新鋭漫画家・市川春子が不思議な生き物を描く理由―「表現したいのは“他人”という存在」

マンガ・アニメ

2011/10/13

 2006年に「虫と歌」で『月刊アフタヌーン』の四季賞を受賞し、同作を収録した初作品集が2010年に手塚治虫文化賞新生賞に選ばれた漫画家の市川春子さん。

この秋、第2作品集『25時のバカンス』が発売された。発売を記念し、ダ・ヴィンチ11月号で単独インタビューに応じている。

 市川さんの2つの作品集には、共通のモチーフが表われている。不思議な生き物の不思議な命の形。人を内側から食べる貝、土星の衛星の菌、月の人・・・・。奇妙でお茶目なものたちだ。
 「虫は子どもの頃から好きでしたね。よく捕まえて遊んでいました。『25時のバカンス』の新種の貝は、シロウリガイがモデルです。太陽の届かない深海で硫化水素を取り込んで生きている貝。ヘモグロビンを持っているので、貝殻を開くと血液が真っ赤で不思議な感じです。新江ノ島水族館にいました」

 生き物自体への興味に加えて、市川さんがそれらを繰り返し描くのには特別な理由がある。
 「私が表現したいのは、実は“他人”という存在なんです。自分と他人とは、まったく違う存在ですよね。考え方も感じ方も物の見方も違う。その状態を、わかりやすく非人間的なものに仮託して描いているんです。自分と他人との間にある距離を、人間と非人間的なものの隔たりに置き換えているんですね。
 他人のことって、全然わからないじゃないですか。だから、同じ人間ではない“別の生き物”ぐらいに考えたほうが、上手くコミュニケーションできる。少し離れて相手を見れば、その人のいろいろな面がわかるはず。そのほうが、きっと楽しいし、優しくできる。そんなことを思いながらマンガを描いてますね」

(ダ・ヴィンチ11月号 コミックダ・ヴィンチより)