーマのひとつだ。また一般には知られていなかった、大学病院医局と鉄彦が所属する民間病院とのしがらみや確執なども描かれた。

■陥れられた男が、医師として、人間の尊厳を取り戻す

 漫画の神様が描いたもうひとつの医療漫画を紹介したい。それが『きりひと賛歌』(手塚治虫/小学館)だ。顔が犬のようになってしまう、架空の奇病「モンモウ病」をめぐる物語である。陥れられ、モンモウ病になりながらも、死に物狂いで医師として生きのびる主人公、小山内桐人。桐人を謀殺し、日本の医学会で自分の権力を築こうとする竜ヶ浦。彼らはそれぞれモンモウ病の謎に挑む。謎が明らかになり再会を果たした時、桐人と竜ヶ浦の運命は決まる。

 医学界の権力闘争、人の尊厳を踏みにじる差別(意識)、他人を物扱いするエゴイズム、これらの重いテーマがひとつの奇病を軸にした作品中、繰り返し描かれる。救いがない部分も多く、誰でも楽しめるエンターテイメントとは言えないかもしれないが、重厚な医療ヒューマンドラマに仕上がっている。また桐人、竜ヶ浦以外にも人間味あふれるキャラクターが登場する。3冊(文庫版)にギュッと詰まった登場人物たちの生き様を、ぜひ読んでみてほしい。

■小さな命を救う現代産科医療のリアル

 産科医療は怪我や病気を治すわけではない。なので「何もなければ」通常の出産に産科医は必要ない。だが「何かは起こりうる」。だから産科医は必要なのだ。ドラマも大ヒットした『コウノドリ』(鈴ノ木ユウ/講談社)の主人公、鴻鳥サクラ。彼の勤務する産院でも、命の危険と隣り合わせの出産はある。時には小さな命が助からないこともある…。

 本作は現代の産科医療のリアルな実情を描いた、と医師などの医療従事者からも評価が高い。ジャズピアニストでもあるサクラをはじめとした登場人物も魅力的。泣けるハートフルな話から、時には厳しい現実を突きつけられる話まで、ストーリーも読み応え抜群である。

 また妊婦と胎児に影響する風疹が流行している状況を受け、「先天性風疹症候群」について描いた3話分がWEBで無料公開され話題になった。

 いかがだっただろうか。手塚治虫作品を2作、研修医もの、天才医師の活躍、医療問題、医学界の権力争い、産科医療など、ジャンルは幅広い(複数のジャンルにまたがる作品もある)。

 本稿で紹介した医療漫画はテレビドラマ化された作品も多く、ほとんどは読んだことはなくても、聞いたことがあるものだと思う。もしドラマしかみたことがなかった方はぜひ読んでみてほしい。そして子供の頃に読んだことがある、読んでいたという方は、この機会にじっくりと読み返してみてもらいたい。

文=古林恭