【妖怪ってそもそも何?】『妖怪ウォッチ』好きの子どもにドヤ顔できる妖怪知識

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更新日:2014/9/11

 今、小学生の心をぐっとつかんでいる『妖怪ウォッチ』。もともとは2013年7月に発売されたゲームソフトだったが、『コロコロコミック』『ちゃお』(ともに小学館)でのコミカライズや、今年1月から放送開始したアニメでさらに人気が上昇。7月には、続編のゲームソフト2本が発売された。クロスメディアの相乗効果もあり、人気は高まる一方だ。12月には映画の公開も控えている。

 筆者も子どもと一緒にアニメを観ているが、主人公の男の子が解決する“ちょっといつもと違うこと”というストーリーに、「あるある!」と共感したり、思わずクスッと笑ったりで毎週楽しい時間を過ごさせてもらっている。“ちょっといつもと違うこと”とは、例えば、友達が今日に限って自慢話ばかりしてきたり、お母さんがいつもは着ないような派手な服を着ていたりなど、子どもにとっての日常の小さな違和感を指している。これが実は妖怪の仕業…というのが「妖怪ウォッチ」の世界観だ。

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 しかし、ふと疑問がわいた。そもそも妖怪とはいったい何なのだろうか。 そんなことはおかまいなしに夢中でテレビ画面に食いついている子どもをよそに、疑問に答えてくれそうな本を探してみた。

 すると、『日本の妖怪 妖怪でひもとく日本の歴史と文化』(小松和彦、飯倉義之:監修/宝島社)というタイトルを発見。古典的な妖怪たちがカラーで紹介されており、掲載されている図版は博物館に所蔵されている絵巻や妖怪画といった、歴史的に価値あるものばかり。古い時代のものだし難しいのかと思いきや、なんだか現代の漫画やキャラクター絵のようだ。妖怪というからには、怖いイメージを想像していたのだが、なんだかまぬけな絵柄がたくさんある。

 例えば、16世紀に描かれた『付喪神絵巻(つくもがみえまき)』。これは、古道具たちがどうしたら人間を苦しめることができるのかを話し合う話で、桶やら、しゃもじやらが、ぐるりと先生役の古文書を取り囲む図などが描かれている。最後は古道具たちが付喪神(つくもがみ)という妖怪になるのだが、力の抜けるような絵と変なストーリーに笑ってしまう。

 このように物が妖怪になるのは、古道具に宿る霊魂が私たち人間の扱いしだいでは災いをもたらすと考えられたからだそうで、動植物、山や川、自然のすべてに霊魂が宿っているという思想(アニミズム)からきているという。アニミズムは、日本人が古来から抱いてきた自然に対する考え方で、キリスト教などの一神教などとは相対する宗教観だ。

 しかし、妖怪は神様ほど偉くはない。人知を超えた現象を説明するため、あるいはそれを引き起こす存在を表すために生み出された、生活の中にそっとたたずんでいる存在なのだろう。

 現代から見ると非科学的なものに映る妖怪も、その時代では災厄や不思議な事柄を納得するための、ある意味、科学的なもの。例えば、いつのまにか皮膚に切り傷ができていて思い当たる原因がないとき、「“かまいたち”にやられた!」と思うことでいったんは事態が解決し、傷についてそれ以上思い悩むことはなくなる――という具合に。

 ちなみに、現在、和風のお化け屋敷に出てくる「ろくろ首」などは、江戸時代に、画家や戯作者によってイメージが固定された妖怪たちだそう。妖怪は、時代とともに生み出されていくものなのだ。そう考えると、今の「妖怪ウォッチ」は妖怪の変遷の一端として、とても自然な流れで出てきたといえそうだ。

 アニメを見ながら、「妖怪とは…」と語るもよし、子どもに無視されたら「この会話が成立しなかったのは妖怪のせい」と笑ってみるもまたよし。妖怪は、今日においても、我々を慰めてくれる存在なのかもしれない。

文=奥みんす