自撮りバッシングは、「自分もやってみたいけどできない」嫉妬心から生まれる!? ―うしじまいい肉インタビュー

文芸・カルチャー

2015/11/17

 若い女性にとって、するしないは別として、昨今「自撮り」は別段珍しいものではない。芸能人でなくとも、自撮りをしてネット上にアップする人は一定数いる。だが、ほんの数年前までは、自撮りはおろかネット上に顔写真を公開するなどとんでもない、と考える人は多かったはずだ。そのような自撮り黎明期から自撮りをし続け、自撮り人口を増やすべく啓蒙し続けた一人に、うしじまいい肉さんがいる。コスプレイヤーとしても知られるうしじまさんは、自撮りの指南本『自撮りの教科書』(マイクロマガジン社)を上梓するにまで至った。自身の体験、そして啓蒙活動に基づく自撮り論を、うしじまさんに語っていただいた。

自撮りの教科書
(うしじまいい肉/マイクロマガジン社)

自撮りと自意識

――うしじまさんが最初に自撮りをネットに公開したのは何年前でしょうか?

うしじまいい肉(以下、うしじま) 2009年くらいだったかなぁ。6年前なのでそんなに大昔でもないですが、当時は自撮りしている人なんて全然見かけなかったですね。

――まだTwitterもFacebookもさほど流行っていなかった時期ですよね。

うしじま そのときは「あやしいわーるど」という匿名掲示板に自撮りをアップしたんです。もともと私はコミケなどのイベントでコスプレをしていたので、「こんな衣装が届いた」と着用写真を載せてみました。その自撮り写真がたまたま広まって、「自撮りの写真集を作ったら売れるよ」と言われたので、作って売ってみたりもしましたよ。今も昔も女性が顔を出して発信することには需要があるんですよね。今はやる人が増えたので一人一人が目立ちにくくはなりましたが。



――芸能人でもない一般の人が自撮りをアップするなど、顔出しの活動をするのって、風当りが強くもありますよね。やたらと自撮りをアップすると、「こいつ自分大好きなの?」と思われそうで……。

うしじま 何も悪くないんだからそんなの無視すればいいんですよ。自撮りをアップすることにとやかく文句を言ってくる人は、自分にとって害でしかない存在ですから。「こいつ自分大好きなの?」みたいに、他人の自撮りに文句を言うような人って、何でそんな風に言うと思います?

――嫉妬、でしょうか。

うしじま 男女問わず「自分もやれるものならやりたいけどできない」と内心考えているタイプではないでしょうか。自撮りはある程度可愛く撮れたものを公開したら、誰でも手軽にチヤホヤしてもらえるんです。そうやって、自分ができないことを他人がやっていて得(チヤホヤされる等)しているからって、その人の損に繋がる訳でもないのに文句を言っている。つまり、他人がちょっとでも得しているのが許せないセコイ人間なんです。そんな人が周りにいるなら、縁を切っていいくらいです。

自撮りは「自分」という素材を使った「作品」

――自撮りするからには可愛く撮りたいですが、可愛く撮れたらそれはそれで「実物と違う」と笑われそうで公開しにくい、という気持ちもあります。

うしじま それもおかしな話なんですよ。実物と違っていていいんです。だいたい、可愛く写っていないものをアップするなんておかしいじゃないですか? 写りが良くないと自分で判断を下しているのに、普通はアップしないですよね。可愛く撮れている自撮りを公開して、「私の撮り方、加工能力すごいな」と、それでいいんです。「自分」という素材を元にどこまで可愛い写真を作れるかの限界に挑戦する、それが自撮りです。

――なるほど。そう考えると顔に自信がなくても挑戦しやすいですね。

うしじま 容姿は変えられないですが、自撮りはある程度撮り方で変えられますからね。そうやってよく撮れた自撮りを見ると、自分を肯定できるし自信が付きます。「私、意外といい角度あるじゃん」とか軽い感じで思えるわけです。

「言い訳」があれば人はエロ自撮りをする

――自撮り=顔を撮る、というイメージがありますが、うしじまさんの自撮りは体のラインを見せるような全身の自撮りが多いですよね。

うしじま もともとコスプレ衣装を見せるために自撮りしていたのが始まりなので。私自身も女性のエロ写メを見るのが好きで、集めていたんです。でも、エロ写メって昔は、彼氏が撮った写メが流出しちゃった、とかそういったものしかなかったんですけど、最近は自撮りしたエロ写メをTwitterとかに気軽にアップする女性が増えて、いい時代になりましたね~。


――そういうのっていつ頃から増えたんでしょうか?

うしじま エロい自撮りは、私が2年前に自分の洋服ブランド「PredatorRat」を作ってから増えたんじゃないかと個人的には思っています。「PredatorRat」ではTシャツや下着などを売っているのですが、最初に作った商品はニーハイソックスで、その商品パッケージの中に「着用して自撮りTwitterに投稿してくれたらうしじまがリツイートします」と描いた漫画を同封したんですよ。そうしたら、購入者が本当に自撮りしてくれて。今ではニーハイどころか、「PredatorRat」のきわどい下着を着て自撮りをしてツイートしてくれる人がたくさんいます。ほら、見て下さい、こういう写真です(Twitterの画面を見せながら)。

――これ一般の人ですよね?

うしじま そうです。グラドルでも何でもない人がこんな写真をアップしてくれるんですよ! モラルが崩壊していて素晴らしいですね! ただ、こういう自撮りをアップしていると、「お金にもならないのになんで無償で肌を露出するんだ」とか、「親御さんが見たらどう思う? 恥ずかしくないの?」とかくだらない事を言ってくる輩が湧くことも少なくないんですが、余計なお世話ですね。そんなやつと関わる必要ないんでそういう場合は無視がいいと思います。

――きわどい露出に抵抗がなくなった女性が増えたのはなぜでしょうか?

うしじま 最初はニーハイで自撮りを撮って貰うよう、慣らし運転をしたからでしょうか。そこから、だんだん布の面積の少ない商品でも自撮りをしてくれるようになってくれました。女性は“言い訳”が必要なんですよ。例えば、セックスをするにしても、「酔っ払っていたから」など理由を欲しがりますよね。私はその“言い訳”の役割になりたいと思って自撮りを啓蒙しています。うしじまは「PredatorRat」のニーハイや服を買ったら自撮りをして欲しいとしつこく懇願している、「じゃあ、いっちょやってやるか」、という流れなのではないでしょうか。実際に私は、商品を買って自撮りをツイートしてくれたら、喜んでリツイートしているわけなので。あとは、拡散されることで「みんなもやっている」と感じれるというのも大きな理由だと思います。

――そんなに言うなら、という気持ちにさせられますね。

うしじま でしょう。エロ自撮り、したくなってきたでしょう。

――いや、エロは……。

うしじま そうですか……残念です。いずれにせよ、女性は見た目で勝負せざるを得ないところがあるので、体だろうと顔だろうと、見た目に関することに一生懸命になったっていいと思います。自分にはできない、と言わずに、軽い気持ちで自撮りをしてみてほしいですね。

 「自分なんかが自撮りするなんて」、などとあれこれ理由をつけて思いとどまりがちな自撮りだが、うしじまさんの自撮り論を聞いていると、すべてが小さなことに思えてくる。「自撮りは加工ありきの作品」、「実物と違って当たり前」、「新しい服を買ったから」などの“言い訳”のもとに、自撮りへの入り口は万人に開かれているのだ。

取材・文=朝井麻由美