『ストロベリーナイト』西島秀俊が語る、菊田という男

2013/1/5

 ドラマ『アンフェア』、『ストロベリーナイト』や映画『サヨナライツカ』、『CUT』など、数々の作品に出演し、観る者を惹きつける俳優・西島秀俊。自身が表紙を飾る『ダ・ヴィンチ』2月号にて、映画マニアとしても知られる彼がその想いを語った。

 ――俳優にとっていい映画とはどんな作品なのか。それは「いい脚本とスタッフの情熱が揃った作品」だと西島さんは言う。そして、夢は、トリュフォー監督のもとでジャン=ピエール・レオーがずっと一つの役を演じ続けた「アントワーヌ・ドワネルの冒険」5部作のような作品に出ること。

「今のところ、レオーにとってのトリュフォーにあたるような監督には出会っていないのですが」

 だが、ドワネルのような役にはもう出会っているかもしれない。「ストロベリーナイト」で演じている刑事・菊田だ。
「そうですね。菊田とはもう3年ぐらいの付き合いになりました。2時間ドラマから連ドラになり、そして今回映画になった。やはり感慨深いものがあります」

 警視庁捜査一課の一員として、姫川玲子という個性の強い女性上司に献身的に仕える実直な男を好演し、原作者をして「西島版菊田がかっこよすぎるせいで、読者からなぜもっと菊田を活躍させないのかと責められて困る」と言わしめた。
「それは役者としてはうれしいですね(笑)。菊田のことは、冗談めかして理想の中間管理職とか言ってきましたけど、彼はチームをまとめあげる接着剤的な役目の男なんです。そして、警察という超縦社会のなかで、どんな無茶な要求にも答え、突っ込んでいく。単純で、まっすぐで、刑事という職務にも警察という組織にも疑問を持たず、事件解決に全力をつくす、ちょっと昔の刑事っぽい男。組織人を全うする姿が同じような立場の方々の共感を呼ぶのかもしれません」

 だが、そんな菊田も、映画版では一刑事として、そして男として自分の心と向き合うことを余儀なくされる。
「複雑なコンプレックスを持たずに生きてこられた菊田は、ずっと好きだった姫川が実はとてつもない心の闇を抱えているのを初めて知ることになります。僕は『ストロベリーナイト』という作品を、一生癒えることのない傷を抱えた人々が、それでも生きていく姿を描く作品だと捉えていて。深い闇を覗き込んでしまった人々が事件を起こし、姫川はそんな彼らに共鳴しながらも捕まえていく。菊田は基本的に、メインとなるこのテーマに絶対にコミットできません。心に傷がないから。そして、今後もよほどのことがない限り、彼は傷を負わないんじゃないかな。でも、それはそれでいいのかなと思っていて。みんながみんな同じようなパーソナリティの持ち主というのもなんですし、対比として、傷を持てない、わからない残酷さというのを出せればいいのかな、と」

 こうした役柄への深い理解も、3年という年月があってこそ。

 そして、今年はさらに大河ドラマ『八重の桜』で主人公の兄・山本覚馬を1年間通じて演じることになった。
「菊田も覚馬も、この先もっともっと掘り下げていけるかなと思うと楽しみですね」

取材・文=門賀美央子
(『ダ・ヴィンチ』2月号「スタジオ・インタビュー」より)