低気圧が近づくと夫婦げんかが増える? 台風の中、田んぼを見に行ってしまうのはなぜ? 日常に役立つ「気象病」という考え方

健康・美容

2015/6/30

 梅雨時は気分が憂鬱になりがちだ。体調を崩す場合も多い。気象庁によると、平年の梅雨明けは7月21日ごろなので、この空模様はもう少し続きそうだ。

 NHK『ためしてガッテン』では今年1月に「天気痛」を特集した。気象予報士によるアプリ「頭痛~る」も人気だ。気圧の変化がグラフで分かりやすく表示され、自分の状態のメモもできる。「ペットボトル温灸」の考案者としても知られる若林理砂さんのTwitterで毎朝発信される「養生予報」のファンも多い。

 このように近年、「天気」と「体の不調」とを結びつけて考える人々は増えている。だが、この問題についての書籍は少なかった。6月20日に発売された『その痛みやモヤモヤは「気象病」が原因だった』(渡邊章範/青春出版社)は、医師が解説した日本初の気象病の一般書である。

「気象病」とは何か

 気象の変化によって心身に不調が現れることを、一般に「気象病」と呼ぶ。医学用語ではないが「温度・湿度・気圧・天候の変化から起こる心身の不具合」だと解説される。

 地球上で生活していると、体には16トンもの空気の重さがかかっている。私たちはその重い空気を、体の中から押し返してバランスを保っているのだ。気圧が変われば体に影響が出るのは当然のことだろう。

 日本には「夕方子どもが騒ぐと、翌日は雨になる」という言い伝えがある。低気圧が近づくとアドレナリンが出て、子どもたちが興奮するというわけだ。同じ理屈で夫婦げんかも増えるという。台風時にお年寄りが田畑を見に行って亡くなる事故もよく起きてしまう。著者はこの原因もまた、気圧の急低下によって不安・興奮状態になるためではないか、と考える。天気予報をチェックして、適切に対処すれば未然に防げるかもしれない。

耳が敏感な人、自律神経が乱れがちな人、40代以上の人は要注意

 特に気圧の影響を受けやすいのは「耳」だ。エレベーターなどで耳がキーンとなる状態を想像すれば分かりやすい。そこで効果的なのは、なんと酔い止め薬だ。服用して内耳神経を調整することで、痛みが軽くなる。前述の『ためしてガッテン』でも、痛みを予兆したときに酔い止め薬を飲むのが効果的だと紹介された。もちろん薬なので注意は必要だが、入手しやすいのは嬉しい。ぜひ押さえておきたいポイントだ。

 耳が敏感な人だけではなく、自律神経が乱れがちな人も気象病になりやすい。実は「自律神経」が本書の大きなキーワードでもある。自律神経を整え、鍛えることが気象病予防につながる。

 第4章では症状別の対処法が解説される。頭痛、神経痛、うつ病などは以前から気象と関連して話題になりやすいように思う。しかし「脳出血・くも膜下出血・脳梗塞・心筋梗塞」と病名が並んだページから受ける印象は重い。梅雨時や台風時の目まいや血圧の上昇などから異常を感じ取り、早めに病院に行くことで重大な病気が見つかったケースもある。特に40代以上の人のほうが気象病の発症率が高いという。27種類の症状について触れられているので、一家に1冊あると安心だろう。

「不調日記」で自分の症状をつかみ、予防する

 気象病の予防には「不調日記」をつけるとよい。日付と天気や気温、自分に出た不調などを書き込む。しばらく続ければ傾向が見えてきて、予防しやすくなる。

 この分野の研究が最も進んでいるドイツでは、「気象健康予報」が普及している。日本の天気予報で洗濯指数や紫外線指数が出てくるように、自分の抱えている疾患を選べばどれだけ注意すべきかが一目で分かる。

ドイツの天気予報サイトの「気象健康予報」にあたるコーナー

 日本ではこのような動きがまだないため、いわば自習が必要となるのだろう。天気予報を見るときも、今日明日のデータだけではなく、週間予報をチェックしたほうが効果があるようだ。「今日は雨だから症状がひどくなってしまうぞ、いつまで続くのだろう」と不安になるよりも、「明後日は晴れるから、もう少しで回復するな」とイメージすることが重要なのだ。『ためしてガッテン』では、そう考えるだけで痛みが抑えられると報じられた。

生活習慣を改善して、気象病に負けない自分になる

 自律神経の乱れには生活習慣の影響が大きい。自律神経は交感神経・副交感神経から成り、どちらが活発かでスイッチが切り替わる。朝は気分を上げて出かけ、夜の帰宅後はリラックスすれば毎日快適に過ごせるだろう。両方をバランスよく働かせるのが理想的なのだ。

 本書が説く生活習慣の改善策は、実はかなり基本的だ。適度に運動をする、バランスよく栄養をとる、一日のリズムを整える、などなど……耳にタコができるように感じてしまう人もいるかもしれない。だが、これで気象病に負けない自分に変われるならば、解決への近道であるように思う。

 著者のクリニックで実際に行われている「自律神経リハビリ・プログラム」も、イラスト付きで解説されている。一度覚えてしまえば一生ものの、効果的な動作だ。このコーナーだけで本書を入手する価値がありそうだ。

 なお、『NHKためしてガッテン 2015年08月号』(主婦と生活社)でも、天気による痛みの予防・治療法が大きく取り上げられている。特別付録の「痛み改善! 2週間ダイアリー」は、自分の症状を記録するのに役立ちそうだ。より目で見て理解したい場合や、身体的な痛みを特に改善したい場合は、こちらもチェックするとよいだろう。

文=川澄萌野