逆境こそ強みに 湘南美容外科・相川佳之が語る成長のヒント

仕事術

2015/4/14

  美容整形医というと、どのような姿を想像するだろうか。バンバン儲けて野心的? そんな偏ったイメージと正反対の人物が、相川佳之氏である。湘南美容外科でおなじみのSBCメディカルグループを一代で築きあげた人物だ。

 国内に42拠点を持ち、年間59万人が訪れる日本屈指の規模の美容クリニックグループは、驚くべき事に、15年前、相川氏がコネも資金もない状態から立ち上がった。短期間になぜこれだけの事業を広げ得ることができたのか。それは、相川氏のほとばしる情熱だけではなく、苦しみを積んだ経験が活かされているからだ。この度、初の著書『情熱経営』(幻冬舎)にて、繁栄の裏側を綴った。

 彼の経験は、美容業界の人にはもちろん、多くの働く人に気づきとヒントを与えてくれるものだ。

悔しさから美容外科を目指す

 相川氏の子ども時代は、父親が事業に失敗し、爪に火をともすような生活。薬剤師の母親が生計を立てた。貧しいけれど、父母共に相川氏を尊重し、さまざまな選択権を与えてくれた。私大の医学部に入ることを勧めたこともそのひとつ。そして相川氏を美容整形外科医へ突き進めることとなったきっかけも同じく父母がもたらした。

 中学生の頃、相川氏は低身長に悩んでいた。背を伸ばそうと牛乳を飲み体操する姿を見かねて、両親が身長を延ばす治療を行っている病院へ連れて行ってくれたのだ。しかし診察した医師が言ったのは、ひと言。

「病気ではないので治療できません」

 成長ホルモンを注射するには年齢が行きすぎていたのかもしれない。けれど、相川氏の心には、「苦しみを理解してくれない」という悔しさだけが残った。美容外科に来る人たちは、病気ではない。けれど人に言えない悩みを抱えている人は多い。そんな人たちに寄り添った医療を提供しようと思ったのだ。

逆境がクリニックを延ばした

 湘南美容外科はリピート・紹介率が90%超である。施術を受けた人のほとんどが満足し、口コミで紹介し、再度訪れるという。この圧倒的満足度の高さは、相川氏の逆境あってのことだという。

 ひとつは、先ほどの医師の無理解な発言。美容外科に来る人は、ただでさえコンプレックスを抱える繊細な気持ちの持ち主だ。そして、どのような治療を行うか不安を抱えている。

 そのような患者に寄り添うべく、同クリニックでは徹底的に情報開示を行っている。それは業界ではタブーであった、ネガティブな情報も含めて。施術後には、腫れや痛みをともなうダウンタイムと呼ばれる期間があることも。それを包み隠さず伝え、理解してもらったうえで施術をおこなう。

 また、医師には相談しづらい悩みもある。それを気軽に相談できる存在として、美容カウンセラーを設けた。

 そして「お金がない」という苦境もサービスに反映されている。それまでの美容整形外科は、一度にたくさんのお金を落としてもらう仕組みであった。けれど、相川氏は普通の会社員やパート主婦にも利用してもらえるような価格設定をした。ひとりあたりの料金は高くないが、なんども訪れてもらいたい。そんな息の長い関係を築いたのだ。

私欲ではなく“三方良し”こそ成長の要

 多くの企業は、今より業績をあげ、収益を上げたいと思っているだろう。また、将来起業して社長になりたいと思っている人も多いはずだ。そんな人にこそぜひ知って欲しいのが、この言葉「三方良し」。

 これは相川氏の経営理念のひとつ。近江商人の教えから着想を得た。「三方良し」とは、「売り手良し・買い手良し・世間良し」こそ商人のあるべき姿だという。相川氏もこの考えに共感し、社員とも共有している。

 自分の企業だけが儲かればいいのか。お客さんにも満足してもらい、そして商売を通じて社会貢献をすることが、成長の原動力となる。それまで行き先がなかった人々。病気ではないけれど悩みを抱えている人の受け入れ先をつくること。その結果、お客さんも満足し、またクリニックも潤うという好循環をつくりあげたからこその成長である。

 始まりは美容整形外科だけだったが、現在、薄毛治療や不妊治療。そして自身がかつて望んだ「脚延長外来・小児低身長外来」と診療科目を広げている。また利益の一部は震災の被災者、発展途上国の学校設立などにも寄付されている。

 4月は多くの人にとって区切りである。学生から社会人への変化、新しいポジションへ異動など。あなたはどのような働き方を目指すのか。この本は、自身の成長を手助けしてくれる一冊となるだろう。

文=武藤徉子