スタジオジブリ最新作『かぐや姫の物語』日本最古の物語で語られていなかったこと

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2013/11/6

 今夏、引退を発表した宮崎駿監督の長編作品『風立ちぬ』が公開され、大ヒットを記録したことは記憶に新しい。昨年12月、この映画と同時公開がアナウンスされていたのが、宮崎監督の盟友、高畑勲氏が監督を務める『かぐや姫の物語』だ。
 制作の遅れから同時公開は実現しなかったが、公開が11月23日に決まり、1999年の『ホーホケキョ となりの山田くん』以来の高畑長編アニメーションに、いま期待は高まっている。
 

日本人が初めて目にする「かぐや姫」の気持ち

(c)2013 畑事務所・GNDHDDTK

 いうまでもなく『かぐや姫の物語』は『竹取物語』が原作だ。ジブリの鈴木敏夫プロデューサーが「過去にちゃんと映画化した人はいない」と語るとおり、短編アニメや原作に大幅な改編を加えたものはあっても、真正面からこれを描いたクリエイターはいなかった。

 鈴木氏は本作の始まりを「原作には物語の中で起きたことしか書かれていない。高畑監督はかぐや姫がその時々に一体どんな気持ちでそれを受け入れてきたのかを描けば映画になると考えた」と語っている。重要な要素は「平安時代に現代のかぐや姫を放り込んだらどうなるか」という発想だった。その意味では物語の枠組みはファンタジーだが、生身の人物の感情をリアルに描いた作品だといったほうが適当だろう。実は、高畑監督は50年近く前にこの企画を練っていたことがあったとか。

 制作途中での興味深いエピソードがある。制作の遅れを心配した宮崎駿氏が鈴木氏に様子を聞いた。この時点で高畑監督のやろうとしていることを知らなかった宮崎駿氏は、物語の概要を聞いた瞬間に「ハイジだ!」と叫んだという。高畑・宮崎のコンビで制作し、今なお幅広い世代から支持されている『アルプスの少女ハイジ』。ヨハンナ・スピリの原作もまた非常に短い作品で、二人は「彼女はそのときどう思ったか」というところを徹底的に描いた。当時、宮崎監督が「いつの日か日本を舞台にハイジを作ってみたい」といった際に、高畑監督は「それはやるべきだ」と答えたという。

 宮崎監督は『風立ちぬ』で大空に憧れた少年の話を描き、高畑監督は『かぐや姫の物語』で大地に憧れた少女を描いた。物語はまったく違うが、二人の監督が目指したものには共通する部分も少なくなかったのではないだろうか。今年度2作目のジブリ作品、見逃すことはできそうにない。

巨匠・高畑 勲、14年ぶりの最新作!
映画『かぐや姫の物語』11月23日(祝)より全国ロードショー

サブ1

竹取を生業とする翁と媼。ある日、翁は竹藪で光り輝く竹を見つける。中に入っていた三寸ほどの女の子はまたたく間に美しい娘に成長し、幾多の求婚を受けるが、最後に残った5人の貴公子に到底実行できない要求を突きつける……。誰もが知っている“かぐや姫”を題材に、筋書きを変えることなく、誰も見たことのない“かぐや姫の日常や心情”を描いた高畑勲監督最新作。かぐや姫はなぜ地球に来たのか。この地で何を思い、なぜ月へ去らねばならなかったのか。姫が犯した罪とは、その罰とはいったい何だったのか――。『竹取物語』に隠された人間・かぐや姫の真実の物語を、全く新しいアニメーション表現で描きだす。

【キャスト・スタッフ】
朝倉あき、高良健吾、地井武男、宮本信子
高畑淳子、田畑智子、立川志の輔/上川隆也、伊集院光、宇崎竜童、中村七之助、橋爪 功、朝丘雪路(友情出演)、仲代達矢
製作/氏家齊一郎 原作/『竹取物語』 原案・脚本・監督/高畑 勲 
脚本/坂口理子
音楽/久石 譲(サントラ/徳間ジャパンコミュニケーションズ) 
主題歌/「いのちの記憶」二階堂和美(ヤマハミュージックコミュニケーションズ) 
配給/東宝

会見

9月に都内で行われた『かぐや姫の物語』中間報告会見では、本作のプロデューサー・西村義明氏、女優の朝倉あきさん、スタジオジブリ・プロデューサーの鈴木敏夫氏が登壇。本作品のプロローグ映像も初公開された。

プレスコ

『かぐや姫の物語』のプレスコ(台本のみでの収録)時の様子。左から、媼役の宮本信子さん、かぐや姫役の朝倉あきさん、高畑勲監督、翁役の地井武男さん。