和風ファンタジーの最高峰! 『レッドデータガール』はここがすごい

アニメ

2013/1/26

 4月からアニメが放送されることも決まった大人気の「RDG レッドデータガール」シリーズ(荻原規子:著、酒井駒子:イラスト/角川書店)。これは、幼い頃から山奥の神社で育ったちょっと変わった少女。絶滅危惧種の情報をまとめた「レッドデータブック」をもじり、“レッドデータガール”と呼ばれる泉水子を主人公に繰り広げられる物語だ。和風ファンタジーの最高傑作とも言われるこの作品だが、そこには一体どんな魅力があるのだろう。

 和風ファンタジーの名作と言えば、『もののけ姫』(宮崎駿:監督)や『新世界より』(貴志祐介/講談社)、『獣の奏者』(上橋菜穂子/講談社)といった作品を思い浮かべるだろう。そして、『RDG レッドデータガール』にはこれらの名作にも共通する和風ファンタジーの魅力がぎっしり詰まっているのだ。

 まず、実在する熊野古道を舞台にしており、その世界観や背景のディテールがしっかりしている。歴史的な背景や民俗的なアイテムをうまく取り入れているのだ。

 『もののけ姫』でも、虐げられてきた蝦夷の末裔や巫女、タタラ場の人々といったかつて日本で暮らしていた人とその生活。それに加えて乙事主(おっことぬし)やデイダラボッチといった神様と、こだまやヤックルといった架空の生き物がごく自然に重なっていた。

 それと同じように、現代の熊野古道を舞台にした『RDG レッドデータガール』でも、泉水子が通うことになる鳳城学園には、陰陽師の子どもや山伏と呼ばれる修験者、流鏑馬(やぶさめ)を嗜む生徒などが通っており、他にも神霊やしゃべるカラスが登場する。

 そもそも、日本は初詣やいろいろな機会で神社に赴くし、神様や言い伝えを大切にしてきた。それほどまでに神様や伝承が日常に溶け込んでいる国だからこそ、日本人はそういったものに惹かれる。そんなファンタジー要素が普段の生活に自然と溶け込んでいるのも、この作品の魅力なのだ。

 また、主要な登場人物たちがまわりとは少しズレている。そのことで悩んだり馴染めないと思っている主人公たちに、読者が感情移入しやすいのも人気の理由だろう。

 たとえば、主人公の泉水子は真っ黒の長いお下げのせいで目立ってはいたが、容姿も成績もそこそこ。運動はからっきしダメなうえ、毎日山奥から車で送迎してもらわなければならなかったため、部活や友達づきあいもあまりできない世間知らずな女の子だった。だから、高校進学を機にみんなと同じ普通の女の子になりたいと願っている。

 そして、泉水子の幼馴染である深行はもともと有名私立進学校に通う優等生だったが、山や自然のもつ霊力を身につけるために山の中をひたすら歩き回って修行する山伏の家系だったせいで、幼い頃から転校を繰り返したり、父親から道具のように扱われてきた。スポーツもできて優秀なので当然女子や大人からの人気も高かったが、すべては周りを見ながらそれに合わせてうまく立ち振舞っていただけ。

 『獣の奏者』の主人公で霧の民と呼ばれるエリンも、一族以外の人と結婚してはいけないといったさまざまな掟のせいで、他の人とはズレた少女だった。おまけに緑色の瞳や高い背、ずば抜けた医術のせいで偏見の目にさらされてきた。

 そんなふうに人と違うことで悩んだり、一生懸命まわりに合わせようとしたりする思春期の不安定な心は、読者の心にもすっと入り込む。だからこそ、みんなに馴染めないこと、居場所がないことには意味があって、自分に特別な何かがあると思えるファンタジー作品は、これほどまでに人気を得られたのだろう。

 そして、『新世界より』のようなシリアス展開も大事なポイントだ。『RDG レッドデータガール』では人が死ぬようなことはない。でも、得体の知れない何かに後をつけられたり、人ではないものの怒りに触れたりと、ハラハラドキドキさせるポイントはちゃんとおさえられている。さらに、泉水子が自ら髪を切ったことや運動の代わりに舞っていただけの舞い。みんなが当たり前に使っているケータイやパソコンを使えないといった日常生活での些細な出来事が、後々すべて意味をもってくるのだ。そんなふうに、何気ない日常から世界が変わってしまう。その怖さも和風ファンタジーには欠かせないものなのだ。

 こうした要素をすべて兼ね備えているからこそ、『RDG レッドデータガール』は和風ファンタジーの最高傑作と呼ばれるのだろう。現在『月刊少年エース』(角川書店)にてコミック版(荻原規子:原作、琴音らんまる:漫画、岸田メル:キャラクター原案)が連載されており、昨年11月にはシリーズ最終巻となる『RDG6 レッドデータガール 星降る夜に願うこと』(荻原規子:著、酒井駒子:イラスト/角川書店)も発売されたので、それらを読みながらアニメ放送に備えてみては?